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真・恋姫✝無双 魏国 再臨  作者: 無月
反董卓連合
53/111

39,洛陽にて 【華雄視点】

自分でもちょっと引きますね、このペース・・・

とにかく書けましたー。


・・・・クリスマス番外、読みたい方います?

イブか、クリスマスに誰かとイチャラブ的な。

「変態が!」

「恋殿に!」

「近づくなです(でござる)!!」

「ちんきゅーきぃーっく!」

「高! 順! ぱんち!!」

「ただ挨拶しただけなのに、理不尽だーーー!!」

 午前の鍛錬を終え、街で適当に食事を済ませてきた私の目に飛び込んで来たのはもはや日常の一部となってしまいつつある光景。

 おもわず溜息をつきながら、眼前へとまっすぐ飛んできた荀攸を後ろに数歩下がることで回避する。

「受け止めてくれたっていいじゃないですかぁーーーー!」

「飛んでいる最中に叫ぶ元気がある奴に、気遣いなど不要だ」

 叫びながら通り過ぎていく荀攸へと短く返しながら、私は吹き飛ばした当人たちへと目を向ける。

「か、華雄殿?!」

「んな? 何で華雄がこの時間にここに居るのです?!」

 私が視線を向けると二人は何故か驚き、表情を硬くする。それはおそらく私が怒っていることが顔に出ているからだろう。

「芽々芽、音々音」

 私が呼べば二人はその場で直立姿勢となり、ガタガタと震えだす。

 よく見ればその傍には恋もいるが、私が怒るところまでが日常の一部だとでも言うようにセキトと共に欠伸をし、壁に寄りかかり日向ぼっこに興じていた。

「荀攸を飛ばすのはかまわんが、室内で飛ばすのはやめろと私と千里が何度も言っている筈だが?

 今通りかかったのが私だったから良かったものを、月様や詠様だった場合どうするつもりだ!」

「月殿はいろいろな意味で心配無用かと・・・」

「珍しく芽々芽に同意なのです・・・」

 二人がぼそぼそと言った言葉を鋭く睨みつけて黙らせると、恋がふいに立ちあがって私の裾を引いてきた。

「華雄・・・」

「恋、どうした?」

「おなかへった・・・」

 言葉を追いかけるように腹の音が鳴り、恥じるように顔を赤くして下を向く姿は正直とても愛らしく感じられた。

 察するに恋が昼に行こうとしたところに荀攸と鉢合わせ、軽い世間話をしていたところに恋を探していた二人が通りかかり、問答無用に飛ばしたのだろう。

「はぁ・・・・

 大方、荀攸も余計なことを言ったのだろう」

 再び溜息を付き、心配するように私を見る恋を安心させるためにそっと頭を撫でる。

「芽々芽、音々音。

 今は恋に免じて見逃してやるが、次に同じことがあった場合はわかるな?」

「しょ、承知!」

「き、気を付けるのです!」

 私はあまりこういうことをしないんだが、今回は仕方あるまい。

 姿勢を正して、何度も頷く二人を見ながら、恋の背を軽く叩いた。

「なら、食事に行って来い。

 大通りは何かと混む、人には気を付けろ。

 それと芽々芽、準備は出来ているだろうな?」

「その辺りに抜かりはござらん。

 食事から戻り次第、すぐに出立できるようになっているでござる」

「ならばいい。

 それから、これで好きなだけ食ってくるといい」

 それだけ確認を済ませ、私は懐から財布を投げる。

 仕方がないとはいえ、しばらく三人で食事をすることは出来ないのだ。ならば少しでも長く三人で昼を過ごしてきても、この陣営に野暮なことを言う者は誰一人としていない。

「華雄・・・・」

 最後に恋がこちらを振り向き、ほんのわずかだが口元をあげ、笑う。

「ありがと、大好き」

 三人を見送り慣れない言葉におもわず動きが止まってしまい、あげたままの手が中途半端に宙をさまよった。

 行き場のなかった手を顔へと当てると顔が熱く、自分が照れていることを自覚した。

「どうかしたんですか? 華雄さん。

 顔がありえないくらい真っ赤ですよ? 熱でもあるんじゃないんですか?」

「顔を見るな!

 その一言が余計だから、お前は毎度飛んでいるのだと自覚しろ!」

 先程飛んでいった筈の荀攸が私の傍へと寄ってきていらん一言を言い放ち、挙句顔を覗こうとしてきたので思わず手が出てしまう。

 無論、誰にもぶつからないように配慮し、左にあった壁へと荀攸の頭を叩き付ける。

「理不尽!」

 荀攸が復活するまでの間にどうにか顔の熱を散らし、改めて荀攸を見る。

 女官として勤める経緯は千里から聞いているが、何故仕事についている今も女性の服を纏っているのだろうか?

 というより、女の私よりも女官服が似合うという事実が純粋に腹立たしい。

 私がほんの戯れで試しに着た際は肩幅の性で似合わず、誰かに見られる前に早々に着替えてしまった。しかしそれを千里に見られてしまい、笑うこともなく、普通に露出度の高い服や可愛らしい服装を進められてしまうという珍事になってしまったが、それは今はどうでもいい。

「まったく・・・ お前はその余計な一言と、女装癖がなくなれば、人材としてはまともに使えるというのに。

 大体、趣味ではないと言い張るのなら、どうしていまだに女官服を着て仕事を行っている?

 それではいくら否定しても、お前が変態だということを広めていくだけだろう」

「華雄さん! 褒めるのなら、最後まで褒めてくださいよ?!

 というか、僕が変態だということは確定しているんですね!」

「お前は、今の自分の姿を姿見で見直して来るといい。

 そこにはきっとどこに出しても恥ずかしくない美少女がいるが、本来の性別を知った時、どこに出しても恥ずかしい変態へとなり下がるぞ」

 小柄な体、整った顔、栗色の髪は優しげで、ややたれ目。

 男でありながら不本意なことにその容姿は十分愛らしい。そしておそらく千里が選んだであろう女官服は足を露出するように短めに作られ、緑を基調とした服の中に淡い紫の花が散りばめられていた。

 女らしくない私にはいっそ妬ましくなるほど、完璧な女性だった。

「チッ、似合っていることがまた腹立たしい」

 女性らしさの欠片もない自分のことなどとうの昔に諦めたが、流石の私であっても異性に女らしさに負ければ、悪態が出ても仕方がない。

「まったく嬉しくない嫉妬、ありがとうございます!

 ですが何度も言いますけど、僕はこの服を好き出来ているわけでないですから!

 徐庶さんと張遼さんがわざわざ自分の権力を使って、この服じゃないと城の中に入れないように徹底したせいなんですけども!?」

「それはなんというか・・・・ 止められなくてすまなかった」

 荀攸を採用にするにあたって行われた会議の一部を思い出し、おもわず謝罪する。

 月様はそう言ったことを個人の自由とするし、詠様は千里や霞の口車によって軽く乗せられてしまう傾向が強い。しかもそれが千里によって人材としての有能さを説きながら、霞によって連合に参加しそうな軍の一部の情報が得られることの優位性を語られれば断る理由などないだろう。

 人材という重要な話であったためにそのことに目がいってしまい、服装などという些事は頭の片隅へと追いやられ、おもわず全員が頷かざる得ない状況にされてしまったのだ。

「ここはいっそ笑ってくださいよ・・・

 真剣な顔をして謝られたら、むしろ悲しくなりますから・・・」

 落ち込んだ声をしている荀攸へとさらに声をかけようとした瞬間、遠くから規則的な音を立てて千里が駆けてくるのが見える。

 相変わらず、軍師とは思えぬほど軽快な音をたて、走る姿はどこか美しさすら感じてしまう。全体で動く軍には向かない軽装備の個人で動くためだけの動きであり、武には精通こそしていないが自衛は出来ることがその動きに現れていた。

「やっほー、華雄。珍しいねぇ、攸ちゃんと一緒に話しこんでるなんてさ。

 それで泗水関に行く準備は出来てる?」

「あぁ、心配はない。

 芽々芽の準備も出来ているとのことだ、日が暮れる前には出立できるだろう。

 それよりも千里こそ平気なのか?

 装備や兵糧など、出立に関わるほぼ全て千里の担当だと聞いているが・・・」

 詠様と音々音が得意とするのは軍事であることに対し、千里は人事や経理など他全ての文官の仕事に精通している。それでいて軍事が出来ないというわけでもないため、ここの所部屋以外の場所で見かけることも少なかった。

「へーき、へーき。

 あたしの仕事って結構雑務が主だし、どれも大した内容じゃないから。

 それに攸ちゃんがいるから、多少は楽させてもらってるしねー。

 あとごめん、王允からの兵断れなかった・・・」

 明るく笑って言いながら、その目元には暗い影が落ちていた。

「兵が増えるならかまわんが、それがどうかしたのか?」

「いやぁ、ちょっとねー・・・・ 何もなければいいんだけど・・・」

 言っている意味が分からず、私は首を傾げる。

「その時は私が何とかするしかないか・・・」

 そう言って千里は、儚げに笑った。

 こいつはいつもそうだ。

 笑って平気で嘘をつき、その嘘はいつも周りへの気遣いばかり。何があろうと冷静を心がけて一見は一歩引いているように見えはするが、誰よりも早く次の行動を移すことを考えている。

「それよりもさ、結構しんどいとこだと思うよ? 泗水関。

 今頃反董卓を掲げた大陸中の領主たちが一か所に集まってきてる中で、最初にぶつかる関を華雄に守ってもらうことになる。

 で、攸ちゃん。

 一番最初に出てくるのは、どこからだと予想する?」

 私が何かを言おうとする前に話題を替え、いつの間にか復活を果たしていた荀攸へと話を向ける。

 しかし、こいつの体はどうなっているんだ?

「まず間違いなく勢力の中で弱小の平原の劉備・白の遣いが先陣をきってくるかと思われます。

 理由としては位が低いこと、新参であること、そして新参ゆえに早々に手柄を得ようとするのではないかと」

「平原の劉備かぁ・・・ 黄巾の時もどたばたしてたからなぁ。

 てか攸ちゃんが意外と詳しくて、千里さんびっくりなんだけど?」

 軽い口調、ふざけたように笑いながら赤い三つ編みを揺らす千里はどこか真剣な目で荀攸を見つめていた。荀攸が元の所属である曹操軍ではなく、こちらの陣営として戦うことは先日の話し合いの場にて明らかになっている。

 『己として選び、行動していく』と宣言した姿には、普段の姿からは想像出来ぬほど男らしさを感じ、悪くないと思った。

「黄巾兵との小競り合いの際、少々劉備と曹軍にて関わりもちまして。その時、僕は現場に居なかったのですが、義兄弟関係でいろいろありまして、個人的な恨みを抱いているんです。

 特に関羽とか言う偃月刀の使い手にあたった場合は、遠慮なく叩き斬っちゃってください! 華雄さん!」

「そ、そうか」

 もはや清々しいほどの笑顔で言い切る荀攸に、私は若干顔を引き攣る。反論や大声で叫ぶことこそ多いがあまり怒らないこいつを怒らせるとは、その陣営は一体何をした?

 というよりも、個人名を言われても乱戦となることが主な戦場ではあまり意味がないのだが?

「んじゃ、反対にいろんな陣営がいる中で攸ちゃんが警戒するのはどれ?

 いっぱいいるよねー、今回。

 二つの袁家、曹操、呉の孫家、幽州の公孫賛、まだ日が浅い劉備。まぁ、正直涼州の馬家は予想外だったけど」

 指を立て、現在判明しているらしい陣営の名をあげ、最終的に涼州にて親交すらあった馬家まで出てきたことに私は驚きを隠せなかった。

「馬家までもか・・・」

「まぁ、断ったら面倒なことになるだろうし、あんまり前に出てこないとは思うけどね。

 狭い関攻めるのに馬使う馬鹿いないだろうし、一つだけ方法あるにはあるけどその方法は馬を道具としてみるような酷い方法だしなぁ。

 とにかく、攸ちゃん的にはどこが一番危なそう?」

 千里が再度問い直すと、顎に手を当てて考えていたらしい荀攸がゆっくりと口を開いた。

「自分がいた陣営且つ身内贔屓がないとは言い切れませんが・・・」

「そりゃ、曹操軍やろ」

 荀攸の言葉にかぶせるように千里の肩に腕をからませながら、霞が突然降ってきた。

「ちょっと待て、霞。

 お前はどこから来た? そして、どこに居た?」

「そこの梁の上やで?

 今日はウチの部隊は特にすることあらへんし、ここでみんなを見とったんよ。

 まぁ、どっから見てたかは言わへんけどな」

 にやにやと笑いながら私を見てくることから察するに、最初から眺めていたのだろう。本当に質が悪い。

 千里の肩から荀攸へと視線を向けた霞は、さらに楽しそうに尋ねる。

「んで? 誰が一番強そうや?」

「夏候惇殿、夏侯淵殿などの武将筆頭は言うまでもなく、位こそ下の方ですが楽進殿、李典殿、于禁殿も皆それなりの武を持っています。

 また、今回前線に立つことはないと思われますが、私の義理の兄でもある曹仁の行動は読み切れません」

 夏候惇、夏侯淵、曹仁は曹操の配下の中でも有名だが、他三名は聞いたこともない。千里も同様のことを思っていたのか、何度も頷き納得していた。

「付け足すのならば、司馬の者とはぶつかることは避けてください。

 彼女たちは武人ではありません。そのため勝つことに手段を選ぶことはありませんし、一人一人が相応の実力者でありながら、影はいくつにも分かれます。

 兄上同様前線に出ることはないでしょうが、特に司馬仲達にはご用心を」

 司馬家、か。

 荀攸から挙がった将の名を覚えつつ、私は霞へと視線を向けた。

「夏候惇・・・・ えぇな、戦いたいなぁ。

 んでもって、勝ちたいなぁ」

 ぎらぎらと目を輝かせ、そこに居るのはまさに鬼神。

 鬼のように血を求め、神のように背の者を守る。恐ろしくも、その恐ろしさすらも神々しさと錯覚させてしまう存在がそこには居た。

 どこまで行っても、我々は武将が考えることはみな同じか。

「フム・・・

 だが、向かってくるというのならば、誰であろうと全力で相手をするのみだ」

 どれほど直そうとしても、強者と戦うことへの高揚感があるもの。それは武将の(さが)であり、宿命と言ってもいい。

 だが今はそれ以上に、守りたいものがここにある。

 主を、友を、仲間と呼んでくれる者たちの盾に、私はなりたい。

「張遼殿、華雄殿? どうしてやる気満々です!?

 ここでは普通、警戒して牙はしまっておく所でしょう?!」

「あほか、荀攸。

 そんなんで怖気づいて、尻もちついてもしゃーないやろ。

 相手はもう向かって来とるんや。なら立ち向かって、ヤバそうになったら逃げればえぇ。

 重要なんは逃げる時を見逃さんことと、その瞬間まで勝つことを信じることや」

 荀攸の言葉を斬って捨て、霞は断言する。

 負ける気で戦いに挑むものなど、どこにもいない。

 たとえ不利な状況下であっても、立ち向かう以外の選択が許されない今であっても、私達は死ぬ気も、負ける気もありはしないのだ。

「今回はみーんな必死だろうしなぁ、なんて言ったって今こそ大陸に自分がいるっていうことを示す最大の好機だし。

 あー、やだやだ。あたしら、乱世の生贄?」

 千里はその場の空気を換えるようにわざと大声で言いながら、笑う。

 だがその目は、笑ってなどいなかった。

 ただで食われてやる気も、全てをくれてやるつもりもないと目が語り、千里が普段から装備している足の装具が叩いて軽く音を立てた。

「そうはさせんさ、絶対にあの方を守る。

 ・・・では、私はそろそろ隊の者たちのところへ戻る。

 洛陽と虎牢関は頼んだぞ、それと・・・・ 私にもしものことがあった時は月様たちを任せた」

「「華雄」」

 私が背を向け、言葉を言い放った後、二つの低い声と両肩にかけられた二つの手が私を止める。

 殺気ではなく、純粋な怒気。

 慣れ親しんだと言ってもいい気に、おもわず私の額には冷や汗が流れた。

 また、やってしまった。

「生き恥やら、武人の面子やらのために死んだら、許さへん。何度も言うてるやろ?

 生きるんが恥、死ぬことは誇りなんてあほなこと、ウチの前では誰であろうと言わさん。

 草の根かじってでも生き残りや」

「かーゆーうー?

 月を、詠を、恋を泣かすことはあたしが絶対に許さないって言ってるっしょ?

 華雄は『魔王の盾』、だけどその魔王()が盾が壊れてまで自分の身を守ることを望むと思う?」

 『魔王の盾』

 それは『魔王』と呼ばれている月様に合わせて名付けられたものであり、千里が私に贈ってくれた二つ名。

 名を貰うのはこれで二度目でが、どちらの名も私の最高の宝だ。

「わ、わかっている!

 あの方を泣かすようなことはしない!」

「ちゃんとわかっていますかー?

 この戦い終わったらみんなで酒宴するんですから、ちゃんと戻ってきてくださいよ。華雄さん」

 からかい半分で荀攸も加わり、私も思わず振り返り怒鳴った。

「お前はその恰好(女装)でだがな!」

「言われなくてもわかってますよ!

 どうか、御武運を!!」

「死んだら殺すでー」

 そうして同僚と友に見送られながら、私は隊の元へと向かった。

 友との約束を果たし、守るために、私は全てを守る盾となろう。

さて、次は誰でしょうね☆

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