冒険者育成学校のルームメイト!
『王都ステラ』
巨大な城下町に、レンガ造りの家々が連なり、行商人や、露天商、冒険者でこの街は賑わっている。
街の中心にはシンボルであり、王の権力を象徴する、荘厳な佇まいの王城が威風堂々と鎮座していた。
王都ステラはリーステル村から『竜車』に乗って3時間ほどの場所にある。
『竜車』というのは、馬車のようなもので、『レックトル』という地竜に荷車を引かせるものである。
地を駆ける事に特化したレックトルは、脚部が発達し、翼が退化している。
飛ぶ事は出来ないが、レックトルのおかげで、街と街とを繋ぐ交通のライフラインとなっているのだ。
とにかく巨大な街だ。
高い場所に登ってみても、地平の彼方まで建物が続いている。
荷物の中から地図を取り出し、冒険者育成学校の場所を目指す。
青年くらいの見た目であったならば、ここで色々なフラグが乱立したのであろう。
しかし、6歳鼻垂れの子供に、特殊なイベントが起こるはずもない。
冒険者育成学校まで、何か起こるわけでもなく、ものの数分で到着した。
俺は冒険者育成学校の入学手続きを済ませると、用意された寮の部屋に入る。
寮の部屋は三人部屋で、他人と四年間をともに過ごす事になる。とはいっても、俺の中身は30過ぎのおっさんで、相手は正真正銘の小さな子供。
友好な関係を築ければいいのだが……。
「こんにちは。義賊になるためにやって来ました。ギド・スタギュームゥヴァスです。よろしくお願いします」
開口一番、元気のよい丁寧な挨拶で初対面の華々しい登場を飾る少年。名をギドというようだ。
「神喰 クビキ・レイフォード・エルミラントだ。戦士を目指してる。気軽にクビキと呼んでくれ。よろしくギド」
「うん、よろしくねクビキ。もう一人はまだ来てないのかな?」
部屋をキョロキョロと見回すギド。新しい部屋に一喜一憂し、荷物を下ろすとその場に腰掛けた。
「失礼するわ。魔法使い志望のエリゼ・ヴァーツァラフよ」
「よろしくエリゼ。俺は戦士志望の神喰 クビキ・レイフォード・エルミラントだ」
「僕はギド・スタギューヴァスだよ。よろしくねエリゼ」
間仕切りなどはついているが、男女共同でいいのだろうか。
ーーってか二人の名前言いづらすぎ。
ギド・スタギューヴァス。
身軽で動きやすそうな格好をしている。義賊を意識しての事だろうか。
運動が好きそうだと、一目見ただけで感じるものがある。
エリゼ・ヴァーツァラフ。
貴族の生まれか、質感の良い小綺麗な格好をしている。肩まで伸びたブロンズの長い髪は、絹のように美しい。
高飛車な喋り方は育ってきた環境だろうか。
「クビキは変わった名前だね。何処の出身だい?」
「リーステル村だ」
「リーステル村ってあのドがつくほどの超田舎じゃない!信じられないわ!」
ーー『ド』をつけずに『超』をつけるとは。なかなかユニークにとんだ少女である。
「水も綺麗だし、自然も豊か。食べ物も美味しかったし、なかなかいいところだと思うぞ? 都会のごちゃごちゃした環境よりはな」
「なんかクビキ、おじさん臭いね」
「言えてるわ……」
「よく言われるよ。明日からの授業、よろしく頼むよお二人さん」
「うん、よろしくねクビキ」
「よろしく頼むわ」
初日は顔合わせと、談笑をしながら時間が過ぎる。
ルームメイトは、一癖あるが、いい子達ではないだろうか。
早めに就寝し、明日からの授業に備えた。