脱出
天使が行ってはいけない領域ここからどうやって脱出しようか。ここへ来た天使は脱出不能、死ぬまでここに囚われると、聞いたこともある。
「あれ、お姉ちゃん?」
「カルマ、おはよう、心配かけてごめんね」
「良かった!お姉ちゃん死んじゃうのかと思った!」
本当に心配かけてしまった。せめてカルマだけでもにがしてやりたいな。
「カルマ、私はのぐらい寝てた?」
「うーんとね、一日ぐらいかな」
やっぱりか、体への負担を考えてそのぐらいだと思ったが、ここでの一日は、かなり危険だな、そろそろ脱出しようと足掻いてみるか、
「カルマそろそろ出発するけど大丈夫?」
「うん、お姉ちゃんこそ大丈夫?」
「うん大丈夫だよ、それじゃあ行こうか」
カルマとの長い旅が始まった。
あれからどのくらい歩いただろうか、まったく終わりの見えない旅に私もカルマも疲れが出てきていた。そんな時、
「グェーーーー!!」
という鳴き声とともに空から何かが降ってきた。
「カルマ下がって!」
反射的にカルマをかばい、戦闘態勢に入る、
「お姉ちゃん、これ何?」
「カルマ、これはゲヘナの魔物、このゲヘナに天使が入ってきた時に殺すために用意された魔物だ」
「勝てるの?」
そんなカルマの声を聞き思わず私は言ってしまった。
「大丈夫、勝てるよ」
勝てるはずがないにもかかわらず、思わず行ってしまったことへの重圧が降り掛かってきた。まぁでもやるしかないみたいだし、できる所までやってやる。
「今宵魔術は、完成する・・柴に光る雷の精霊よ、汝の力をここに示せ」
雷魔法≪エクレール≫、しかし、魔物にはかすり傷一つつけることが出来なかった。
「クソ!」
思わずそんなことを言ってしまった。
「お姉ちゃん、僕も手伝う!」
「ダメ、カルマはまだ戦っちゃいけない」
「なんで?」
「おそらくこいつ以外にもまだ魔物は出てくる、カルマは、私より強いから、体力残しといてほしい」
嘘だ、本当はカルマが目の前で死ぬのを見たくないだけだ。そんなことを思いながら私は、ほんの一瞬だけカルマを見てしまった。
「お姉ちゃん!危ない!」
「!!」
体にかかる圧力、骨が折れる音、魔物の攻撃が当たった。音よりも早く私の体を振り投げる、
「・・グッ!ゴハァ!」
致命的だった、あの一瞬、カルマを見た刹那な的な隙に魔物は攻撃した。野生の勘だろうか、立つことが出来ないよう、丁寧に足の骨を粉々にしてくれた。
「お姉ちゃん!」
泣きながら近づくカルマ
「カル・・マ!来るな!」
魔物のターゲットは、まだ私にある、でも、ここにカルマが来たら、そのターゲットはカルマに行ってしまう。
「カルマ、大丈夫だから」
人生最後の笑み、清々しくとても気持ちよく微笑むことが出来た。一歩ずつ近ずいてくる魔物、ついに私の元までやって来た。あぁ、終わるんだな、脳が焼ける感覚、今までの記憶が蘇る、走馬灯だろうか、とても美しく心地よい時間だ。
「うぅ、お姉・・ちゃん、グス」
カルマは、今泣いているのか、視界がぼやけてよく見えないな、ついに、か。そう覚悟を決めて目をつぶる、次の衝撃を受け止めるために。
「・・・・・、ん?」
確かに音はした、鈍く重い音が、だが全く痛くない、むしろ当たってすらいない。そう私が不思議にしているとある声が聞こえた。
「あれ~~ぇ?なんかひっさしぶりなかおだねぇ~、ヒッック、こんなとこでなんしてんの~?」
「お姉ちゃん大丈夫!」
「うん大丈夫だよ」
目の前の酔っ払いに助けてもらったからだ
「お姉ちゃん、この人誰?」
「知らない、って言いたいけど知ってる」
「誰なの?」
「一応私の師匠だよ」
そう、この人こそ私に禁術や、魔術を教えた人物、魔術の腕は超エリート、非の打ち所がない、まさに最強だ。
「ひっどいな~一応ってどういうこと~?アリスちゃん泣いちゃうよ~ヒッック」
だが残念なことに、酒癖が悪い、それも相当。
「師匠、酒臭いです。よらないでください」
「いいじゃんか~久しぶりなんだもん、抱きつくぐらい許してよ~」
うわぁーほんとに酒臭い、寄らないでほしい・・・、
「師匠、怒りますよ」
「え~そんなこと言って~本当は私にあえて~嬉しいんでしょ~」
あぁもう無理だ我慢出来ない、
「今宵魔術は、完成する・・水も凍てつく氷の精霊よ、汝の力をここに示せ」
氷魔法≪ギアチャイオ≫渾身の一撃、周りの空間ごと凍てつかせる、だが、
「あっぶな~い、エルエルちゃん容赦ないな~」
「師匠、誰のせいだと思っているんですか」
「それを言われると・・・て言うか~なんでエルエルちゃんここにいるの?」
「それを聞かれると説明が困りますが」
と言いながらも、説明していく。
「実はですね、カクカクシカジカ、ということがあってここに来てしまったんです。」
「ふ~んなるほどね~、私の教えた禁術、使ったんだ~。」
「はい、すいませんでした」
私は頭を下げる、
「まぁ気にしなくていいよ~、私がいれば、だいたいなんとかなるし~、えへへ~」
本当に何とかなってしまうのが怖いところだ、
「で、師匠ここから脱出する方法知ってるんですか?」
恐る恐る聞いてみた。
「ん~、知らな~い」
「知らねえのかよ!この酔っぱらいが!さっき言った言葉思い出せ。」
「ごめんて~、方法は知らないけど~、予想はつくよ~、」
方法は知らないが見当はつくと言うことか。
「てか、なんで師匠ここにいるんですか?」
それが一番謎だった。
「それは、内緒~」
やはりむかつく言い方だ、まぁどうでもいいけど
「で?ここから出るの?」
突然真面目になる師匠に驚いてしまった。
「はい、出たいです。協力お願いします」
それを返すように、私も真面目に返答する。
「分かった~、じゃあ~ばば~んとやっちおっか~、じゃあいくよ~」
「今宵、魔術は変化する・・・闇に潜みし虚無の精霊よ、汝の力をここに示せ!」
黒魔法
空間にヒビが入る音、風が激しく吹き荒れて前が見えない、だが一つ分かることはある、ここから出られると・・・。