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真・恋姫✝無双 魏国 再臨  作者: 無月
乱世 始動
98/111

75,集合 そして 解明

書けました。


さて、今回はどうでしょうね?

 最終的に自分の欲望に勝つことの出来なかった稟が風と共に俺の腕の中に納まり、この大陸に降り立ったあの日のように二人を抱きしめる。

「風お姉様、稟お姉様、英雄殿。そろそろよろしいでしょうか?」

 そんな俺達の頃合いを見計らって、公孫越殿が俺達の元へと歩み寄ってきた。

「お兄さん、こちらが幽州の苦労人・公孫越ちゃんなのですよー」

 彼女の言葉通りに風と稟はさっと俺から離れ、公孫越殿を紹介するように手を添える。紹介された公孫越殿も頭を下げ、白蓮殿と同色の髪をまとめずに流し、垂れた前髪は目の片方を覆ってしまっていた。

「初めまして、英雄殿。私は公孫賛の実妹・公孫越と申します。

 感謝の言葉を告げれば際限がありませんので、この場での簡略の礼をお許しください」

「何故、赤根にまで先を越される?!

 えぇい、そこを退け! 宝譿!!」

「でぃーふぇんす! でぃーふぇんす!!」

「言ってる意味がわからん!

 そして、何故増えている?!」

「それは!」

「残像!」

「だぜ!!」

 俺と公孫越殿がそうして挨拶を交わしている後方では、趙雲殿と宝譿が熾烈な攻防を繰り広げていた。

 複数に増えたように目が錯覚してしまうほどの速さで動く宝譿が、趙雲殿が俺の前へと来ることを防いでいる。趙雲殿も相手にすることを放棄しようと何度も合間を縫って俺の元へと向かって来ようとしているのだが、宝譿の速さがそれを許さない。

 宝譿がいろいろとおかしい上に、そこまで趙雲殿を俺に近づけまいとする理由がよくわからないんだが・・・

「いや、こちらこそこんな状況下で時間を取るようなことを・・・」

「それはかまいません。

 私にとって姉のような存在であり、英雄殿と良き関係にある風お姉様と稟お姉様が感情を吐露する場となることは私では役者不足です。

 それに白蓮お姉様達にも少々受け止める時間が必要でしたから・・・ もっともそれも樟夏お義兄様が支えてくださいましたので、その心配も杞憂に終わりましたが」

 公孫越殿が視線を移した先には、幽州の街を見つめたまま泣くことも、怒ることもなく受け止める白蓮殿が。そして、樟夏はそんな白蓮殿に寄り添い、彼女が倒れてしまわぬように肩を抱いていた。その光景は初々しくありながら、長年連れ添った夫婦のような自然さが存在していた。

「お姉様、樟夏お義兄様」

「あぁ・・・ うん、わかってるよ」

「白蓮・・・」

「私は大丈夫だよ、樟夏。

 それに・・・ 辛くなったら、またその腕で支えてくれるんだろ? 今みたいに」

「勿論。

 私はあなたの伴侶ですから」

 あぁ、仲良きことは美しきかな。

 改めて樟夏に配偶者が出来たことを噛み締めながら、二人の何気ない会話が微笑ましい。

「では、お姉様とお義兄様も正気に戻ったことですし、出発しましょう。

 英雄殿、先導をお願いできるでしょうか?」

 そして、割と混沌としたこの状況下でも本題を斬りだすことの出来る公孫越殿は心強くもあり、その心根は間違いなく強いのだろう。けど、だからこそ・・・

「お兄さーん? どうかしましたかー?

 赤根ちゃんに見惚れてもいいですけど、星ちゃんは駄目ですよー?」

「何故だ?! だが、今が好機!!」

 風の軽口に未だ宝譿と攻防を繰り返していた趙雲殿が律儀にツッコミをいれながら、宝譿の一瞬の隙を掻い潜って俺の方へと向かってくる。

 その目はギラギラとした輝きを放ち、まるで飢えた獣。

 隙を突かれた宝譿は勿論、風すら驚きの表情を隠そうとはしなかった。

「ふふ、赤の遣い殿の唇と抱擁は頂いた!」

 どこか得意げに笑い、後方へと残した風達に勝利宣言を言い放つ辺り、彼女の性格を覗かせる。

 だが驚くべきことにそんな彼女の行動を見透かし、既に行動に出ている存在が一人だけいた。


「させませんよ、星。

 宝譿、もう一仕事です」

「は? それどういう意味だよ? 稟嬢ちゃ・・・ って、説明する前に投げんなーーーーー?!」


「私とどうか結婚を前提に・・・」

 稟の言葉と宝譿の悲鳴、そして趙雲殿が口走る告白が混ざり合いながら、目前まで迫っていた趙雲殿と俺の間に見事指し込まれる。

「なっ?!」

 当然、俺の目前で止まろうと走っていた趙雲殿は意表を突かれ、目の前に突然現れた宝譿を飛ばすことも出来ず、立ち止まる。

 稟に投げられ、俺の前で浮き上がったままの宝譿はわずかに笑い、趙雲殿を指差した。

「わりぃな、嬢ちゃんは好みじゃねぇんだ。

 大人の女になって、出直してきな」

「誰が貴様にするかあぁぁぁーーーー!!」

 いや、宝譿かっこよすぎだろ。いつからそんな男前になった?

「そして、誰が大人の女じゃないだ!

 見た目的に言えば、風が一番大人の女じゃないだろう!」

「星ちゃーん、それどういう意味ですかねー?」

 趙雲殿が勢いよく風のことを指差して叫べば、風はいつもの調子で問いかけて笑っている。

「いや、精神年齢的には風が一番ばば・・・」

「遺言があるなら聞きますよ? 宝譿」

 精神年齢なんて言ったら俺も爺だし、そう考えるとあの時の皆と俺って高齢結婚になるのかもなぁ。

 あぁでも、それにしても・・・

「風、宝譿、星、稟。皆、その辺に・・・」

「そうですよ、大体精神的なことを言ったら兄者も相当ご年配に映りますし、むしろお似合・・・」

 白蓮殿が止めに入り、樟夏が白蓮殿の加勢しようとしているにもかからず、いつもの余計な一言がそれを許さない。

「そんなことはない!

 風と稟がお似合いなら、私だってお似合いになれる筈だ!!」

「お似合い・・・ あぁ、とてもいい響きです。

 そして今後、冬雲殿と共に愛を育み、当然・・・ ぷふー」

「おぉ~、久し振りに稟ちゃんの鼻血が見れたのですよー。今日は何か良いことあるかもですね」

 趙雲殿が否定し、稟が妄想にふけって鼻血を噴きださせ、風がどこかずれたことを言って微笑む。

「お姉様方? 私もそろそろ怒りますよ?」

「おー、赤根嬢ちゃんが怒ったらおっかねーから、その辺にしとけって」

 最後を公孫越殿が絞め、宝譿が怒りを笑いへと転じさせる。

 本当に良い組織(チーム)だなぁ、今後この面子のままで仕事を行えるように進言しておくかな。

「それだといつまでたっても邪魔される?!」

「突然なーに言ってんだ、星嬢ちゃん」

 何かを察したらしく突然叫びだす趙雲殿に宝譿が首を傾げるが、邪魔って何のことだ? 仕事の面においては邪魔しそうな人なんてここにはいないけどな。

「と、とにかく、出発しようか」




「というわけで、皆さんは今までお兄さんを独占してたんですから、この一週間は風と稟ちゃんがお兄さんを独占しますから」

 玉座の間にて開会早々、風がとんでもないことを言いだした。

 玉座の間が一瞬だけ静まりかえり、一瞬置いた後に爆発が起こった。

 今回はいろいろと話すことがあるので、玉座には紫苑殿を除いた全員が並んでいた。当然舞蓮もいるのだが、椅子に厳重に縛りつけられ、その隣には黒陽が配置されている。

「独占なんて、華琳様と白陽以外してないわよ!」

 第一声を桂花が勤め、他の皆も続くように前に出て行く。

「せやで!

 ウチかて、独占なんて出来とらんわい!!」

「まぁまぁ、皆さん落ち着いて。

 ですが、新入りさんは順番を守っていただかないと」

「なんて言いながら、月は来て一週間もしない内に夜這いかけようとしてなかったっけ?」

 霞の追撃が入り、その合いの手を入れるように月殿が続く。

「そうですよね。

 私もまだ手を出していただいていませんし」

「あなたに手を出したら問題でしょうが! 千重様!!」

 千重がさらっと言い放ち、樹枝がそれにツッコミをいれるがまったく聞き入れていない気がする。

「今は忙しい時期だから諦めなさい」

「バッサリ言ったー! そして、断ったー!!

 自分の事は完全に棚上げだーーー!!」

「えー・・・ 華琳様、それは狡いですよー」

 樹枝のツッコミは聞き流され、風と華琳は普通に会話を続けていく。

 そんな楽しい中を俺は見守り、静かに覚悟を決めていた。

 これを知られてしまえば皆に嫌われ、疎まれてしまうかもしれない。いや、それはむしろ当然だろう。

 だが、話さないという選択肢は存在しない。

 一度話すと言った以上、約束は守るものだし、俺達はそう決めていた。

「袁紹が幽州を攻め、こちらへと向かってくる以上はいろいろと準備が必要でしょう?

 それに今の冬雲の立場は一週間も暇を用意できるようなものじゃないのよ、風」

「それはわかりますけどねー。

 せめて、お兄さんと一緒にお仕事をしたいのですよ。

 お兄さんと机を並べて仕事するなんて、あの頃は想像も出来ませんでしたから」

 なんかいろいろと馬鹿にされてる気がするけど、しょうがない。しょうがないんだ! むしろ肩を並べられるぐらい成長したってことなんだ!!

「それも駄目ね。

 あなたとはそもそも役目が違うし、絶対抜け駆けするでしょう」

「むしろ同じ状況下に置かれて、華琳様はしないんですかー?」

「抜け駆けなんてしないわよ。

 だって、冬雲は私の物なのだから、当然の権利でしょう」

「「何この会話、怖い!!」」

 風と華琳の容赦のないやり取りに樹枝と樟夏が叫ぶが、桂花を始めとした全員がそのやり取りを羨ましそうに眺め、あるいは悔しそうに歯噛みをしている。

 俺は絶対口を挟めない上に、選択権がないのはもう今更だと諦めた。

「ま、まさか、あの風に口で勝つ者などとは・・・!」

「星ちゃんが弱すぎるんですけどねー」

「何だと?!」

 そもそも軍師と口でやりあって武将が勝てるわけないんだけど、言わない方がいいかもしれない。

 結局俺、趙雲殿のことは風達の話とか、前のことしか知らないしな。

「でさぁ、私を含めて全員揃えたってことはそろそろあれ(・・)を話してくれるってことかしら?

 私もうドキドキなんだけど」

「あなたは別にいらないのですが」

 ガタガタと椅子を揺らしながら自己主張する舞蓮に、白陽が冷たい目を送っている。

「例の話、ですか」

 樟夏が何かを察したらしく神妙な顔をし、雛里を始めとした数名と視線を合わせる。すると、雛里達も頷いて、同様に神妙な顔をし始めた。

 もっとも、視線を向けられた一人である樹枝だけが首を傾げ、不思議そうな顔をして周囲を見渡した。

「え? あれ? 何の話ですか?!

 僕、聞いてないんですけど?!」

「あぁ、そういえば樹枝さんはあの話をした時、洛陽で女装をしていましたから」

「あの斗詩さん、どうして女装を全面に出すんですか?

 僕、結構重要なことやってましたよね? もっと言い様ありましたよね?!」

「えぇ、ただ女装しただけではありません。

 女装をした上に、本来男子禁制である職場に受かったのです」

「何でそこで偉業であるかのように言いました?!

 確かにそんな人は、僕以外いないでしょうけどねぇ!」

 斗詩の何気ない言葉で出鼻を挫かれ、緑陽の言葉が突き刺さり、樹枝は叫ぶ。

 が、忘れてはならない。樹枝のとどめを刺すのはもう一人いることに。

「いやー、偉業だよ?

 大陸広しといえど男子禁制のあの城で、女中として働いた男の娘なんて攸ちゃんだけだって!」

「誰が男の娘だーーーー!!!」

 樹枝の心の叫びを聞きながら、俺は自分の席から立ち上がって全員を見た。

「多分、皆も知ってのとおり、俺と華琳を始めとした数名はある秘密を抱えてる。

 今回、集まってもらったのはさっき舞蓮が言った通り、俺の口から皆に説明するためなんだ」

 こで一度俺はかつての面子である皆へと視線を向けるが、既に覚悟を決めていたんだろう頷くことも、促すこともなく、俺と視線を合わせるのみだった。

「じゃぁ皆、聞いてくれ。

 俺達に経験した、かつてのことを」



 俺は静かに語りだす。

 かつて華琳の元に降り立った一人の男の物語を。

 そして、その終焉と今に至る全ての話を。



 最後まで語り終えると、隣に立つ白陽が静かに俺の手を握る。

「そんな健気な華琳様が存在した、だと・・・?!」

「樹枝。

 それは今、言わなくちゃいけないことだったか?」

 わかってる。

 樹枝がこの場を和ませようと、わざとふざけたようなことを言っているのはわかってる。だけど正直、今は余計だよな?

「愛した女性の命と己の命。

 兄者は辛い決断を迫られたのですね・・・」

「感動の話だ・・・

 そんな悲恋を経験し、今また再会を果たすなんて・・・ 華琳お義姉様達はなんて凄いんだ・・・」

 樟夏は考え込むように言葉を吐きだし、その隣に並んだ白蓮殿は涙を零していた。

 なんていうかまだまだ短い付き合いだけど、白蓮殿って本当に良い子だよなぁ。

「話してくださってありがとうございます。冬雲さん。

 なんて言っても・・・ 冬雲さん達の葛藤や想いなんて私には想像するぐらいしか出来ないんですけど、それでも・・・ 全てを明かしてくださって、ありがとうございます」

「私も斗詩さんと同意見でしゅ」

 そう言って斗詩と雛里はその場に頭を下げ、座り直した。

「って私、死んでる?!

 何で死んでるの?!」

 俺が来る前には亡くなってたから、今回助けられるかどうかすら賭けだったなんて言えない。

「ですが、その時の記憶があるからどうかしましたか?」

「えっ・・・?」

「いえ、その記憶があるから華琳様と冬雲さん達の関係があるのはわかりましたが・・・ その記憶があって何か支障がありましたか?」

「えっ?!」

「むしろ私としてはこうして冬雲さん達と共に居られますし、記憶様々(さまさま)なのですが、どこかおかしいでしょうか?」

 思わぬ月殿の反応に俺は戸惑いを隠せなかった。

 いやだって・・・ 責められこそすれこんな反応なんて・・・

「そいつは責めてほしいんでしょうよ。

 まぁ、月の反応も変だとは思うけど、その記憶があったからこそ僕らはこうしていられるんだし。恨むことなんてありゃしないわよ」

 呆れたような詠殿の言葉に追い打ちをされ、俺はただ目を開かされていた。

「ちょっと!

 そっちの私、死んでんじゃない?! 何で死んでんのよ!?」

「さて、そこで吼えている虎は置いておくとして・・・」

 そう言いながら白陽は俺の前に立ち、そこにいる全員を指し示すように手を広げた。

「ご覧ください、冬雲様。

 あなたが降り立ってから出会った者は皆、あなたと居ることを後悔などしておりません」

 そこで一拍おき、白陽は俺へと手を伸ばす。

「華琳様でも、かつての者達でもなく、私が今お伝えしましょう。

 戻ってきてくださって、いえ・・・ この地へと再び降り立ってくださって、ありがとうございます」

 華琳以来なんて言ったら怒られてしまうかもしれないけど、華琳に並ぶほど惹きつけられたのは彼女なのかもしれない。

「石のように頑なだった私を華へと変えたあなた様の傍で、私は咲き続けましょう」

 これが俺の、二度目の初恋だった。


次も本編ですが、シリアスからはちょっと離れます。

その次は白、その後は白と赤の再会とかいろいろ予定しています。


番外も書きたいなぁ・・・

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