積荷の搬送クエスト!④
「飽ーきーたーよーぉー! 飽ーきーたーよーぉー! もう竜車に揺られるの飽きたよー……」
王都を出発して、かれこれ八時間が経った。
ドレーネが荷車に寝っ転がって、駄々をこねる。
竜車の揺れに合わせて、彼女の胸がぷるんぷるんと踊る。その妖艶な踊りから目が離せない。
「ああああ……。クビキさんがドレーネの胸に魅了されているぅぅ……。 駄目です!クビキさん、サキュバスの誘惑に惑わされないで‼︎」
「い、いや、見てないし‼︎ 全然見てないし‼︎ は、はぁ⁉︎ 見てねぇーし!」
「そうよ! クビキは私の事が好きなんだから、そんなの見るわけないわ‼︎」
「クビキさん、私のならいくらでも見ていいですから‼︎ 」
「そこに何もないだろ」
「ーーひどっ! ありますよ! あります‼︎ ここにちゃんとありますから!」
「あれ? 亞里亞、レックトルの舵取りはどうした?」
「自動操縦よ。王都ウルまで、自己判断で走って欲しいとお願いしたの」
ーー生き物に対して『自動操縦』とは何だろうか。何でもありだな、このツンデレ少女は。
「でも、何か様子がおかしいわね……」
……ガタガタッ
急に竜車が減速したのを感じ、慌てて前を見る。
三人だろうか。
見るからに盗賊、見るからに荒くれ者といった男達が竜車の前に陣取り、進行を邪魔している。
口で言って理解してもらえない事を、彼らの腰から抜刀された海賊刀が、不気味に光り、物語っている。
盗賊なんてものが本当にいるのかと思ったが、目の前の全てが現実なのだろう。
この世界の盗賊も、当然ステータスや職についているのだろう。
今回のギルドクエストは積荷を守る事も含まれている。後には引けないだろう。
「わかってるだろうな。その竜車ごと置いていって貰おうか。レックトルは高く売れるからな。命は惜しいだろう?」
盗賊はギャーギャー騒ぐでもなく、要件だけを落ち着いて述べた。
手慣れた追い剥ぎは、『下っ端盗賊は弱そう』という勝手なイメージを払拭する。
「わかるはずもない。もとより、わかるつもりもなければ、従うつもりは更々ない。クビキ、丁度退屈していたところなんだ。止めてくれるなよ……」
竜車の荷車から、うちのおっぱい眼鏡が顔を出した。
彼女は眼鏡を指で上げると、杖を構えて盗賊を睨みつけた。
ーーどうした。お前、そういうキャラじゃなかっただろう。
「やれやれ。言ってわかる相手では無いようですね。あなた方には申しわけありませんが、少し痛い目を見てもらいましょうか」
おっぱい眼鏡につられたのか、残念美女まで気取って荷車から飛び出した。
飛び出した拍子に、カエルのお面が取れかかって慌てている。
ーーああっ、慣れないことするから‼︎
『やれやれ』とかエリゼが言うと無性に腹が立つ。
「私はこの二人のように甘くはないわよ。死にたい奴から前に出なさい! それが嫌なら金目の物全て置いてゆきなさい‼︎」
亞里亞はレックトルをなだめると、短刀を抜いて盗賊に威嚇をする。
盗賊も、まさか逆に金銭を要求されるなんて思ってもいなかっただろう。
「……と、言うわけだ。そこを退いてもらうぞ」
竜断斧を逆手に持ち替えて、戦闘態勢に移る。
対人戦は初めてだが、やるしかないだろう。
盗賊から積荷を守るために、俺達は武器をとった。




