初めての実技実習。魔猫にゃるべろす!
王都ステラの南正門をくぐると、広大な草原に出る。そこで、戦闘実技練習の授業が、週二回のペースで、毎週行われた。
と、いっても、全員レベルはスタート地点の1だ。
リーステル村でゲルスライムをモリモリ倒していた俺ですら1なのだ。
ここでの戦闘技術は全員、同程度である。
引率のラウネを連れて、『魔猫にゃるべろす』をひたすら木刀で追いかけ回すだけ。
生前の世界ならば、動物虐待とみられてもおかしくないような光景だ。
ーー実際、魔猫にゃるべろすは可愛い。ほぼ無害なため、抱きしめて頬ずりしたいほどに。
だが、経験値をゲルスライムの三倍は貰えるので、レベル1〜レベル3までは魔猫にゃるべろすを一心不乱に倒す事となりそうだ。
周りの生徒達は、気でも狂ったように、魔猫にゃるべろすに木刀を振り下ろす。
「セェイ‼︎ ヤァァァァッ‼︎」
ーーわかるよ。わかる。
クラスに一人はいるよね。
やたら掛け声出しちゃう奴。
命のやり取りをするくらいの手強いモンスターなら、俺だって叫びながら攻防するだろうさ。
………………だがな、ギド。相手は魔猫にゃるべろすだぞ……。
ほら、みんな見てるじゃないか。
浮いてるよ。浮いているんだよギド……。
社会に出たら、そういうイレギュラーな奴は淘汰されてしまうんだよ……。
………………仕方ない。ルームメイトのよしみだ。汚れ役は俺がかぶるさ……。
ギドに向けて、警告の一言を発信しようとした、その時だった。
「ギド君って、なんか、かっこいいね!」
「ギド君、かっけー!」
「一生懸命って感じがかっこいいよね」
周囲のクラスメイト達が、ギドに賛美の言葉を送る。
そういう事なのか?
俺が歳をとったから……。
…………これがジェネレーションギャップというやつか。
「えぇぇぇぇいっ‼︎」
「ヤァァァァ‼︎」
「せやぁぁぁぁぁぁ!」
「てゃぁぁぁぁぁ!」
「ちょっと、クビキ!あなたやる気はあるの⁉︎」
「やる気が無いなら先生に言うわ!あなたもいきなさいよ!」
エリゼとドレーネが煽り、捲したてる。
………………。
………………やればいいんだろう。やれば!汚い大人の真髄を見せてやるさ‼︎
俺は恥を捨てて、魔猫にゃるべろすに飛びかかった。
「えぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
『ん"に"ゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"‼︎』
「ぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」
茂みから飛び出してきたのは、魔猫にゃるべろすより一回り大きな魔猫にゃるべろす。
「はい、みなさん。これが魔猫ぼすにゃるべろすでーす。普通の魔猫にゃるべろすより強くて、襲ってくるので注意してくださいねー! 今回は私がサクッと倒しちゃいます」
ーーパチン!
ラウネが魔猫ぼすにゃるべろすに向かい、指を弾く。
『ぅぼぉぉ……うぼぁっ…………にゃぁぁぁぁ‼︎』
魔猫ぼすにゃるべろすの顔や身体が、うねうねと波打ち、苦しそうな悲鳴をあげる。
ーービシャァァッ‼︎
魔猫ぼすにゃるべろすは色々なものを噴き出し、色々なものを撒き散らし、クラスメイトの目の前で弾け飛んだ。
女子生徒は泣き出し、男子生徒は白目をむいている。
冒険者とは何か、生きる事とは、残酷な事だということを生徒達に教えてあげたかった。と、語るラウネは、冒険者育成学校の上官教師に、やり過ぎであると、厳重注意を受けた。
教室に帰ってきた彼女はシュンと肩を落としていたという……。




