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生きるのに必死だった。


それから私は孤児として、その街に寄生するように生きた。

生きるのに必死だった。


初めは、情に訴えかけるように色々な店を回っては食事を求めたのだが、汚い私の姿を見た瞬間、全員が嫌そうな顔をして私を追い出した。

しかし、食べ物がなければ生きていけず、路地裏のゴミ箱や食べカスを探しては、それを口に頬張った。


孤児が身を寄せ合ってできたグループに声を掛けられ、一度はそこに身を置いたものの、そのグループが犯罪に手を染めていることを知り、誰にも見つからないようそこを抜けだし、別の街へと逃げた。

そんなことを繰り返していくうちに、自分は何をしているのだろうという疑問に駆られた。


何のために、生きているのだろう。

弟や幼名馴染みに会うためだろうか。

かつての自分を取り戻すためだろうか。


その時、レイモンドが読んでいた童話をふと思い出した。


全てを失った主人公に、手を差し伸べる友人の姿。

絶望している彼に、愛情が足りないのだと言って手を取り合う二人。


童話の中の主人公には助けてくれる友人がいた。

しかし、孤児になった私には、そんな人など誰もいない。

私にはもう何も残されていなかった。


脳裏に笑顔を浮かべる幼馴染二人の姿がよぎる。

もうあの頃には戻れないと知り、体から一気に力が抜けた。




15歳の冬、私はその身を雪の上へと投げ出した。




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