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探偵物語(仮)  作者: mello
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Little girl tears ♯01

高砂未海が初めて事務所に来てから2週間が経過した

あの後すぐに学校は夏休みに入り

毎日朝から五木早恵と高砂未海が二人して事務所に来ていた

しかし、二日前から高砂未海の姿が見えなくなった

五木早恵に聞くと『忙しいから行けない』と連絡があったみたいだ

やはり小学生、正直、高砂未海の方が普通の行動をしていると思う

なんの義務もなくこの事務所に無料奉仕をしている五木早恵の方が変だと考えるのが普通だ

そんなこんなで、高砂未海の不在を大して気にかけては居なかったのだが

点けていたテレビからふと気になる情報が飛び込んできた


【それにしても驚きましたね折木さん。あの大企業、高砂水産(株)の幹部から自殺者が出るとは。しかも高砂進一元常務がとは…】


五木「えっ‼‼?」


五木早恵は着けていた掃除道具をかなぐり捨てて、ソファーに飛び乗ってテレビを見だした


テレビではニュースキャスターが高砂水産の別の幹部である折木氏を番組に呼び事件の詳細を聞こう、という内容だった

だが当然というべきか、中身のない話ばかりを延々と長ったらしく引き伸ばしているだけの番組であった

テレビ局側としては、今話題のニュースを取り扱う時間を少しでも増やし視聴者に長い時間その番組を見て欲しいのだろうし

高砂水産側としては、会社になんの責任も無い事や今後の業績に変調をきたすものではないという言い訳じみた釈明文を読み上げているだけのようだ


『高砂進一』

この名前は初めて聞く名前ではない

なぜなら、高砂未海の父親だからである


その番組を葛西と五木は食い入る様に見ていたが五木早恵は耐えかねて携帯を取り出した


五木「未海ちゃんに電話してみる」


五木早恵は慌てた様子で携帯を操作し、アドレス帳から高砂未海の携帯電話へ電話を掛けようとタップしていたが、指が震えてしまい上手く操作できない

ようやく操作できたのか携帯を耳元に当てる


しばし電話のコールの音を聞いていたが


五木「ダメっ未海ちゃん電話に出ないよおじさん」


五木早恵はこちらに助けを求めるように涙目で葛西を見た


五木「どうしよ…おじさん…」


さらに言葉を紡ぐ五木早恵であったが、その消え入りそうな声をまさにかき消す音が事務所内に響いた



バァァン‼‼‼‼‼‼



事務所の扉がもの凄い勢いで開けられ、扉が当たり止めに激しく衝突し鳴り響いた音だった

その向こうに居たのは普段の落ち着いたクールな雰囲気は見る影もなく

泣きはらした両目に今もまだ大粒の涙を浮かべ、鼻水を垂らし、息もたえだえに叫んだ


高砂「葛西さん!お願い!パパを助けて!」


半狂乱…とまでは言わないまでも、相当焦っている事は容易に想像できた

とりあえず、高砂未海を落ち着かせソファーに座らせ、五木早恵に給湯室でホットココアを淹れてくるよう言いつけ、持ってくるまでの間、大声で嗚咽を漏らし続ける高砂未海の背中をさすり続けた


その後直ぐに五木早恵が『みう』と書かれた小さなカップに注がれたホットココアを盆に載せて戻って来て、高砂未海の目の前に置いた後ソファーの葛西とは反対側にちょこんと座り、葛西の跡を継ぐようにして背中をさすり始めた




そのまま暫く時間が流れた

漏れ続けていた高砂未海の嗚咽は少し前に止んでいた


高砂「ありがと、早恵ちゃん。もう大丈夫」


高砂未海は、ずっと背中をさすり続けてくれた五木早恵に礼を言い葛西に向き直った


葛西「大丈夫かい?」


今まで、五木早恵や高砂未海が初めて聞くくらい優しい事で聞く葛西

それにコクンと首を振る事で答える未海


葛西「では…君の父親を助けて欲しい。とはどういう意味だい?」


報道されている通り、高砂未海の父親である高砂進一は死亡している

助けるも何も対象が既に亡くなっている人間は救えない


高砂「パパは…パパは自殺なんてしない‼…絶対にしないもん‼」


なるほど、父親の汚名を返上して欲しい、という訳か


高砂「でも警察の人は全然信用してくれなくて…ママもなんだか信用してくれなくて…」


そりゃあ、自殺と断ずるほどの状況の中で、被害者の娘である小学生の女の子の発言だけで捜査方針を変更する程警察も柔軟では居られまい

母親も娘の今後を憂うなら、娘にどうしようもない心の傷を負わせる危険を冒すよりは、さっさと片づけてしまい、娘の心の中で風化させてしまう方を取るかもしれない

いや、母親自身もどうしていいのか分からないのかもしれない


高砂「だから…だからお願い葛西さん‼お金なら未海が頑張って払うから…公園の時の様にパパが自殺なんかしてないって証明して」


高砂未海の目は再び涙を出そうとしていた

しかし高砂未海は自分の意思でそれを止めようとしていた

鼻の穴は膨らみ、口をへの字に結んで、乱れた髪を整える余裕もなく


葛西は口を閉ざし長考した

答えなどとうに出ているのに

大きく息を吐き

ソファーから立ち上がり、自分のデスクへ戻る

年季の入ったオンボロ椅子にどかっと腰掛ける

ゆったりした動作で机の引き出しを開け、タバコとライターを取り出す

箱からタバコを一本取り出し咥える

タバコに火を点け、煙を燻らせる

事務所の天井を見上げ上の空の様子

そのままタバコを1本吸い切りフィルターまで2cm程を残し

招き猫の左手の部分が灰皿になっている置物で火を消す

そして立ち上がり


葛西「了承した依頼人。この事件、必ず解き明かしてみせよう」


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