積荷の搬送クエスト!③
王都ステラを出発して三時間ほど経過しただろうか。
木々が生い茂る林を抜けると、陽の光を映し出し、キラキラと宝石のように輝く大きな湖が見えた。
「うわぁー、綺麗だねぇー! ステラ領の海も綺麗だけど、この湖もすごく綺麗!」
「本当ですねー! すごく綺麗です!」
「ここで昼食をとるか」
「わかったわ! ししゃも!ここで休憩するわ。止まってくれるかしら」
亞里亞はレックトルに語りかけると、その意味を理解してかレックトルはスピードを落とし減速する。
地竜の知能は高いと聞くが、手綱も使わずに命令を出すとは、亞里亞のポテンシャルには恐れ入る。
「今日のお昼ご飯は亞里亞ちゃんが作ってくれましたぁー! みんな拍手っ!」
「ふふふ! せいぜい感謝して食べるといいわ!」
ジャーン! という掛け声とともに、ドレーネが木製のランチボックスを開ける。
中には、穀物パンに挟まれた、色鮮やかな野菜。亞里亞手製のサンドウィッチが綺麗に並べられていた。
「亞里亞、お前料理できたのか……まあ、パンに挟むだけかもしれないが……」
「当たり前じゃない‼︎ バカにしないでよね!」
「いっただっきまーす!」
「私も……いただきますです!」
「悪い悪い。驚いたよ。それじゃあ俺も。いただきます」
ーーガリッ…………。
……ガリッ?
ーー何だ? ガリッって……。
噛みきれない、というより全く歯が入らない硬いものが混入されている。
手に持っているサンドウィッチに視線を落とすと、穀物パンの綺麗な白に挟まれた野菜の赤、緑、その中央に真っ黒なアンノウンが挟まっている。
ーー何だこれは? 硬い。 硬すぎる。
その物体アンノウンを取り出し、地面に埋まっている岩に当ててみると、物体アンノウンは見事に岩に突き刺さった。
「亞里亞ちゃん。これ……」
「何を入れたの……です……?」
「カリッカリに焼いたロックボアの燻製ベーコンよ‼︎ お味の方はどうかしら⁉︎」
ーーどうかしら⁉︎ じゃねぇよ……。 食えない以前に噛めねぇぞ。何だそのドヤ顔は。
ダークマター入りサンドウィッチをランチボックスから取り出し、亞里亞の口に押し込む。
「やっ……ちょっと、クビキ。大胆すぎっ…………。みんな見てるから、こんな所じゃ恥ずかし…………ふぐぁっ⁉︎」
ガリッという音が響き、亞里亞が固まる。
何が起こったか理解が追いつかず、思考を停止させたようだ。
ロックボアの肉質は、豚肉と比べると少し硬い。
そこにきて亞里亞の絶妙な火加減で熱されたロックボアのベーコンは、カリカリジューシーな状態を二、三段階すっ飛ばして、岩をも貫くダークマターを錬成したのだ。
ーーお前は錬金術師か。
ツッコミを入れようかと考えたが、サンドウィッチを咥えたまま、肩を落としている亞里亞にはオーバーキルだろう。
そっとしておく事にした。
視線をドレーネとエリゼに向けると、彼女達は湖岸で、噛めないダークマターを使って食後の運動なのか、ブーメランをして遊んでいた。
食べ物で遊んではいけません。と、説教をするべきか悩んだが、この真っ黒なダークマターが果たして食べ物と言えるのか……。
判断に苦しんだ俺は、しばらくダークマターブーメランを「よく飛ぶなぁ……」などと眺めていた。




