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真・恋姫✝無双 魏国 再臨  作者: 無月
反董卓連合
56/111

40,会議前 再会

書けましたよー。


さぁ、どうぞ。

 ついさっきまでの混乱はすっかり収まり、蓮華殿も北郷もそれぞれの仲間を連れて自分たちの陣へと戻っていった。俺たちも会議の前ということもあり、ひとまず自分たちの本陣で待機することが決まり、まだ眠っている白陽を灰陽に任せて自分の幕を後にする。

 俺が陣から出ることはあまりないだろうし、この連合がどうなるかわからない上、今後突然変わってしまう事態に備え、隠密である白陽たちをまともに休めるのは今だけの可能性も高い。

「はぁ・・・・」

 ようやく俺は本陣で腰を下ろし、人心地つくことが出来た。

「冬雲? どうかしたのか?」

 何かの騒ぎがあることは知らされているが、その内容をまだ知らないのだろう春蘭が不思議そうな目を向けてくる。

「あー・・・ さっきまでいろいろあったから、少し疲れてさ。

 でも、まぁ・・・ なんていうか・・・・」

 確かに精神的に削られるものはあったし、一歩間違えれば問題に発展しかねないようなこともちらほら存在していた。

 舞蓮に関しては他の陣営に知られてはまずいだろうし、それにより孫家とこちらが繋がりを持っていることが明らかになれば、他諸侯に目を付けられる可能性は非常に高かった。

 ただでさえ前回の乱で民に『英雄』と称えられ、『赤の遣い』という大陸の異端者()を抱え悪目立ちしているこの陣営が他との繋がりが明らかとなれば他諸侯が一斉に攻め込まれ、潰される危険性もはらんでいた。

 だが幸いなことに、その状況に陥ることはなかった。

 あそこにいる誰もがそんなことを気にすることもなく、あえて指摘するようなこともなく、笑い合う。

 各陣営のそれなりの身分にある者が集まり互いに叫んだり、泣いたり、怒ったり、笑ったり・・・・ 素の表情を、言葉を、想いを曝け出して、ドタバタ劇を繰り広げる。

 そんなこの連合にそぐわない、おもわず聞いたものが笑うことしかできない場があそこには生まれた。

「悪くなかった、かな」

 ひとときの偶然によって出来上がった混沌。

 まるでいつもの俺たちみたいに、誰も彼もが笑い合える空間。

 あそこにあったのは、間違いなく俺の理想に近いものだった。

「ふむ?

 まぁ、よくわからんが、お前がそういうのならよかったんだろう」

 よくわからなくても、俺の表情を見て納得してくれた春蘭に頷き、おそらく何があったのかをわかっている秋蘭がからかうような笑みを向けてくるが、今は見ないふりをしておく。

「この後は会議をして、その後は泗水関か・・・」

 泗水関と虎牢関、俺たちが洛陽に着くまでに突破しなければならない文字通り二つの関門。

 誰が配置されていてもおかしくはないし、関ゆえに攻め方は限られてくる。しかもこの連合は、あくまで他陣営が集まったというだけ寄せ集めに等しい状況、利害関係が一致しなければ協力しあうことにも積極的ではない。

 どの陣営が先陣をきるかによって、攻め方は大きく変わってくるだろう。

「だが、まず我々が先陣をきるということはないだろうがな」

 俺の言葉を秋蘭が腕を組みながら短く答え、洛陽までの地図を広げる。

 洛陽と書かれた場所から流れるように書かれた一本の線、そして凸とされている上には『虎』と『泗』という一文字のみが書かれている。

 その場にいる俺たち四人が地図へと目を落としながら、華琳は●で記されているおそらくは今の俺たちの現在地へと指を置いた。

「私達は黄巾の乱で有名になりすぎたわ。

 他諸侯たちからすればこれ以上民の支持が私達に向くことも、武功をあげられることも避けたいのが本音でしょう。

 乱戦でもない限り私達はこの戦で表立って戦うことは出来ないけれど、逆を言えば『ここに居る』、それだけで乱世に名乗りを上げるという目的を果たしているとも言えるわね」

 華琳は楽しげな笑みを浮かべ、地図の先にある何かを見るように目元を緩めていく。

 目的はそれだけじゃないことを無言で語り、その瞳は欲しい物が自分の手の届く場所に来た時の子どものような輝きを宿していた。

 俺たちが愛する彼女の、傍に居る者にしかわからない表情に俺はおもわず頬を緩め、見れば春蘭も秋蘭も同じような表情で華琳を見ていた。

「なぁ、華琳。それはそうと、樟夏はどこに・・・・」

「華琳様ー! すみません!!

 大切な報告があって来たんですけど、今大丈夫でしょうか?」

「つい、いつもの癖で樟夏の兄ちゃんを飛ばしちゃいましたー」

 あぁ・・・ 今の季衣と流琉の報告でいろいろと納得した・・・・

「あら、そう。

 また樟夏が何かを言ったんでしょうけど、ここは陳留ではないのだから気を付けなさい。

 二人には罰として、樟夏が戻ってくるまで樟夏の部隊のまとめること、それから書簡仕事よ」

「はい・・・ 申し訳ありませんでした」

「わかりましたー」

 何事もないように罰則を科し、樟夏の仕事の穴埋め作業を行う華琳の慣れが怖いです。

 でも罰則としては妥当であり、今わかっている範囲では最善の行動を指示するところは流石華琳。

 二人は言い渡されてすぐに幕を出ていき、流琉は一度俺を見て苦笑を浮かべてから仕事へ向かった。

 流琉が知ってるってことは、司馬八達による連絡網であの一件(黄蓋殿による接吻)は全員に知れ渡ってるんだろうなぁ。

「冬雲、しけた顔をしないで堂々としていなさい。

 それとも、私にもう一度消毒されたいのかしら?」

 華琳は俺の考えてることを察して、誘うように自分の唇へと指を当て、投げるように俺へと指を向ける。

 あぁもう! 可愛すぎだろ!!

「そ、それより樟夏がどこに飛んだか捜索しないとな。

 他の陣営に何かの被害を出してたら大変だろ?」

「曹操様、幽州の公孫賛殿がお見えになりました。

 挨拶とのことですが、如何なさいますか?」

 俺がそう言って立ち上がれば、まるで機を見計らったかのように兵の声が響く。

「こちらが出向くわ。

 行くわよ、三人とも」

はっ(おうっ)

 華琳の言葉に俺たちもすぐさま立ち上がり、その背へと続いた。




 華琳が前を歩く中、定位置である右側に春蘭、左側に秋蘭。そしてやや離れた右側に俺が続く。

 しばらくそうして歩いていると、まず見えたのは四つの影。順に金髪、濃い桃色、淡い黄と茶。

 ん? 金?

 て、あれ? なんか一人が突然走り出して、しかもこの進路って間違いなく華琳じゃなくて俺に来る?

 え? でも茶ってことは・・・・ 稟だよな?

 何で俺? 華琳じゃなくて、何で俺にそんな笑顔を向けてくれるんだ?

 その表情は華琳に向けてたものじゃぁ?!

「冬雲殿!」

「り、稟?!」

 俺の名を呼び、正面から両手を体にしっかりと回して抱き着いてくる稟を受け止める。こっちで最初に会った時もそうだけど、稟がなんだか前より変わっている気がして俺は少し戸惑ってるんだけど?!

「冬雲殿、私はもうあなたに言葉を言わずに後悔するのはごめんです。

 心からお慕いしています。愛しています。もう離れないでください、お傍に置いてください。この心と体の全ては華琳様と冬雲殿、お二人のものです」

 やや早口で放たれていく言葉の数々を避けることが出来る訳もなく、とりあえず稟を抱きしめ返した。

「稟が壊れた?!」

 突然駆けだした稟を追いかけて来たのだろう三人へと目を向ければ、そこに居たのは何故かいる樟夏と風、そしてもう一人おそらくは公孫賛殿であろう人へと目を向ける。

 ていうか、『壊れた』か・・・

 まぁ、普段の稟を見ていたら突然駆けだした上に、誰かに抱き着いたらそう思っても仕方ないか。

「やはり兄者ですか・・・

 というより、程昱さん。あなたも止めてくださ・・・・」

 呆れるような、慣れたような表情をして樟夏が風へと視線を向ければ、風はうずうずと体を動かし始め、稟も何かを察したかのように俺の右半分を開けるように左へと移動する。

「おにーさーん!!」

「おっと、緊急離脱の時間だぜ!」

 風が駆け寄ろうとした瞬間、宝譿が風の頭から公孫賛殿の頭に飛び移っていくのが見え、俺の腹に二度目の軽い衝撃と共に風が飛び込んでくる。

 今の宝譿に関していろいろツッコみたいところがあったけど、とりあえず置いておくとしよう。

「「お前もか!!」」

 二人の息のあったツッコミを聞きながらも、俺はゴロゴロと猫のように甘えてくる二人から手を離す気なんてあるわけがない。

「幽州の公孫賛とお見受けするわ、私は陳留で刺史を務めている曹孟徳。

 なんだか申し訳ないわね、こちらの曹仁がそちらの軍師を抱きしめてしまっていて」

 華琳? 俺、何もしてないってわかってるよね?

 その言い回しだと、俺が突然抱きついた変態みたいに聞こえるよな?

「いやいや、こちらこそ突然訪問するなんて失礼なことをしてしまって本当に申し訳ない。

 突然叫んだりしてしまって・・・ それに客将とはいえ、こちらの軍師二人が・・・」

「あなたが気に病むことではないわ、公孫賛。

 こうして顔を合わせるのは随分と久しぶりになるのだけど、彼女たちとは知り合いなの」

 華琳は公孫賛殿と軽く言葉を交わした後、優しげな眼差しを風と稟へ向けた。

「風、稟」

「は~い、お久しぶりなのです。華琳様。

 あの時、華琳様が言われた言葉の意味を風は今、噛み締めているのですよ~」」

「お久しぶりです。華琳様」

 俺に抱き着いたまま顔だけを向けて、華琳に可能な限りの頭を下げる二人は希少どころかあの時じゃありえなかった光景。

 後ろめたいような、気まずいような、恥ずかしさもあるけど、それ以上に嬉しくて、俺の顔は今みっともなく緩んでいるだろう。

「そのままでいいわ、二人とも元気そうで何より。

 稟は、随分素直になったわね」

「はい・・・・」

 稟の照れ顔、超可愛い・・・!

「冬雲、顔が大変なことになっているぞ」

 秋蘭から呆れたような声で注意されるけど、もうこれはどうしようもない。

 顔を元に戻そうとしても、久しぶりに会った二人とこうして触れ合っているだけで嬉しくてしょうがなかった。

「姉者、そして兄者も、そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか?」

 樟夏がちらちらと俺の方を見ながら窺ってくるけど、その視線はむしろ二人に頼む。俺は二人を振り払うことなんて絶対できないし、したくないからな。

「冬雲たちのことは放っておいてあげなさい。

 樟夏、あなたは先程季衣と流琉に飛ばされたと聞いたのだけど、どうして公孫賛と共に居るのかしら?

 そして、何故あなたが切りだすのかしらね?」

「それはその・・・・ 飛ばされた先に偶然白蓮殿がいまして・・・」

 何故か赤くなって口籠る樟夏の言葉の中には、おそらく公孫賛殿の真名らしきものがあり、俺は首を傾げつつ耳だけはしっかりと話を聞いておく。

 が、そんな中公孫賛殿の頭の上から笑い声が漏れ、俺はさらに驚愕し、その姿を確認してしまう。

 え? 宝譿は今、風から離れてるよな?

 前は腹話術で通ったけど、まさかこれも俺がこっちに来たから起こった変化だっていうのか?

「やっぱしあれは、ちびっこ嬢ちゃんたちが飛ばしてきやがったのか。

 華琳の嬢ちゃん、簡単に言うとだな。この嬢ちゃんが歩いてるところに突然曹洪の旦那が落っこちてきちまって、ついでに二人して『運命の恋』っつう抜けられない穴にも落ちちまったのさ。

 しかも胸に触るなんて旦那みたいな幸運なスケベをかましやがって、そんな珍事を前にしても二人揃って初心(うぶ)な空気をかもしやがったもんだからよ。俺がちーっとけしかけてみたら、告白までしちまいやがった。

 話を聞いたら華琳嬢ちゃんの弟だってんで、流石の俺も驚いたもんだったぜ。ハッハッハ」

「そう・・・ わかりやすい説明、感謝するわ。宝譿。

 あなたについても詳しく話を聞きたいところだけど、流石にそんなに時間は取れないでしょうし、今は追及しないでおくわ」

「あなたが説明するんですか?!

 というか、姉者もそれで納得しないでください!

 発言しているのが、この原理の良くわからない者なんですよ!?」

 ありがとう、樟夏。俺の気持ちを八割がた代弁してくれて。

 でも、出会いがしらに告白とか、一瞬『当たり所悪かったんじゃないか』と心配になってしまった兄を許してくれ。

 付け加えるのなら、どうやらそれを拒まなかったらしき公孫賛殿も。

「けれど、事実なのでしょう?

 あなたの隣で、火のように真っ赤に染まっている彼女自身が何よりの証拠ね」

「えっ? 白蓮殿?」

「おーい、白蓮嬢ちゃーん? 大丈夫かー?」

 華琳の指摘に樟夏が隣に並んだ公孫賛殿を見ると、真っ赤に頬を染め上げて樟夏を頼るように服の裾を掴み、頭上の宝譿にぺしぺしと何度も叩かれている。なんか立っているのすら精一杯っぽいな。

「ぱ、白蓮殿? 大丈夫ですか?」

「その・・・ あの・・・ こ、これからよろしくお願いします! お義兄さん、お義姉さん!!」

 その発言についに秋蘭が吹き出し、静かに肩を震わせ始める。春蘭は首を傾げ、とりあえず状況を静観することに徹しているようだった。

 秋蘭、気持ちはわかるけど笑いすぎだからな?

「お兄さん、白蓮ちゃんはとっても面白い子でしょー?

 基本的に真面目で、とってもお人好しでもあり、なんだか放っておけない小動物のような、おもわずからかって遊んでしまいたくなってしまうような人なのです」

「あぁ、風が普段どう接してるのかが目に見えるようだよ・・・・」

 主に風に遊ばれてるんだろうなぁ・・・ 趙雲殿はよく知らないけど、風に近いものを感じたし、稟も真面目な顔して悪乗りする時あるし。

 判断を仰ぐように華琳へと視線を向ければ、華琳は楽しげに、だがどこか嬉しそうに笑っている。

「あら、樟夏。

 彼女はあなたのことを本気だけれど、私はあなたの本気を見ていないわね」

 ん? 華琳?

 そこで樟夏を挑発するって、何をする気だよ?

「ふふっ」

 華琳は頭を下げる公孫賛殿の頭をあげさせ、その体へと触れようとした瞬間・・・

「姉者であっても、駄目です!

 彼女は私の妻となる女性であり、誰であっても・・・・ それこそ兄者であっても彼女を譲る気はありません!!」

 樟夏が背後から抱きしめる形で彼女を引き寄せ、俺はそんな独占欲を丸出しな樟夏の行動におもわず笑ってしまった。俺は華琳達ほど樟夏のことを見てきたわけじゃないけど、あの常にどこか諦めたような樟夏からは想像できないような行動や言動に溢れている。

 まるで華琳に出会ったばっかりの時の、天じゃ想像できないほどがむしゃらになってた俺みたいじゃないか。

「そうだよな」

「冬雲殿?」

「かっこつけたいよな、好きな人の前では」

 『大好き』なんて言葉じゃ満足できなくなった『愛する』という思いが、臆病な気持ちすら引っ込めさせて、ただ行動だけが前に出ていく。

「華琳、意地悪しないで認めてやれよ。

 こんだけ必死なんだ、本気なのはわかってるだろ?」

「ふふっ、そうね。

 欲しかったら、次は堂々と彼女を勝手に口説くとしましょうか」

 華琳が笑いながら言えば、秋蘭がその場からくっついたままの二人を眺め、にやにやと笑っていた。

「な、なんです? 秋蘭」

「いや何、お前のことを好きになる女が麗羽以外いるのかと思い、見ているだけだが?」

 麗羽? それって確か、袁紹殿の真名じゃなかったか?

 前もそうだったけど、華琳と袁紹殿の関係って全然知らないままなんだよな。

「ふむ?

 私にはよくわからんが、これが終わったら陳留で祝いの準備でいいのか?」

「「いわっ?!」」

「だな。

 婚儀までは行かなくても、婚約とかの手続きで必要な物とか用意しないといけないだろうし。

 とりあえず、樟夏。公孫賛殿。おめでとう」

 首を傾げながらも大まかな内容を理解していたらしい春蘭からもっともな発言が出て、俺も頷く。

 なんでか祝われる当人たちは驚いてるけど、自分たちが婚約とか言い出しておいて何を今更驚くことがあるんだろうか?

「詳細は今後、話していきましょう。

 もうそろそろ連合の会議が始まる頃でしょうし、準備が必要でしょうから一度陣へと戻りなさい」

「あぁ、ありがとうございます」

「安心なさい、樟夏にはしっかり責任をとらせるわ。

 私の可愛い義妹さん?」

「は、はひ! お義姉さん!」

 これから公孫賛殿の苦難が見えるようだなぁ。なにせ華琳の妹になっちゃうわけだし。もっともその苦労の分、楽しいことがあることも俺が保証するけどな。

「華琳様も弄ってますねぇ」

「白蓮殿は弄り甲斐がありますから、当然でしょう」

 そう言って俺にくっついたままの二人は、公孫賛殿を見送るようにしている。

「って! 何で二人はこっちに残ろうとしてるの?!」

「冬雲殿成分がまだ不足しているので」

「お兄さん成分が足りないと、生活に支障をきたすので貯めているところなのですよー」

「あー・・・ まだ旦那成分は二十パーセントぐらいしか貯まってねぇなぁ」

 いつから出来た? 俺の成分。

 ていうか、どうしてわかるんだ。宝譿。

「二人とも、そうは言ってられないだろ?

 まだやるべきことがあるんなら、精一杯頑張ってきて、また会おう。

 どうせ、公孫賛殿と樟夏の婚約でいろいろと話し合う場はあるだろうしな」

「むぅ~、仕方ありませんねぇ・・・・

 あちらの仕事もありますし、今は戻りますか。稟ちゃん」

「非常に残念だけれど、あまり待たせて星がこちらに来ても厄介だものね。

 ですが・・・」

 二人は俺からしぶしぶ腕を離し、稟が視線で風に何かを合図する。

「「お兄さん(冬雲殿)」」

 二人が同時に俺の首元を引き寄せ、顔を挟まれる形で俺の頬へと唇が二つ触れる感触が残り、耳元へと囁いていくのは一つの愛の言葉。

「「心から愛しているのですよ(います)」」

 俺の顔は瞬時に熱くなり、すぐに離れていく二人を止めることも出来ず、二人は公孫賛殿のところへと並んだ。

 見れば公孫賛殿は樟夏のことをちらちらと見て、樟夏も戸惑いながらも意識しているのが垣間見える。だが、結局二人は何もすることはなく、公孫賛殿は一礼して去っていった。

 甘酸っぱい青春の一場面を見てしまったためか、俺は生暖かい視線を樟夏に向け、最早みんなからは喪失されてしまった初心な反応を懐かしく思っていた。

「接吻くらいすればいいのよ、意気地のない男ね」

「兄者と姉者が開放的過ぎるのですよ! 普通はこんなものなんです!!」

「開放的とかを初対面から告白した奴に言われても、痛くもかゆくもないなぁ」

「ククク、まったくだ」

「接吻に恥ずかしい事でもあるのか?

 むしろ嬉しい事だろう?」

 俺たちは準備のために陣へと戻る際中、そうしてずっと樟夏をからかって遊んでいた。


次は会議です。

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