新たな住人!
「というわけで今夜はすき焼きよ!」
「悲しい過去はわかるとして、何で亞里亞ちゃんが仕切ってるんですかねぇ……」
「すき焼きって何?亞里亞ちゃん!」
「聞いて驚きなさい! すき焼きっていうのはね……すき焼きっていうのは……………………クビキ、すき焼きって何⁉︎」
「すき焼きっていうのは、このジャイアントカウの薄切り肉を焼き、ステラビーンズの熟成液と甘味材、水を足して野菜を煮込んだものだ」
「そうよ! それよ!私のいた国でとても大人気のメニューなのよ、そしてそれだけじゃ無いわ!」
「喜べドレーネ、エリゼ。何と、焼肉もある」
「なんですって⁉︎ 焼肉なんてなかなか食べられる代物じゃない……‼︎ 焼肉を食べられるなんて‼︎」
「さすがはクビキさんです……! さらに惚れ直したです!」
「さあ、食べるわよ‼︎」
亞里亞を招いての晩飯となったが、エリゼやドレーネも、彼女を優しく受け入れ、接してくれる。
亞里亞も嬉しそうに、振舞っていた。
エリゼやドレーネは知識の無いすき焼きに興味を示し、猫のような目でまじまじと鍋を眺めている。
「ドレーネ、エリゼ。こうして、小皿に卵を割り入れて、それに薄切り肉をくぐらせて食べるんだ。熟成液と甘味材の尖った味を、卵がまろやかにしてくれる」
俺の解説に二人は、「うんうん」と頷くと、おそるおそる肉を口に運ぶ。
彼女達のぷるんとした唇が薄切り肉を包み込む。
「なんてこったぃ…………クビキさんよぉ。なんてぇもんを食わしてくれるんだい……。私が今まで食べていた肉はきったねぇゴムだったのかもしれない……」
「クビキさん……このすき焼きなる食べ物……。エリゼは深く気に入りました……。週一回はこれを食べたいです……」
「すき焼き。美味しいわ……。みんなで囲んで食べる食事がこんなに美味しいなんてね……」
…………。
……………………通夜みたいな空気になったな。
とは、口が裂けても言うまい。
亞里亞がうつむき、涙目ですき焼きを噛みしめる。それを見たドレーネとエリゼは席を立ち、室内にある扉を開けた。
彼女達は部屋の奥からごそごそと荷物を取り出し、大量の荷物が運び出される。
ーーすいません、食事中なんで。埃立つからやめて下さい。
とは、言えない。
ドレーネとエリゼがあまりにも真剣な顔で作業をしているからだ。
俺と亞里亞は、キョトンとしながらも薄切り肉を口に運ぶ。
「さて亞里亞ちゃん、ドレーネお姉様からのプレゼントよ」
「……? な、なによ……」
「ここ、亞里亞ちゃんの部屋だから。エリゼの部屋の隣」
「…………えっ? ……えっ?」
「亞里亞。こいつらはそういう奴だから。お前もここに住むんだってさ。一緒に、住んでいいんだとさ」
「…………あんた達……ほんっと馬鹿ばっかりね……!」
涙を流し、急いでそっぽを向く亞里亞は、恥ずかしそうに下を向いている。
そうしてこの家に新しい住人が出来たのだ。
男女比が極端で、少し心細くなる俺だった。




