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国家犯罪者レヴィ・ゴードン  作者: 高畠 悟
レヴィ・ゴードンという男
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レヴィ・ゴードンという男


「さて・・・この世で最も個人を貶めるに有効な方法とはなにか?わかるか、ユリウス」


ドア越しに私の存在を察してだろう、レヴィは年齢にそぐわない曇った声色で私に話しかけてきた。


空は青くひらけ、小鳥が(さえず)る陽気な朝にしては些か重苦しい話題だ。


「その者の財産を盗む事だろう。殺人も効果的とは思うが、後世まで精神を貶めるということであれば、盗むという行為が有効だと私は思うが。」


この様な彼との問答はほぼ日課となっていたが、正直なところあまり話していて気持ちいい物ではない。暗い話題は元来私の好みではないのだ。


しぶしぶ私が答えると彼は、ふっと鼻を鳴らした。


「いや、違うな。物を盗んだところで大なり小なり代用が効く。代用品に溢れたこの世界では盗むという行為は真の意味で他者を貶めるには値しないよ。」


・・・シェラ。


彼が新聞をめくった音が聞こえた。


「では、君が考える方法とはなんだ?」


「・・・それは、人を裏切るという行為だよ。信頼を裏切る。これ程効果的に人を貶めるに効果的な行為はない。」


彼にしては意外な答えだ。血も涙もないような人間であったと思っていたが、信頼という単語が出てきたことに、私は小さくも驚きを示す。


「しかし、それは私達が行う事と変わらないのでは?」


「いいや違うさ。そもそも、俺が盗むと決めた相手に信頼なんぞ持ち合わせちゃいない。信頼がなければ裏切るという意味合いなど持ち合わせちゃいない。


信頼があるからこそ裏切るという行為が存在するのさ。」


縁もさる事ながら、彼との付き合いはまだ短い。初めは血も涙もないゴロツキと思っていたが、話してみると、存外雄弁と語れる知性を持っていた。


それ故、彼が何故盗みを働く理由があるのか私は興味があった。知的好奇心というのだろう。事の顛末《てんまつ》がどうであれ、彼の行動理念が何処にあるのか確かめずにはいられなかった。


「成る程。では、私が裏切ったら君に未来永劫の苦しみを与えられるのかな?」


私が冗談を言うと、レヴィは大声を出して笑いだす。


「あははは!それはまだわからんよ。ましてや、お前に信頼を寄せるには、ちと時間が短すぎる。」


私もつられて笑みをこぼす。

この男の信頼を買うには相当な時間が必要なのかもしれない。



「それよりも、レヴィ。早く、その席を替わってくれないか?そろそろ限界が近いんだが。」


「あーー。後、五分まって・・・。」


私は腸をうねる波と格闘していたことを思い出した。

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