採掘クエスト:黒血鉱石!②
『グガァァァァァァァァァァァァァ‼︎』
坑道内に悍ましい鳴き声が響く。周囲の壁に反響し、振動として身体に伝わる。
ゲルスライム、魔猫にゃるべろす、ジャイアントデスワーム。
それらとは明らかに違う、異質で恐ろしい空気を肌で感じてしまう。
「エリゼ、ドレーネ。 ……今『グガァァァ』って聞こえたんだけど」
「気のせいじゃないでしょうか? クビキさん。そんな馬鹿な! ……ですよ」
「クビキ、あなた疲れてるのよ……」
エリゼとドレーネは真実から目を背け、現実から逃避を敢行する。
「あ、あの…………じゃあ、そこにいる、でかい犬は何なの……? ペットか何か?」
俺達の目の前に立ちはだかるのは、目をぎょろりと動かし、牙をむき出しにした、恐ろしい犬のようなモンスターだった。
本能が警告している。
『グルル……‼︎ グガァァァァァァァァァァ‼︎』
「あばばばばばばばばば……‼︎」
ドレーネは魔犬を見ると涙を浮かべながらガタガタと震えだした。
何のためのマジックキャスターなのだろうか。
ジャイアントデスワームの件といい、少し不憫に思えてくる。
「ほぁーーーーーーーーーーーーーーー⁉︎」
素っ頓狂な声を発したのはエリゼ。
メイスを握りしめたまま硬直し、目が物凄い速さで泳いでいる。
ーーそうだ、ここは戦士志望の俺が何とかしなくては。
ーー俺の一撃は、龍の首をも断首出来るような一撃だ。鉄の棒だけど。
ーー自分を奮い立たせろ。strength極振りだろうが!
ーー女の子を守るなんてカッコイイじゃないか‼︎
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
魔犬めがけて鉄の棒を振り下ろす!
ーーしかし魔犬には当たらない。
距離を詰めて横一閃のなぎ払い!
ーーしかし魔犬には当たらない。
さらに魔犬に張り付き、怒濤の突きを繰り出す!
ーーしかし魔犬には当たらない。
身を深く落とし、魔犬の顎先を狙い振り上げる!
ーーしかし魔犬には当たらない。
ーーなんでじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎
魔犬は俺の攻撃を易々と交わし、鋭い爪で反撃をする。
「ぅがっふッ‼︎……」
吹き飛ばされた俺は壁に叩きつけられる。
ーーすげぇ痛い。
「クビキさん、回復します!」
そう叫ぶとエリゼが駆け寄り、俺の裂傷部に手をかざす。
「ヒーリングタッチ‼︎」
エリゼの触診のようなそれは、優しい光を放ち、俺の裂傷と痛みを消し去った。
「アイシクルスピアッ!」
『ギャヒィィィン‼︎』
ドレーネの放った氷柱の槍が魔犬の前足と後ろ足を貫通する。
魔犬は体制を崩し、地面に横たわった。
魔犬は足を潰され、立つことすらままならないだろう。
『動かない対象だったら、命中率なんか関係なく攻撃も当たるわね』
思い出すのは、冒険者育成学校ラウネの話だ。
ーーあとは、簡単だ。
俺は鉄の棒を魔犬の頭へと振り下ろした。
どうにか魔犬の討伐に成功し、ほっと胸をなでおろす三人。
魔犬はかなり強敵の部類で、ステータス画面を確認するとレベルが8に上がっていた。
すぐさまstrengthに5ポイント振り分けると、俺達は黒血鉱石を探す作業に戻った。




