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26,陳留にて その後 虎との出会い

今週一つ目は、先週書けなかった本編の続きを。


どうでしょうね?

うまくまとめたつもりではありますが、詰め込み過ぎた気もします。


読者の皆様、いつもありがとうございます。

 陳留に戻って早半月、忙殺されるような毎日も徐々にだが解放されつつあった。

「まぁ・・・・ それでもこの書簡の山だけどな」

 俺たちは玉座を使わなければ置ききれない書簡の山に包まれ、処理している手が休むことなく動き続けている。そして作業を行っている机上も、書簡が小高くほぼ隙間なく配置されていた。

 動きが最小限且つ、決まった動きが出来る面子だからこそできる芸当であり、他の者にちょっかいを出されなどすれば崩れて大惨事を起こすことだろう。

 共に机に向かうのは華琳、桂花、雛里、秋蘭、斗詩という文官としての主戦力が注がれている。

 本来なら文武両道を()でいく樟夏、樹枝もここに投入される筈なのだが、武官としての仕事もあるし、何よりも本来は武官である俺と秋蘭、斗詩の分を補ってもらうために走り回ってもらっている。

 付け足すならば、文官の仕事は書簡を書き続けるだけではない。

 現地の状況を冷静に判断できる人材がいなければならない、そのためのこの配置だ。

「口よりも手を動かしなさい。冬雲」

 そう言った華琳も書簡からはけして目を逸らさず、半刻ほど前に流琉が休憩時間に入れてくれたすっかり冷めてしまった茶を啜る。

「あぁ」

 返事をしつつ、俺も次の書類に目を移す。

 つい先日、正式に発足された警邏隊についての書類だ。

 凪、沙和、真桜は警邏隊の隊長と隊長補佐という形で収まり、戦場では遊撃隊という一つの部隊となることになった。

 せっかく成長したあの三人を、俺の下に置くにはあまりにももったいない。『もっと力を活かせる所属を任せるべきだ』という俺の進言があったことと、華琳も他の皆も頷いたためだ。

 まぁ、当人たちは渋々だったが、力がある三人にはそれなりの地位についてもらわないと力を活かしきれない。

 全体を動いて柔軟に対応する部隊があると何かと便利だし、先陣の凪、統率の沙和、発想の真桜、一部隊としてのこの三人に隙はない。しいて言うなら軍略が足りないが、それもこちらが指示を出すか、雛里と行動を共にしてもらえばいい。

 騎馬隊ほどの速さはないが、どの部隊にも加勢できる部隊が一つあるだけで戦場の動きは柔軟さを増し、戦術の幅は広がっていく。

「五人とも、今手を付けている書簡が終わったら、四半刻ほど休憩を挟むわ。

 早く終わった者は補佐・・・は正直、邪魔にしかならなそうね。お茶の用意でもしてきなさい」

 俺がそんなことを考えていると、華琳から休憩の宣言が入った。

はいっ(了解・はっ)!』

 が、俺はもうこの書簡が終わるため、無事書き終えて周囲を軽く見渡す。

「俺、終わったから茶の準備してくるわ。

 ついでに終わった書簡を貸してくれ、厨房に行くときに置いてこれそうな書簡は置いてくる」

「あっ、ありがとうございます。冬雲さん」

「悪いわね」

 斗詩と桂花から終わった書簡を受け取り、書簡の量の多さのために真桜に先日即席で作ってもらった台車に乗せていく。

 ついでに買い置きしておいた菓子でも出すかな。

 そんなことを考えながら、軽い足取りで台車を押していった。



「みんな、菓子でも・・・・」

 俺がそう言いながら、手に茶と菓子を持って扉を開けるとそこには


「おかえりなさいませ、ご主人様」

 白と青を基調とした裾の長めのスカートと上着、服の要所には赤のリボンがあしらわれ、そこには職人の遊び心が見える。作業の効率を重視した服装はまさに古典的なメイドさん、その衣装を纏った斗詩が満面の笑みで俺を出迎えた。

「冬雲ご主人さま?」

 視線を移すとそこには犬耳をつけた雛里が俺を見上げるようにして、首をかしげていた。斗詩と形が近くはあるがややフリルが多く、まるで物語に出てくる小動物のようだ。

「と、冬雲・・・・様・・・」

 言葉を尻すぼみにさせながらも、俺を見る桂花は短めのスカートと半袖の上着。なんか桂花だけ、肌の露出多くないですか? 華琳だろ? 絶対コレ、指示したの華琳だろ?!

「フフ、主殿よ」

 そう言って俺の背後に回り、顎を指先で触れてくる秋蘭は・・・・ 何故執事服?! 秋蘭の凛々しい雰囲気と、きっちり着こなされたその姿。似合いすぎだろ?!


 ・・・あぁ、ここはきっと桃源郷に違いない。


 ってそうじゃないだろ! 俺!!

 冷静になれ。

 いろいろと言いたいことはある。というか、聞きたいところしかない。

 が、まずはこの素晴らしい光景へ賛美の言葉を贈るのが俺の役目、いや義務と言ってもいい。

「綺麗だよ、みんな」

 俺のその言葉に斗詩と雛里は頬を染め、桂花はそっぽを向き、秋蘭は笑みを深める。

「それで華琳、状況を説明してもらえるよな?」

 その光景を目に焼き付けるように視線をそらさず、元凶であり実行犯であろう華琳へと問うた。

「向こうの御使い(北郷一刀)が『ご主人様』呼びをしていることを言ったら、この通りよ。

 愛されているわね? 冬雲」

 やっぱりその件か、コン畜生!!

 叫びを内心に留め、とりあえず書類が置いていない方の机へとお茶と菓子を配置する。

「とんでもない地雷を投げやがった・・・・ あの野郎」

 おもわず苦笑いしか出来ず、俺はその机に突っ伏す。

 いや、もうなんか・・・・ 力が抜けた。

「いいじゃない。

 あなたはこの子たちの可愛い姿を見られる、私も目の保養になる。

 損はまったくないでしょう?」

「否定する気は全くないし、その通りなんだけどな?」

 脱力し、五人が俺へと笑みを浮かべて茶と菓子を食べ始める。

 そんな中、何を思ったか斗詩が自分の菓子を俺の口元へ持ってきて、あの言葉を言ってきた。

「はい、ご主人様。あーん」

 からかわれながらだが、俺はそれを拒む理由もなく口を開いて咀嚼する。

「ありがとう、斗詩」

 仕事の疲労と、さっきの精神的な疲労が甘い物で癒されていく。まぁ、『ご主人様』っていう発言で若干減ってるが、それも彼女たちの笑顔があれば全く問題ない。

 俺がそう言って茶を啜ると、茶碗を置いたら口元に次の菓子が来ていて、雛里が上目づかいでこっちを見ていた。見れば順番待ちをしているとしか思えない他三名もいる。

 絶対したことがないのに、妙な既視感(デジャヴ)が俺を襲ってくる。何故だろう?

 まぁいいかと思い、俺はそのまま茶の時間を過ごそうとした。

 が、俺と華琳、秋蘭と斗詩が気配に気づき、天井を見上げる。

「司馬懿、帰還いたしました」

 音も立てずに着地し、その場で膝をついて頭を下げる白陽に華琳が頷く。

「ご苦労だったわね、あなたが戻ってきたということは何か天気に異常でもあったのかしら?」

「はっ、大風があと数日中に海へと抜けるかと思われます」

 雛里と桂花は意味を理解したらしく、難しい顔をしだす。が、これが起きた時の対処は決まっていた。

 俺は体を伸ばしながら立ちあがり、不意に義弟二人の顔が浮かんだ。

「樟夏と樹枝には『仕事が増える?!』とか泣かれそうだな・・・」

 おもわず零れた言葉に、華琳を除いた四人がクスクスと笑いだす。

「はぁ・・・・ 馬鹿なことを言ってないで、予定通り対処に行ってきなさい。

 あなたがすると言っていた仕事よ?」

 華琳だけはしっかり溜息を吐き、俺を促す。

「ハハハ、わかってるよ。華琳。

 じゃ、少し行ってくるよ」

「えぇ、いってらっしゃい。

 供は白陽だけで平気ね?」

「それ以上、この修羅場から引き抜いていったら恨まれそうだしな」

 俺は笑いながら、扉の方へと向かう。

 そう、これはあの時から決めていた。

 俺が出来る最大限のことをする、してみせる。

「あぁ、そうだわ。

 忘れものよ、冬雲」

 華琳は何かを思い出したかのように呟き、俺はとっさに振り返る。

「えっ? 今から装備とかは取りに行くから、ここに忘れ物はないは・・ず・・・」

 その瞬間、唇を奪われ、呆けた俺の顔を撫でて囁いてく。

「見送りの口づけは、あなたの国での習慣なのでしょう?

 やることをやって早く帰ってきなさい。

 それから真桜のところに寄って、盾と仮面を忘れないように」

「突然すぎるんだよ・・・ 華琳はいつも」

「あなたの不意を打つのはかつてよりも随分難しくなったわ。

 けれど、あなたの驚いたその表情が私は好きなのよ」

 酷いなぁと苦笑を浮かべ、俺は順番待ちが出来ないうちに部屋を飛び出した。

「白陽、準備は?」

「既に出来ております。

 全てを厩舎前、夕雲も待機済み。今回は戦場での重装備の鎧ではなく、必要最低限の装備を揃えました。

 そして、こちらが真桜により作られた鬼の面でございます」

 顔の上半分を隠す真っ赤な面には二本の金の角、顔はしかめておらず、むしろ表情は無に近い。みんながつけている髑髏の細さをなくし、角を足しただけのような意匠だった。

 俺はそれを手早く括り付け、走りながら白陽から装備を受け取ってつけていく。

 厩舎前へと到着する頃には大雑把な装備は終わり、俺は腰に剣を、左手に盾を装備し、夕雲を走らせた。




 そのあとは現地に着くまで、強行軍だった。

 白陽から休憩をとるように言われながら何度かはとったが、正確な時かがわからない以上急ぐに越したことはない。

 今回の一件、正確な情報の元に動いてはいるが、それも予測の域を抜けない。

 それに天気によって、その予定は大きく変わってしまうこともあり得た。

 夕雲もそんな俺の気持ちに察してくれたのか、通常の馬ならば潰れているような速さで走っても物ともせずに走り続けてくれた。




「前方、目標発見!

 中央赤の衣、二名。敵影、およそ三十! その後衛に弓兵の影あり、その数およそ十!」

 目の前に広がっていたのは襲撃者と交戦する、鮮やかな赤を基調とした服を纏った特徴的な紅梅色の長髪。

 一人は妙齢の女性が大剣を振るい、拙いながらもその背を守ろうとする娘らしき女性が映る。おそらくは彼女たちが、孫堅殿と孫権殿だろう。

「俺はこのまま行く! 白陽は弓兵を殲滅しろ!!」

「はっ!」

 そのまま飛び込んでいく俺と弓兵の元へと回り込むように駆け出す白陽、俺は夕雲の足であと数歩のところで、遠目から矢が放たれたのが映る。

 邪魔な兵たちを斬り捨て、夕雲で蹴り倒しながら、二人の女性を守るように俺は左手の盾を掲げた。

 盾は二人へと降り注ぎかけた矢を弾き、夕雲から降り立つと同時に孫権殿と斬り合っていた賊の一名の首をはねる。

「父・・・さ・・・ま?」

 突然の救援に驚いたのか、彼女は一瞬の間だけ俺を父たる人に重ねたらしくそう呟いたのを俺は聞いた。

「あなたは・・・?」

「名は名乗れない。だが、敵ではないとだけ! 言っておくとしよう!!」

 戸惑う彼女に対して、俺は剣を振り上げた敵の胴を両断する。血が舞い、今度は二人、三人と一度に襲ってくるが、俺は焦らない。

 左の盾で相手の攻撃をあしらいつつ、致命傷となる首・胸部・腹部・太腿を目掛けて剣を振るう。三人目の攻撃を盾であしらおうとした瞬間、月に照らされて紅梅色の髪が揺れた。

「ついに来たのね、赤き星の天の遣いさん?」

 その笑みはまるで獲物を捕らえた肉食の獣、恐ろしいというのに吸い込まれるような魔性の美しさを持っていた。

「俺の正体はお見通し、か。孫堅殿」

「いいえ、ただの勘よ!」

 孫権殿を挟んで背を預け合う形となり、俺は右手の剣を振るい続ける。

「それにしても盾が使いにくそうねぇ、これあげるわ!」

 そう言って戦いながら一本の細剣を投げられ、俺もまたそれを振り向くこともなく受け取った。

 が、鞘からは抜かず、落とさないように腰へと差す。

「申し訳ないが、主君との約束で自粛期間なんだ!

 それにこんな業物、貰ってもいいのだろうか?」

 鞘の造り、彼女たちの衣服と同じ赤を基調とした装飾。そして何より、連理を持った時のような他の剣とは違う感覚がこれを名剣だと語っていた。

 右からくる者を連理で腕を斬り、左からの者の攻撃を俺が押さえれば孫権殿が加勢に入ってくれる。

 後ろからの者には一切心配する必要はなく、距離のある敵は白陽ともう一つの影が圧倒的な速さを持って斬り殺しているのが見えた。

「大したものじゃないし、命の礼よ!

 むしろ、冥琳の元を訪れた華佗とかいう医者の件を足したら、これでも安すぎるわ!」

「母様!

 恩義に対しての礼をすることには異論はありませんが、父様の形見の一つであり孫家の『四海王剣』の一本、『西海優王(せいかいゆうおう)』を軽んじるのは聞き捨てなりません!!」

 続いた孫権の言葉に、俺はおもわず驚くが状況が状況だ。詳しい話を聞いている暇はない。

「それに冥琳の一件とはどういうことです?!」

「それに関しては! 本人か、雪蓮にでも聞きなさい!

 ただ私たちは、この人に宝剣の一本平気で渡すくらいの恩義があるのよ」

 そう言いながら、彼女は最後の一人を斬り殺す。

「特に、私はね?」

「詳しく聞かせてください! 母様!!

 大体、姉様と母様は説明を省きすぎなんです!!

 先程の発言もそうですが、十常侍相手に父様も母様も何をなさったんですか?!」

 そう言って孫堅に詰め寄る孫権を見ながら、俺は白陽を示してそっとその場から離れようとする。

「逃がさないわよ? 赤き星の天の遣いさん?」

 その肩を押さえられ、俺はどこかで諦めていたので大人しく振り返った。

 猫のような金の瞳が俺を写し、その目はまるで見定めるように細められる。

「それにしても、見ても、触れても、いい男ね。

 ・・・決めたわ! 私は彼についてく!!」

「「はぁっ??!!」」

 あまりにも突然すぎる宣言に俺と孫権殿が揃って、間の抜けた声をあげる。

 今、この人なんて言った?

「どうせ、十常侍が何かを企んでるのはわかってるんだし。

 暗殺が失敗したとなるといろいろ面倒でしょ? この際、私はいったん死んだことにして、あなたのところに行くとするわ」

 『名案でしょ?』とでもいうようにそう言ってくる彼女に、俺は開いた口が塞がらなかった。

「母様?! 何、そんな思い付きで行動をしようとしているんですか!!

 大体、命を助けてもらったとはいえ、どこの誰ともわからぬ方なんですよ!?」

「『赤き星の天の遣い』って名乗った時点で、それはここのところ有名になりつつある曹操のところ者だって言っているようなもんでしょう?」

「祭や姉さま、美羽たちにはどう説明するおつもりですか?!」

「その辺は蓮華に任せたわ、うまくおやりなさい。

 それに思春も状況がわかっているし、話を聞いていたわ。

 二人で何とかなさい」

「ですが!!」

 まだ反論しようとする孫権殿に対して、孫堅殿は彼女の腰の剣を指差した。

「私が何故、雪蓮に『東海(とうかい)武王(ぶおう)』を渡し、あなたに『北海(ほっかい)賢王(けんおう)』を渡したかをよく考えなさい。

 あなたと雪蓮、形で見える武は誰でも比べられるわ。

 けれど、あなたについてきた者がそれ以外を見ていることを、そろそろ気づくべきよ?」

 俺が立ち入ってはいけない親子の会話を静観し、その間に考えをまとめていた。

 おそらく会話中に出てきた『雪蓮』とは孫策のこと、そしてもう一つの『美羽』というのは袁紹の真名が『麗羽』であることから推測するに袁術のことだろう。

 真名を許しているのなら、少なくとも孫家と袁術の関係は噂通りの悪いものではない。なら、こちらを心配する必要はない。

 それに孫堅殿が言った通り、暗殺が失敗したと知られたならもっと厄介なことになることは目に見えている。

 ・・・・それでも連れ帰る必要はまったくない。

 というかむしろ、袁術との仲が悪くないのなら、本拠であるこちらで大人しくしててくれるのが最善だろう。

 が、孫堅殿の目は華琳と同じ我が道をゆく王の目だった。俺ごときが止められるわけがない。

「何をするかは決まったかしら? 赤き星の天の遣い殿?」

「・・・・何を言ってもついて来るんでしょう?」

「勿論」

 弾むような返事をする孫堅殿に呆れながら、俺は厄介を任された孫権殿のためにその場で仮面とる。

「俺は陳留刺史、曹孟徳の元に舞い降りし赤き星の天の遣い。

 名のない俺が主君より賜りし姓は曹、名は仁。字は子孝」

 そう言って頭を下げ、顔をあげると何故か孫権殿は夜でもはっきりとわかるほど頬を赤く染め、孫堅殿は驚いたように目を丸くしていた。

 ・・・・俺の顔に、何かついてますか? 傷しか心当たりがないんだが?

「失礼しました。

 私の姓は孫、名は権、字は仲謀と申します。

 そして、命を救っていただいたお礼として・・・ どうかわが真名である、蓮華を受け取っていただきたいのです」

「知っているだろうけど、一応名乗って置くわ。

 私の姓は孫、名は堅、字は文台。真名は舞蓮(ウーレン)よ」

 何でこの人たち、真名を軽々しく預けるの?!

 顔に書いてあったらしく、二人はむしろ不思議そうに同時に首をかしげてきた。

「「理由もわからず、利益も見えずに命を助けたあなたが言いますか(言うの)?」」

 俺は諦めたように息を吐き、白陽に少しだけ視線を向ける。その目にあるのは俺がする行動への、絶対の信頼だけだった。

「俺の真名は冬雲。

 蓮華殿、舞蓮殿、どうか受け取ってくれ」

 信頼には信頼を、義には義を返す。

 それが真名というものの重さならば、返さないのは礼儀に反する。

 それはきっと、華琳が忌み嫌う行動だろう。

「それじゃ、行きましょうか。冬雲」

 そう言って俺の手を引き、急かす舞蓮に引っ張られていく。

「申し訳ない、蓮華殿。

 何か困ったことがあったら、隠密を通して連絡をくれ。それ以外で文を渡したい場合は・・・・ これを見せればいい」

 俺はそう言って、常に予備を持ち歩いている俺の部隊の腕章を手渡した。これで大抵の者は通してくれるだろう。

「あ、ありがとうございます。冬雲殿」

「あ、そーだ。蓮華。

 証拠を求められた時のために、コレも持って帰ってー」

 そう言って長い紅梅色の髪を掴んで、自分の大剣でバッサリと切って投げ渡す。

 いちいち豪快だな!? この人!

「母をどうか、お願いします。いろいろと・・・」

「蓮華殿もこの後いろいろ大変だと思うが、お互い頑張るとしましょう」

「はいっ!」


 そう言って蓮華殿と別れ、舞蓮殿と共に陳留へと戻ることとなった。

 あーぁ、華琳怒るだろうなぁ。

 今はただ、それだけが恐ろしく、足取りが重くなっていった。


次はこの続きか、このときの蓮華視点ですね。

どっちが書けるかは、まだわかりません。


感想、誤字脱字よろしくお願いします。

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