表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵物語(仮)  作者: mello
6/8

Little girl tears ♯02

『高砂水産(株)幹部役員自殺事件』

ワイドショー等で付いているタイトルは大概これだった

『自殺』であるなら『事件』ではないのだが、キャッチーな名前が欲しい報道関係者は気にしないのだろう

それはさておき、テレビから集めた情報は

高砂進一氏が死亡したのは、元妻である高砂彩音女史と離婚後に入居した2LDKの分譲賃貸マンション

浴室にて手首を切り、手を湯の張った浴槽に浸け失血死

玄関の鍵は施錠されていた

という事くらいであった



葛西「それでは現場に行ってみようか」


葛西は事務所の端に置いてあったポールハンガーからジャケットを取り羽織った


五木「でもおじさん、今って警察の人がいっぱい居て、中に入れないんじゃないの?」


五木早恵がごく自然な事を聞いた


高砂「そうだよ、未海が行っても追い返されちゃったの」


高砂未海が同意する


葛西「それはその通りだろうね高砂君、でも私は大丈夫なんだ」


あまり明瞭な答えを出すことなく葛西はサッサと事務所を出て行った

五木早恵と高砂未海は不安そうに互いの顔を見合い、少しして慌てて葛西の後に続いた

事務所を出て、すぐ右手側にあるエレベーターにて、下矢印のボタンを押しエレベーター待ちをしている葛西の後ろにたどり着いた時に思い出したかのように五木早恵は事務所前に戻り、事務所の扉に鍵を掛け、扉に掛けてある『OPEN』の札を裏返し『CLOSED』にして葛西の後ろに戻った



葛西は事務所が入っているテナントビルの目の前にある大きな整備工場のような建物の中に入った

その建物の中は葛西の駐車場であった

中には車が8台、バイクが7台停められていた

BMW M5

MERCEDES SLS AMG

JAGUAR XJR

LEXUS LS500

LAMBORGHINI AVENTADOR SVJ COUPE

ALFA ROMEO 4C SPIDER

TOYOTA COROLLA AXIO 1.5G W×B

SUZUKI JIMNY XC

が十分な間隔が開けられた状態で置かれ、その横には

YAMAHA V-MAX1200

HONDA CB1300SF

SUZUKI GSX1300R HAYABUSA

KAWASAKI 750RS

TRIUMPH SPEED TRIPLE RS

HARLEY-DAVIDSON PANHEAD

が3×2の形で並べられ、綺麗に磨き上げられていた


そしてその横に少しスペースを開け

URAL Gear Up Sportsman Camp Package が置かれていた


超高級車やスポーツモデルの中に場違いな車もある

その中にある灰色の『いかにも商業車です』という風体なCOROLLA AXIOに乗り込んだ

五木早恵は気になって聞いてみた


五木「この車やオートバイは全部おじさんの車なの?」


葛西はカローラのエンジンをかけながら答える


葛西「ああそうだよ。」


何の気なしに答える葛西

驚愕した様子の高砂未海、それとは裏腹によく分かってなさそうな顔の五木早恵


五木「なんでこんなにいっぱい車があるの?」


葛西「車やバイクが好きだからね」


五木「ふーん、なんだかぺたんこな車ばっかりだね。パパの車は四角いのだけど、あんまり似たのはないね。一番似てるのはあの黄色いの。でもパパの車は後ろにも長いやつだから違うかな」


葛西「そうかい」


おそらく五木早恵の父が乗っている車はミニバンかSUVなのだろう

葛西は気にした様子もなくすげなく答えた

カローラが建物の入り口付近に近づくと、自動でシャッターが開く

そしてそのままゆったりと国道に出て行った




現場のマンションに着くと未だにカメラマンやレポーター等が待機している様子だった

マンションのエレベーターホールの前にアクシオを停め、郵便受けにて高砂進一氏の部屋を確認し6Fへエレベーターで向かう

エレベーターを出ると、三つ目の部屋の玄関前に若い警官が二人立哨していた


葛西「あの部屋か」


警官の方へ歩いていく葛西、それに付いて行く五木早恵と高砂未海

警官はエレベーターを出た時から葛西達を見ていたが、こちらに近づいてくるのを確認すると警戒心を露わにした


警官「ここは立ち入り禁止です。この階に用の無い方はこの階に降りる事もご遠慮願っていますが、貴方はこの階の住人ですか?」


明らかに違うだろ?

と言いたげに高圧的に出ていけ宣言を聞いた葛西はおもむろに背広の内ポケットから手帳のようなものを警官に見せた


葛西「私はこういう者だ、悪いが中を見せて貰うよ」


警官は出された物を凝視し、一息吐いて考えた後呆れたように苦笑し


警官「お兄さん、困りますよ。『警察ごっこ』をする歳でもないでしょう?それによく見ればそちらのお嬢さんは、自殺した高砂氏の娘さんじゃないですか。お知り合いの人なんでしょうが、そういうのはご遠慮くださいよ」


警官は腰を反らし、聞き分けの無い大人を諭すような口調に変化しながら通せんぼを継続する

葛西はその様子を見て、こちらも呆れたような表情をしかえす


葛西「ふ~、君達はこの手帳の意味を知らないみたいだね。笹川警部は居ないのかね?」


葛西は手にした手帳をゆらゆらと揺らしながら片目をつむり、名前を挙げた

すると、若い警官二人の様子が少し戸惑い


警官「少し…待って下さい」


と片手を前に突き出し、肩に着けてある無線機で仲間へ連絡していた

無線で一言二言会話の後、数秒そのまま待つと玄関の扉が開く


女「ああ、葛西探偵。捜査ですか?」


玄関扉から出て来たのは、30代頃程度の女警官であった


警察という組織は『超男社会』である

男性と女性、同じ成績を上げても男性の方が高く評価される

どこの社会でも同じことが言えることではあるが

その昔、男は外で仕事、女は家で家事・育児がそれぞれの本懐であると信じられていた時代があった

それは古代から近代まで続く不変の『常識』であった

当然、社会における実力者・権力者は男がほとんど埋める

そうすると、次世代を決める際に昔の感覚のまま

『仕事は男のするもの。女はどうせ寿退社や出産や育児の為に仕事に全力は出せまい』

という判断を下す

一般社会においてもそう判断される社会において、『警察』に求められるモノとなにか?

それは『安心感』である

強盗犯・窃盗犯・傷害犯、その他犯罪者達と、いざ対峙した時に

より任せられそうなのは頼れそうなのは、男性と女性どっちか?

と聞かれた時、大半の人が男性と答えるであろう

実際に警察官の全体数で考えても、男女比は9:1~8:2といった所だろう

それだけ男性が多い職で、女性にも同じだけの権限・チャンス等がある職場など皆無に等しいであろう

最近は女性の社会進出を国を挙げて推進しているが、実際に真の男性と女性が同じ土俵に立てるのは相当先の事になると思われる


そんな超男社会の警察という組織において、『警部』という役職に女性が30代の若さでなる、というのがどんな稀なことか


笹川「貴方達、葛西探偵の手帳は見なかったの?我々警察には葛西探偵の捜査を妨害する権利はありません。通達が出ていたでしょう」


玄関から出て来た女警官は若い二人の警官達を叱りつけ、葛西達を玄関の中へ誘導する


笹川「葛西探偵、貴方に関しては心配していませんが、お連れ様のお二人にも現場を荒らす事の無いよう注意お願いしますよ」


玄関から廊下を歩きながら注意を受ける

現場の風呂場に着き、笹川警部は手帳を見ながら読み上げた


笹川「遺体は高砂進一、旧姓今川進一氏41歳、4か月前に高砂彩音氏と離婚。浴室にて手首を切り、湯船の湯に手を漬け失血死。遺体からは多量の睡眠薬が検出された。そして、居間にあるノートパソコンに遺書とみられる文書が表示されている。第一発見者は会社の部下である、水上豊氏33歳とマンションの管理人である佐藤一峰氏67歳。以上の状況により警察では自殺の疑いが濃いという方針で捜査しています」


一気に言い切る笹川警部

それに「ふぅん」と鼻を鳴らす葛西


笹川「なにか不審な点はありますか?葛西探偵」


顎に右手の人差し指を当てたり離したりする葛西

何か考え事だろうか


葛西「自殺と断定するのは少し早計かもしれないな。」


浴室に入り浴槽の前にしゃがみ込む葛西

そして、浴槽を覗き込むようにして続ける


葛西「サラリーマンの自殺の方法として、最もポピュラーなのは電車への飛び込み、次いで首つりや飛び降り等だ。失血死という自殺方法を選ぶのは変わっているといえるだろう。それにこの方法はどちらかと言うと女性が多い。」


きょろきょろしていた葛西が目的の物を見付けたかのように排水溝の蓋を取り、中に手を入れる

そこから一本の毛を抜き取り、笹川警部に見せる


葛西「進一氏は彩音氏との離婚後にこのマンションに引っ越している。当然彩音氏はこのマンションに来たことも無いだろう。ではこの長い髪は誰の物だろうか、離婚した以上、進一氏に新しい女性と交際することはなんの咎を受ける事ではないが、離婚後4か月程度で既に女性を家に招いている。自殺と断定する前にまずこの髪の持ち主を容疑者として捜査する方が賢明と思われるが?」


笹川警部は『ぐっ』と顎を引きながらほんの少しだけ悔し気な表情の後


笹川「鑑識。この髪を鑑定へ」


居間に居た鑑識官3名の内、一名を呼び葛西の持つ髪をジップロックの様な物へ入れさせた


笹川「葛西探偵、言っておきますが私は『自殺と断定した』等とは一言も言っていません。自殺の線が最有力として捜査していたに過ぎません。」


悔しまぎれに捨て台詞を吐き、携帯を片手に玄関へ向かった

その後ろ姿を見送り、五木早恵が葛西を見上げた


五木「おじさんすごいね。もう事件解決したんだ」


すると葛西は目を閉じ、一息ついてまた目を開ける


葛西「いや、そうとは限らない。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ