“これ”が、嫉妬なのか、不満なのか、幼い私には分からない。
呼んでて不快に感じるかも知れません。自己責任でお願いします。
いつだって、そうだ。
生物は、「選ぶ」。美しい方を、魅力的な方を。
いつだって、そうだ。
人間は、「争う」。強い方を、弱い方を、決める。
今だって、そうだ。
かつての「憧れでイケメンな先生」は、存在しない。
先生……いや、“あいつ”は、私にとって、今は。
早く潰れて欲しくてたまらない。あいつの屈辱的な表情を見れるまで、私は満足しない。
…自分でも「まさか」って思うよ。
小学六年生って言う世間的に見れば幼い年齢でこんなどす黒い感情を持つなんて、思いもしなかった。
何にせよ、数年前の純粋な私は存在しない。
今の私は
嫉妬と悪口とインターネットで成形された、人間だ。愚かな…、
一人の人間だ。
小学五年生、春。
新しい学年になって、委員会も始まって。クラス替えもして、親友と同じクラスになれて。
本当に心の底から楽しかった。
新しい先生になって、「イケメンな先生がいいな」なんて、友達とふざけ合っていた。
嗚呼、確かに、イケメンだったよ。顔だけは。性格の、表面だけは。
裏は………、簡単に言うならえこひいき。
まぁ、詳しいことは後に話そうか。今は、現在に至るまでのいきさつを話しておくよ。
「今度からこのクラスの担任です。××です!!
宜しくお願いします。」
第一印象、100点満点中、100点。
最高の先生だった。
ちょっと困ったような笑顔が可愛くて、顔は整っていて、話も面白いし、運動も得意だし、………
良いところを上げていけばキリがないぐらいに。
半年ぐらいずっと良い先生だと思っていた。五年生の時は、ほぼほぼ不快に感じても、「違和感」とか「私の身勝手」ぐらいに思っていた。
最初、おかしいなって思ったのは。
いつか覚えてないけど、確かに五年生の時だった。朝から、先生は機嫌が悪かった。
顔が完全に怒っていた。私生活で何かあったらしい。
「彼女にフラれたんじゃね?」
「それはないでしょ~」
隣の席の男子と、そんな他愛のない会話をしながら、いつも通り授業をして、休み時間はみんなとふざけていた。
まぁ、ごく普通の日常だ。
…先生の怒鳴り声が廊下に響くまでは。
「ふざけんなッ!!」
教室が静まりかえる。どうやら男子の一人がなにやら、やらかしたらしい。怒鳴り声を聞けばそんな感じだし、怒られている男子は説教常習犯、要するに毎日なにやら、やらかすやつだ。
女子達で「怖ぁっ…」と言いながらも、先ほどのように話を再開した。
チャイムが鳴り、先ほどの男子以外のクラス全員が席に着いた。先生と男子はまだ来ない。
「何やったのかな、アイツ」
「窓割ったとか?」
「定番過ぎ、違うだろ」
こんな会話をしているのは私だけじゃ無い。クラスのほぼ全員がざわついている。
だが、もちろん授業中だ。こんなのだと、恐らく先生に怒られる。そう判断したのか、クラスで指折りの
真面目ちゃん(と言っても友達多いし、運動も出来る文武両道)が、
「静かにして! 読書して先生待とうよ!」
そう言うと、みんな机から本を取り出して読み始めた。静かになって分かったけれど、まだ怒鳴ってる。
当の私は、本など無いし、絵を描くのが好きなので自由帳にイラストを描いていた。
数分して、ガラリとドアの開く音が聞こえる。
お説教は終わったようだ。
その日一日中、先生は普段怒らないような細かい事まで注意した。機嫌が悪くても、生徒には当たらないで欲しいなぁ、と思った。
後から聞いたけれど、怒られていた男子曰く、「昨日は先生許してくれたのになぁ…」とのこと。
六年生に進級した。
先生が替わって欲しくない、と言うのと、新鮮味のある先生が良い、と言う感情が入り交じって微妙な気分で登校した。
先生は、変わっていなかった。変わったことと言えば、転校生が一人。
まぁその子(男の子)はフレンドリーですぐみんなに溶け込めたので問題はなかった。
それから4、5ヶ月。対して変なことはなかった。
まぁ、強いて言えばスクールカースト上位の女子にはメモ帳やコスメを許可していたのに、私達スクールカースト中間地点の女子にはメモ帳やコスメの持ち込みを禁止したぐらいかな。
それはまだ「ちょっとイラっとするよねー、まぁいいけどね」みたいな感じだった。
だが。
運動会の表現運動の合同体育のある日。
私や友達の今までの「違和感」は、その日を境に「怒り」へと変わっていった。
私のクラスは6年2組だ。
その日、2組は1組と3組より早く整列が出来ていたのだが、1組と3組に先に体育館を出て行って貰った。
良心で。
早く体育館から出て、教室に帰りたいのは誰でも同じ。だが、私達は他のクラスを優先した。
良心で。
なのに、なのに。
「お前等が一番遅えよ!!」
先生の怒鳴り声が響いた。腹に、響いた。
なんで?
「一番遅いのになに悠々と帰ろうとしてんだよ!?
最高学年としての自覚は無いのか!! 窓を閉めてから出ろ!!」
その言葉に、クラス全員が不快感を覚えた。
「はぁ?」と言いたい気分だった。だが、言ってみろ。宿題が増えたり、親に電話されたり。
面倒で仕方無い。仕方無く私達は震える手を使って体育館の窓を閉めた。
その後。
部活の放課後練習があった。吹奏楽部だった。
音楽準備室、いわゆる楽器置き場で、私達は先ほどの話をした。
「意味わかんなくね?」
「今思い返せば、今までのって全部差別だよね?」
「おかしい」
クラスの中間地点の女子グループは、私を含めると9人だ。
そのうち、6人が吹奏楽部。必然的にかどうかは知らないが、差別らしき物をされている人が多くいた。
その怒りはもう爆発した後だったのだと思う。
それ以降、私や友達は、先生の言葉全てが信じられなかった。全て薄っぺらく感じられたのだ。
先生は、男だ。
男子には平等にする。私が男子の事を「キモい、近寄るな」と言ったら怒られたほど。
でも、女子には驚くほど不平等。美人だったり可愛い子には何でも許す。でも私のような平均以下の顔立ちの子にはちょっと厳しい。
最低だ。教師としても、人間としても。
そして、その怒りを私はついに行動に移した。
うちの学校には、「学校生活テスト」というのがある。
いじめをやられていたり、家族や友達、先生のことで不安や悩みがある場合、それに書いて先生と相談するというものだ。
そこに、私は「先生」の欄に丸をつけ、詳しく書く欄に、「差別」と一言書いた。
数日後、先生と相談。
と言っても悩みの対象は目の前にいる本人なので何も言えず……と、言うより。
「今ここではっきり言うより、後で他の先生に相談して別の人に間接的に言って貰った方が、
アイツは苦しむんじゃないか?」
と、思ったのだ。
苦痛に歪むアイツの顔を思い浮かべたとき。私の心の底から出たのは、
「楽しみ」
その一言しかなかった。
そこで、絶対にこの面談では言わないことにした。
「…これ、もしかしなくても俺のことだよね…。」
元気よく「はい! その通り!!」と言いたいのだが、我慢我慢。ゆっくりアイツから視線を逸らして、
苦笑する。あきらかに無理してるように見えるように。
「話してくれる…?」
「それはちょっと……。」
肩をすくめて、また視線を逸らす。「話したくない」という事を直接言わず、言葉を濁す。
遠回しに行った方が、効果的な事がある、というのは知っている。私はその類の話はよく知っている。
「ほ、保健の先生なら話せるかも…。」
「話せない?」
「はい…。」
こいつ、なかなか粘る。だが、一歩たりとも引くものか。差別はいけないぞ。そう思って、否定し続けた。
このことを知っている隣の席の男子曰く、通常1分弱の相談が、3分ほどになったと言う。
ドアを開け、席に戻る。にやけが止まらなかった。やばい、アイツの顔超面白い。
この後、恐らく私は色んな先生からこのことを聞かれるのだろう。別にそんなのどうでもいい。
私達が受けた屈辱に比べれば、こんなもの軽いものだ。
話は変わって、私は体育が苦手だが、バレーボールは好きだ。
…理由は、(二次元関連だと)ご察し頂きたい。
まぁそれは置いといて、体育で今それをやっている。で、先週の金曜日がその授業の最終日だった。
出たかった、出たかったよ。
でも、「じんましん」によって、私は親と医者から一週間の運動禁止を宣言されたのだ。原因不明のじんましん発症のためだ。急激な気温の低下かも知れないからだそうだ。
だから、出れなかった。グループのみんなに「私の分も頑張ってね!」と声を掛けた。
私は見学だった。体育館の端で、防災ずきんの上に座ってぼーっと体育の様子を見ているのだ。
そこまでは良かった。だが。
「先生、出て良いですか? 風邪だけど、最後の授業なので~。」
「おうっ、頑張れ**!!」
スクールカースト頂点の**が体育に参加したのだ。散々今まで仮病で保健室に行ってダラダラして、嫌いな体育は見学してたくせに。
私は、無性に腹が立った。しかも私服だぞ。**は。みんなが体操服で寒い寒いと言っている中、長袖長ズボンでやるのだ。
これは普通に考えておかしいだろう。
私は、先生に直接「いいんですか、私服だし、**風邪でお母さんからダメって言われてるんですよね」
と、思いっきり嫌味を込めて言った。
そう言うと、先生は「まぁ最後だしねー」と言葉を濁した。
「なら、私も参加したいです。最後だし、キャプテンなので」
「いやぁ、でも貴方はお医者さんからダメって言われてるでしょ~ダメダメ~」
笑ってそう返された。
は? ふざけるな。あっちは母親だよ、自分で「ドクターストップならぬ、マザーストップなんつって」なんて言ってたくせに。
そのまま、イライラしたまま見学を続けた。
「潰す、アイツ絶対に潰す潰して潰して潰して潰してミンチにしてやる……」
物理的じゃない、社会的にだ。
汗ばんだ手を握りしめて、気付かれないようにそう呟いて、アイツを睨んだ。
…これが、一昨日の出来事。
これから私は、どうなって行くのだろうか。恐らく卒業までには何かあるだろう。
だが、どうなろうと、この感情は消えない。
物事が進み次第、また綴ろうと思う。
いったん完結にしておきます。