dexterity装備!
委員長キャラで眼鏡をかけた、隣の席の女の子。
名前は確かドレーネといったか。
高々と腕を天に突き出し、俺のステータスの特異性をラウネに報告する。
ーーチクられた……。
秘密にしてこれからの学校生活を過ごそうと思っていたのに……。
「あらあら? どういうことかしら〜?」
ラウネが、俺の席へと歩み寄り、開いたステータス画面を覗き込む。しばらくステータス画面を眺めていたラウネは、何かに気付き、絶句した。
「クビキ君、このステータスポイント分配、操作画面は生まれた時からこうだったの?」
「あー……はい。生まれた時からこうでしたね」
むしろ、前世から自分で、こうしてしまいました。……とは言えない。
言ったところで信じてもらえないだろうが。
「みんなはちょっと自習しててもらえるかしら?クビキ君は私と一緒に来てくれるかしら」
ラウネに手を引かれ教室を出る。
「先生って、積極的で大胆ですね」とか、小粋なジョークを言おうか迷ったが、ラウネの目は笑っていなかったので、やめておく。
「クビキ君、君の将来を案じて話すわ……。strengthしか上げる事が出来ないと、dexterityが不足して、攻撃が当たらないと言ったわね……。動かない対象を攻撃する以外に、もう一つ対象法があるのよ」
「本当ですか⁉︎ ラウネ先生!」
「ええ、あなたが、この学校を卒業し、本気で戦士になりたいと考えているなら『dexterity装備』を探す旅に出なさい」
「dexterity装備?」
「dexterity装備っていうのは……。装備品……。剣とか鎧とかよね。それらに精霊の加護を付与して、ステータス能力向上効果をつける事なの。装備するだけで各種ステータスがグッと引きあがるわ」
『鉄の剣 効果:dexterity+5』
こういう武具を装備すれば、dexterityが0の俺でも、dexterity値5 という恩恵が得られるのだろう。
「あなたにはこれを渡しておくわ。この腕につけるバングルでdexterityが3上がるはず、この学校に在学する間はそれでなんとかなるはずよ」
ラウネがゴム素材で出来たバングルを差し出す。俺はそれをつけるとステータス画面を確認した。
『strength :0』
『defense :0』
『intelligence :0』
『mentality :0』
『dexterity :3』
『vitality :0』
『agility :0』
確かにdexterityの数値が3上がっている。
「先生、本当にありがとうございます。助かります」
「いいのよ……。クビキ君がこれから一番大変なんだから、最大限の手助けはさせてもらうわ……。だけど、不思議ね。どうしてボタンが一つしか無いのかしら?」
「strengthしかあげられなくても、立派な戦士になれるように頑張ります」
「うん、立派ね。私は魔法使いのアークビショップなので、戦士の事はよくわからないけれど、これからも一緒に頑張っていきましょうね。さあ、教室に戻りましょうか」
ラウネはとても優しく、常に生徒に寄り添い、ともに歩むスタイルだった。
俺は、彼女が担任で本当に良かったなと、しみじみ感じていた。
ーー胸も大きいし。
教室に入り、眼鏡委員長のドレーネに大人の眼力で睨みつける。
『さっきはよくもチクってくれたな。次やったらお前の給食の、ピュアベリープリンは俺の胃袋に入ると思え』
そんな意図を込めたのが伝わったのか、ドレーネは、少しバツが悪そうにそっぽを向いた。
勝ちを確信した瞬間だった。