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第7話 そうですか、そう来ましたか。




あぁ、なんとこの世界の素晴らしきことか!



この私の、いつの間にかに犯した罪の償いを、こうも執拗に取り立てるとは!!





この私は、いかな罪によって全てを取り立てられようとしているのか、それさえ分かっていないというのに!




***




その日は唐突に訪れた。









その時私は、ようやく熱が下がり、久しぶりに落ち着いた体調にほっとしていた。


もちろん、未だ予断は許されない状況にあると言っても過言ではない状態ではあるが、少なくとも、熱が下がり、それによる体力の低下が無くなったのだ。治ったと言ってもいいと思う。



そうして、まったりしようと鈴を鳴らし、九条を呼んだことでそれは判明した。



ガチャ


「失礼致します。お嬢様、ど………!お嬢様、それはどうされたのですか!?」

「へ?何ですか、くじょー?」

「痛くはありませんか?……何かにぶつけたのでしょうか…」

「あの、くじょー、どうしたのです?」

「…お嬢様はここで少しお待ちください。」

「あ、は、はい。分かりました。」


なんだ?

いきなり世話役からやばいものを見る目が向けられて、挙句に待ってろって言われた…?


よく分からん。


…まぁ、待っていろというのなら待っておこうかな。



どうせ、ここから動くことなど出来ないのだし、待てと言われれば、待ってなきゃならないしな!













……分かっていたつもりだったのだ。



この世界が私に優しくないことなど。


















それはただの思い込みで、世界の非情さは、どこまでも私を追い立てる手を緩める気はなかったのだ。




***(医師view)



私は神崎命琴かんざきみこと

そして、あの、可哀想で、愛しい(かなしい)、ちいさなお嬢様のかかりつけ医である。



…あの子は、何故か生まれた時から非常に体が弱かった。

故に、お嬢様とはしょっちゅう触れ合うこととなった。


なので、彼女がいかに聡明で、心優しい方だと分かっていても、それを生かすどころか、20歳まで生きるのも難しいことも知っていた。





しかし、これは……この結果は…!




私が気づかなかったのが悪いのは分かっている。


だが、なぜ!



なぜ、こんなにも非常にわかりにくいタイミングで症状がで、今の今まで気づかせなかったのだ…!!




なぜこの世界は彼女にこんなにも残酷なのだ…!





***




「…そう、なのですか。」

「申し訳ありません、お嬢様…私が、気づいてさえいれば…!」

「いえ、大丈夫なのです。特に、ししょうはないのです。」

「お嬢様…」




…私のかかりつけ医によると、私の左目は、失明してしまったようだ。


大事な部分が機能を停止したため改善の余地もなく、出来るのはせいぜい充血を抑えるくらいだと言われた。


先ほど私の世話役が慌てて医師を呼んだのは、私の目が異常に赤くなっていたためで、それは、ある病気で目に支障がでていたからで、失明したのは熱が出ていたときの、異常なまでの頭痛に関係していて、その症状を見逃し、治療が遅れたためだった。


しょうがなかったのだ。

熱による頭痛と見分けがつきにくく、熱によって目が充血していただけだと思ってしまっても、仕方がなかった。



私がこの部屋を出て、歩き回ることもないから、片目が見えずとも、支障はない。




受け入れるべきだ。




…分かっているのだ。


誰も悪くなく、全ては終わってしまった事であり仕方の無いことだ、と。

















だが、もう疲れた。



脳内でふざけることで、どうにか体とともに幼くなった精神を抑えていたのに、その気力も、もう、なくなってしまった。



わたしは、なぜ、うまれかわって、この世で生きているのか?



あの世界で幸せだった記憶があるのか?




この世界に生まれ落ちるにあたって、その記憶がある意味があったのか?





もう、こんなことを考えることも嫌になってしまった。




だって、私が今更悩んだところで、何も変わらない。



何も、私に戻ってこない。







あの、優しい世界も。



優しい家族も。



私の左目も。













もう、いやだ。








































しにたい。






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