先生!クビキ君のステータスが何かおかしいです!
「それでは皆さん、今からステータス知識学のお勉強をしましょうね。まずはステータス画面を開いてねー」
担任ラウネの指示に従い、生徒達はステータス画面を開く。
「戦士を目指す人は、基本的にstrength、つまり力を上げなくてはいけません」
戦士であるための前提。
strength。
物理攻撃力。
俺はその一点だけを特化させ、恐ろしくも禍々しい力でモンスター達を殲滅する。
そのために《strを上げる》ボタン以外を消去してもらったのだ。
「そして、その強化したstrength。絶大な力をモンスターに命中させるためには、dexterity、つまり器用さ、命中精度が必要です」
そう。strengthで強化された物理攻撃を命中させるためには、dexterityの命中精度が必要である。
だから俺は《strを上げる》ボタン以外を消去してもらったのだ。
………………あれ?
………………………………えっ?
「つまり、戦士を目指す人は、strengthの他に、素早いモンスターや、強いモンスターに合わせてdexterityのステータスポイントを上げる必要があります」
………………………………………………えっ?
嘘だろ? 待て、待て、待て、待て……。
「要は、どんなに力が強くて、モンスターを一撃で倒せる物理攻撃力があったとしても、当たらなかったら全く意味が無いという事ね」
『当たらなかったら全く意味が無いという事ね』
『当たらなかったら全く意味が無いという事ね』
『当たらなかったら全く意味が無いという事ね』
頭の中でラウネの言葉がリピートされる。
strength極振りでは、攻撃が当たらない。
では何故、俺は《strを上げる》以外のボタンを削除してしまったのか。
俺、神喰 クビキ・レイフォード・エルミラントは絶望の渦中にいた。
誰よりも強くなろうが俺の攻撃は当たらない。
レベル1にして、この世の理不尽さを悟ってしまった。
どうしよう。
……気分が悪くなってしまった。
「とはいえ、動かない対象だったら、命中率なんか関係なく攻撃も当たるわね……。でもdexterityを犠牲に、その分strengthを上げる人なんて、見た事が無いので、戦士を目指す人は、キチンとdexterityにもステータスポイントを振りましょうね」
…………光明が見えた。
それは小さく、微かな光だが、俺の攻撃は当たりにくいだけで、当たらないわけではない。
可能性がゼロでないなら。
しばらくは俺のステータス事情は黙っていた方がいいだろう。
strengthしか上げる事が出来ない、呪われた子、悪魔の子、なんてレッテルを貼られるのが目に見えている。
俺は自分のステータスポイント分配事情を秘密にすることにした。
「先生!クビキ君のステータスが何かおかしいです!」
……………………無理でした!