討伐クエスト:ジャイアントカウ!
王都ステラを南に行くと、そこには澄み切ったエメラルドグリーンの海が広がる。
夏場は海水浴で賑わうこの場所も、初秋の今となっては静かなものだ。
この世界に転生し、4歳を迎えた年にエルミラント家の両親、グラウスとシスが連れて行ってくれた海である。
「いたわ。あそこよ」
亞里亞が指差した場所に巨大な黒牛がいる。
ーーでけぇ……。体長3メートルあるだろうか。
巨大な身体で、海岸の砂浜を悠々と歩いている。
何故砂浜に牛が? ミスマッチさが何とも言えない。
「どうする?亞里亞」
「ジャイアントカウは敵対モンスターだから、バレないように近づき、不意の一撃で先制したいわね……」
「スニーキングだな?」
俺達はそろりそろりと黒牛との距離を詰める。
息を潜め、姿勢を落とし近づいてゆく。
「最初の一撃はとにかく、ダメージが大きい方がいいわ……。クビキ、ガツンとやっちゃってくれるかしら」
亞里亞を後方に残し、黒牛までもう少し。
武器を構えようとしたその時だった。
「ックシュン‼︎」
くしゃみを漏らす亞里亞。
もはや狙ってやっているとしか思えない。
ーーっざけんな‼︎
ーー亞里亞さん⁉︎このタイミングで⁉︎
「あ、ごめん。クビキ……」
ーー頼むぞ、本当に……。
身体の向きを変え、黒牛の方に顔を向ける。
バッチリ黒牛と真正面から対峙していた。
「バレてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ⁉︎」
ーークッソ、亞里亞め……。こうなりゃ、あとは野となれ山となれだ‼︎
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ヤケクソ気味に振り抜いた竜断斧は、黒牛の胴体を叩き斬った。
『ブモォォオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎』
ーー当たった⁉︎ やればできる子、クビキの子‼︎
などと思っていたが、黒牛の足元を見ると、黒牛の影が亞里亞の影と重なり、動きを封じられているようだ。
「アサシンのスキルで、影縫いよ! 早くやっちゃいなさい‼︎」
ーーそんな便利な事出来るならスニークさせた意味はあったの?
この際そんな疑問は置いておく。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」
黒牛への一方的な攻撃。
竜断斧での一撃は相当なダメージがあるようで、亞里亞のスキル、影縫いの有効時間内にとどめを刺すことが出来た。
気がつけばレベルも8から10へ上がり、ステータス画面には、『第一次職を選んで下さい』の文字が表示されている。
その作業は後ほど行うとして、今は黒牛を亞里亞と切り分ける作業に集中した。




