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探偵物語(仮)  作者: mello
2/8

ある日の公園での出来事

「あー!ママから貰ったキラキラなボールペンが無い!」


公園に遠足に来ていた小学生の群衆の中で中心に居た、ちょっと『高め』の女子が大声を上げた


よく見ると…大声を上げた女子、仮に少女Aとしよう


少女Aが囲いの女子達を引き連れ、批難しているのはまた別な『高め』な女子、仮に女子Bとしよう


『高め』の違いは、少女Aはクラスの皆の中心的存在で、誰もが一目置く生徒会長タイプ


少女Bはクラスの誰とも仲良くはしているけど、一線を引いてクールな一匹狼タイプ


取り巻き女子「高砂さんが如月さんのボールペン盗ったんでしょー」


少女Aが如月、少女Bが高砂、というらしい


また、高砂と言う女子を庇っている女子がいる、仮に少女Cとしよう


少女C「…如月さん、高砂さんが盗んだって決まったわけじゃ…」


如月「五木さんは関係ないんだから黙っててよ」


少女Cは五木、らしい


高砂「ていうか、なんで私なの?」


制服のポケットに手を入れながら、少し気だるげに聞いた


取り巻き女子「だって…高砂さんの家って…」


少し言いよどむ


でも、すぐに、聞いた方の高砂の方が察したように言う


高砂「ああ、そういう事…」


だが、そこで五木が割り込む


五木「高砂さんはそんな事する子じゃないもん」


如月「五木さんはなんでそんなに庇うの?五木さんも怪しい…」


五木「わたしでもないよ…」


矛先が自分に向いて来ると少し足を引いた


五木の目線に私が入った事に気付き、私はその場を立ち去ろうとした


しかし、残念ながら後ろから声が掛かった


「あっ、あのっ!」


振り向くとそこには、やはりというか五木が居た


私「なんだい」


五木「あの、お兄さんは早恵達がこの公園に来る前から、そこのベンチに居ましたよね?早恵や五木さんが悪い事してないって証言してください!」


しっかりと頭を下げている


小学生にしては出来た子だ、しかし、私が手を貸す理由は存在しない


私「君、五木早恵君って言ったっけ?私が君に手を貸す理由を述べたまえ」


五木「えっ?」


私「私は探偵だが、無料奉仕するほどお人よしじゃあない。私が君に手を貸し、疑いを晴らしたとして、私は何を得る?」


五木「…お金を払えば疑いを晴らしてくれますか?」


私「ああ確かに、私の報酬を用意してくれるなら受けよう。ただ、私の報酬は普通の家庭が簡単に用意できる額ではない。恐らく君のご家庭でも無理だろう。さあどうする?」


五木「じゃあ、高砂さんは…」


可能性を潰された五木は悲しそうに俯いた


私「報酬が用意できないなら私は契約を履行することはできない。…最後に聞いておくが、どうして私に声を掛けたんだ?他にも同条件の人は少なくとも3人居たが…」


五木「お兄さん、隣町のお墓に良く来る人でしょ。早恵の家族もおじいさんのお墓詣りに行く時に良く見るもん。その時にお兄さん、今よりもっと穏やかで、優しい顔してたから」


私「そうか…あの墓地で…」


暫く沈黙が流れ


五木「あ、じゃあこれで…他の人にも頼んでみます」


ペコリと再び頭を下げ、くるりと身を反転させ立ち去ろうとする

少し目線を下げ、少女を呼び止める


私「…………まあ、待て。君は友達の疑いを晴らしたい。ただそれだけだね?」


五木「えっ、はい、そうですけど…」


今にも駆け出そうとした少女が戸惑いながら返事をする


私「……分かった、君のそのまっすぐな目に免じて、今回の報酬は後払いでけっこう。依頼を受けようか」




如月「誰?そのおじさん?」


五木「このお兄さんは、早恵達がこの公園に着く前からあのベンチに居て、早恵達がなにも盗んでいないって言ってくれました。」


如月「そんな知らないおじさんの話なんて当てにならないわ、五木さんがお願いしてそう言って貰ってる可能性だってあるじゃない」


五木「そんな…そんなことしてません!このお兄さんはホントの事を…」


私「まぁまぁ待ちたまえ、君たち」


子供達をなだめる様に間に入る私


私「如月君と言ったね、君の無くなったボールペンの特徴は?」


如月「ママから貰った大事なボールペンよ!きれいなんだから」


私「今日ここに持って来たのかい?」


如月「それは間違いないわ、電車に乗った時はあったもの」


私「なるほど、ではこちらの…高砂君を疑った理由は?」


如月「だって、その…」


言い辛そうだ…ここで助け舟を出すのは簡単だが、本人達の口から話させた方が情報の確度が高い為黙っておく


高砂「私の家、先月パパとママが離婚したの。それで変な噂がたってるの」


なるほど、家庭内が荒れ、最終的に離婚となりご近所的には恰好の噂話になり、またそれが各家庭の子供達にも影響して、イジメの種火になっている様子か


私「ふむ、なるほど。…盗難事件の理由は、大まかに二つに分かれる。一つはお金が無い時」


如月「そう、そうよ、だからあたしの…」


私「ただし、この場合、直接的な物を盗難することがほとんどだ。金の支払いが滞っているときは現金や財布、空腹の場合は食料等」


私「その点、今回の事件の盗難物、綺麗なボールペン。これは簡単に換金しづらい物品であり、お金がない人が盗むにしては些か不便な物になる」


五木「どうして?」


五木が不思議そうに尋ねる


私「本当に価値ある物なのか目利きが難しい上に、換金できる場所が限られている、町の文房屋さんじゃあまず買い取ってくれないだろうし、質屋に行くのも小学生じゃあ相手してもらえないだろう。親に換金して来てもらうにしても、質屋も珍しい物の場合、その後の警察の調査の際、記憶が残っているだろうから怪しまれれば足が着く」


私「つまり、犯行理由は『お金が無いから』ではなく、愉快犯等の直接な利益は無い様に見える犯行であると言える。それゆえ高砂君を犯人と決めつける根拠に乏しくなる。平たく言えば誰もが犯人足りうる。だから高砂君を犯人扱いしないように」


一同がシーンと静まり返る


当然だ


今まで高砂が犯人でほぼ全会一致だったのが、突然自分に矛先が向いたのだ


私「さて、全員が容疑者という事で、所持品を検める大義名分が出来たわけだが…」


如月「…そ、そうよ!みんなの荷物を見せてもらいましょう!」


私「如月君、君の荷物から検めさせてもらおうか」


如月「え…」


一同が固まる中、一人だけ勢いづいていた如月も固まった


私「君が、実際に物が無くなっているかを、荷物も見せてくれ。今」


私が詰め寄ると、如月は青ざめた


私「さぁ、無くした物を取り戻す為の検査を皆に行う為に、君から最初に態度で示してくれ」


如月「あっ…あう、…」


如月の返答は言葉にならず、口をパクパクさせている


私の方から率先し、如月のランドセルを奪う


ランドセルの中に手を入れる


ランドセルの中から高級そうなペンケースを取り出す


私「さて、問題のボールペンが普段入っているのは、このペンケースとお見受けするが…」


「ちょっと、お兄さん!何をしているんですか!」


少し離れた丘で数人で話をしていた人物が下りて来た


教師「私はこの子達の担任の西崎という者です。小学生の荷物を奪って何をしているんですか。警察に通報しますよ。」


歳の頃は30前くらいか、後ろで髪を一つに束ねるポニーテールの性格もキツそうな女教師が威嚇まがいにけん制してくる


私「私は私立探偵をしております葛西と申します。こちらの五木早恵君に調査を依頼され、捜査している段階です。調査内容はこちらの如月君の所持品であるボールペンが盗難に遭い、その犯人捜しです。ちなみに、警察はどうぞ呼んで頂いて結構です。私は私立探偵ですが警察関係者には顔が利きますし、警察沙汰は日常茶飯事です。困るのはそちらの小学校側ではないですか?悪評が立ち、PTAにうるさく突っつかれる事案ですから。担任の先生ということでしたら貴方自身も上司からの評価も下がるでしょう。」


理路整然と事実を話し理解を求めるが、こういった時、相手が女性だとこういう挑発には必ず過剰な反応をしてしまう物だ


西崎「そんなウソばかり吐いても無駄ですよ。早くどこかに行かないと本当に警察を呼びますから。」


根拠の無い、しかもウソと決めつけの発言で、実際に携帯を取り出し脅す


葛西「ええ、ですから私としましては警察を呼んで頂いて結構ですと申し上げました。後はお好きにどうぞ。私も依頼を受理した以上は完遂する義務がありますから、完全に事件として取り扱いましょうか。是非、警察を呼んでください。さぁ、早く」


西崎「ぐっ………、とにかく、私のクラスでそんな問題は困ります。」


葛西「ほう、貴方のクラスで明らかにイジメが発生しているというのに、放置するおつもりですか。これはまた問題発言ですね。私の方で警察をお呼びいたしましょうか?それともPTAや教育委員会の方がいいかな?」


煽るように西崎を追い詰める葛西


西崎「…………私のクラスで盗難事件ってどんな状況なんですか?」


ようやく折れた女教師


葛西「今から誰が盗難したかを調べるために、まず如月君のランドセルから調べようとしているところです。」


手に持っていたペンケースを皆に見えるように開く

そこに見えた派手な装飾のペンを見付け、ひょうきんな、やや芝居がかった声を上げる


葛西「おやおやぁ?なんだかきれいなボールペンが入っていますね。五木早恵君。」


葛西は横に居た五木へそのボールペンを見せる


葛西「如月君が言っていたきれいなボールペンとはこのボールペンの事ではないかね?」


五木「えっ?…あっ、はい。確かに先週に教室で皆に見せていたから間違いないです。」


葛西「なるほどなるほど。如月君が盗難されたと言っていたボールペンが如月君のランドセルの中に入っていた。しかも、その犯人を根拠も証拠もなく第三者が盗難したと発言していた。…これはどういう事かな?如月君?」


狂言であることは明白、しかも他人に犯罪者の烙印を押そうとしていたことに対して詰め寄る葛西


如月「あの…その…それは…」


返事に困る如月


と、その様子を見ていた五木がたまらず助け船を出す


五木「如月さん?思い違いをしていただけだよね?」


そうすると如月はすぐに飛びついた


如月「そう!そうなの!あ!私ちゃんとペンケースに直したんだった!」


白々しい演技だが、考え違い・記憶違いは証明することがむずかしい


葛西「なるほど。勘違いなら仕方がないね。でも、犯人扱いした高砂君と五木君に言う事があるよね?」


如月「高砂さん…疑ったりしてごめんなさい。貴方も、五木さん。」


まぁ、小学生のイジメの落とし所としてはこんな所だろう


葛西「さて、問題は解決したようですが、西崎先生。まだ警察を呼ぶというお考えは変わりませんか?」


一応確認の為に聞いておく


西崎「問題が解決したのなら、警察を呼ぶ必要はありません。ですが、貴方がこれ以上この子達に付きまとうなら本当に通報します。」


葛西「私としても、もうここに居る必要はありませんので退散致します。では、」


葛西は公園の出口の方へ、クルリと体を反転させ、スタスタと名残惜しさ等微塵も感じない足取りで帰って行く


五木はそんな葛西の後ろ姿を見送っていたが、何か思い出したかの様に後を追いかけた


五木「お兄さん!…あの、お金は…」


葛西が足を止め、チラリと五木の方へ目を向け一拍置いて


葛西「私への依頼料は、正式な依頼であったのなら今回の難易度程度なら簡単に見積もって300万くらいだな」


五木「300万円!?」


五木は驚愕した


「……ごめんなさい、早恵が大人になるまで待ってくれますか?」


葛西「私から後払いで良いと言ったんだ。気長に待つし、催促もしないさ。君が大人になって生活に余裕ができて、尚且つ『払おう』という気持ちになったら払いに来てくれたら良い」


捨て台詞の様に言い、そのままスタスタと公園を出て行った


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