クビキ6歳 冒険者育成学校入学前夜!
初めてのブックマークがすごい嬉しかったです。
流暢に言葉を話す、エルミラント夫妻の一人息子事件から、更に四年が経った。
エルミラント家のグラウスとシスを両親として認める事が出来るようになる。
隠せる事は隠し、伝えられる事は伝えた。
それでもグラウスとシスは、「私達の息子だ」と言ってくれた。
素直に感謝しなくてはならない。
いっぱしに木刀や盾を装備できるようになり、ここ、『リーステル村』付近に生息する『ゲルスライム』というモンスターを日々討伐している。
ちなみにあと854体倒せば、レベルが2に上がるらしい。
ーー途方もなさすぎる…………。
まず、ゲームのように、ポンポンとレベルが上がらない。
ゲルスライムでは経験値効率が悪いのだろう。
「クビキ。冒険者育成学校に、いよいよ明日入学だな。準備はできたか? 忘れ物は無いか?」
「ありがとう父さん。明日の準備はバッチリだよ。父さんや母さんがここまで育ててくれたおかげだよ」
「あなたは私達の自慢の息子よ。神喰 クビキ・レイフォード・エルミラント。雄々しく勇敢に勉強してくるのよ」
ーー神喰 クビキ・レイフォード・エルミラント。
四年前、エルミラント夫妻と俺の間で話し合いの結果、名前は神喰 クビキ・レイフォード・エルミラントにしようという結論に至った。
ーー長ぇ! 俺の名前長ぇ!
などと、当時は思わず吹き出しそうになったが、今では家族である。という、絆が感じられる、いい名前だと思っている。
「父さんも昔は立派な冒険者でな! レベルも18まで上がったんだが......冒険中に尻に矢を受けてしまってな…………」
「ちなみに、その矢を射ったのが母さんよ!」
「父さんを射ったの母さんなの⁉︎」
「そして、その夜出来た子供がお前なんだ。クビキ」
「ーーいや、聞いてないよ‼︎ さらりと6歳児に変な事言わないでよ‼︎ 意味わかっちゃうからやめてよ‼︎」
夫婦は笑い声をあげると、夕食のスープをすすり始めた。
冒険者育成学校には、入学する前に、家族間で話し合い、三つの選択肢から一つを選ぶ。
ーー戦士になるか。
ーー魔法使いになるか。
ーー義賊になるか。
この世界では人生の重要な選択を、6歳の段階でせまられるのだ。
言わずもがな俺は戦士になる。いや、戦士になるしか道はないし、戦士以外になるつもりもない。
「クビキ、そのステ振り画面の事だがな…………。誰に何を言われても、お前は胸をはって生きてゆけばいいからな」
「そうよ、クビキは私がお腹を痛めて産んだ子だもの、悲しい事があったらいつでも帰ってくればいいわ。ここはあなたの家だもの」
「父さん、母さん。ありがとう、俺頑張ってくるよ」
冒険者育成学校は全寮制の学校である。
しばしの間、グラウスやシスとの別れに、寂しさを感じる事もあるだろう。
しかし、この世界の醍醐味である、極振り戦士となるために、俺の胸は高揚していた。