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真・恋姫✝無双 魏国 再臨  作者: 無月
乱世 始動
105/111

80,正対

書けました。


今日・明日以降の感想は返信が遅れます。

また、作者は社会人になるので更新が不定期になります(現段階で、とりあえず来週の投稿は不可能)

生活が落ち着き、仕事に慣れたら、今後の更新などについて活動報告にてご報告したいと思っています。

今後とも、『魏国 再臨』をよろしくお願いします。

「ついにこの時が来た、か・・・」

 城壁の一番高いところに上って、遠目に見える劉備殿達の幕を見下ろしながら、想像よりもずっと穏やかに動く心臓の鼓動を聞いていた。

「なんだろうな、この気持ち」

 前の時、劉備殿がここを訪れたのはあまりにも突然で、後ろに見えてこそいないものの袁紹軍が迫ってきていた緊急事態。

 何も渡さず、仲間(関羽)を渡すことも拒み、失うことを嫌い、多くの民を引き連れながら向かう彼女達を華琳はどんな思いで見送ったのか。そんなことは警備隊の隊長だった俺にはわかるわけもなくて、ただ漠然と目の前に起こる事態に受け止めていた。

「でも、変わったよなぁ」

 ここを通るために劉備殿がこちらに渡してくるものの一覧を眺めながら、彼女達の進歩と俺が見落としていたことを成し遂げる北郷を驚きとともに称賛する。

「凄いよ、本当に」

 あの時の俺なんかよりもずっと・・・ そうずっと、『何か』になろうとしている北郷(白の遣い)は凄い。

「名士の信頼と日用品、それに玩具・・・ かぁ」

 それに加え、それらを作れる技師や商人達まで渡すことでこちらに利益をもたらすだけでなく、誠実な劉備殿の対応に民がどう思うかなんて考えるまでもない。

「あぁ、悔しいなぁ」

 今度は誰にも聞こえないように小さな声で言って、城壁に横になって空を仰いだ。

 俺は広く役に立つことや大掛かりなことばかりに目が行ってしまって、北郷が行ったことを見落としていた。

「探したわよ、冬雲」

 突然どこからか声が聞こえたので起き上がろうとすれば、声と同時に投げられたであろう書簡をぎりぎりのところで受け止める。

「危ないだろ、華琳・・・」

 俺が書簡を投げた本人に視線を向ければ、華琳は気にするどころか俺を見て笑っていた。

「一人の反省会は終わったかしら?」

「全部お見通しかよ・・・」

「いいえ?

 流琉の武器をそのまま小さくしたような『よーよー』という玩具を浮かばなかったあなたを呆れたり、石鹸や水の濾過を浮かびながら『洗濯板』のことを抜け落ちてたあなたを笑ったりなんてしてないわよ?」

 俺を弄って遊びながら、華琳は体を起こした俺の額に指をあてて、片目を閉じる。

「悪かったよ・・・」

「謝ることなんてないでしょう。

 あなたはあなたで多くのことを成し、私の欲する多くを守ろうとしてくれた。私はただ・・・」

 額に当てていた指で俺の顔をなぞるようにしながら、最終的に指は頬で止まって俺の皮膚を軽く引っ張っていく。少しも力は込められてないそれは痛くなくて、華琳が俺をからかってることがよくわかった。

「あなたがこうして悔しがる顔を見るのが久しぶりだから、嬉しかったのよ」

「俺、結構北郷には悔しいことばっかりだぞ?

 普段見せてないだけで、あいつは俺に出来ないことばっかりしてて・・・」

 俺はそこで言葉を区切り、頬を引っ張ったままの華琳の手を取って両手で包み込む。

「支えたい仲間や好きな人と同じ場所に立って、好きな人に好きって言えてる。

 そりゃまぁ、いろいろあいつはあいつで苦労は絶えないんだろうけど、羨ましいさ」

 北郷になりたいとは思わないし、俺が俺だから得た物は多く、ここまで来た道に忘れてはいけないことはあっても後悔はない。

 それでもやっぱり、自分に出来ない何かをできる人間を羨ましいと思うことをやめることはできなかった。

「手探りで道を探して、比較対象がいても潰れない。

 それが北郷の強さなのかもな」

 俺が俺で必死だったように、北郷もまた必死に自分の道を探していた。

 結果的に武功を挙げてしまった俺が有名になってしまったけれど、北郷にとって俺がどんな存在だったかなんて想像するぐらいしかできない。

 だが彼は潰れることなくここにたどり着き、成長の証にも等しい手土産を持って、俺が出来ていなかったことを突き付けてきた。

「凄いよ、あいつは」

「あまり言うとあなたの影が怒り出すわよ、冬雲」

 華琳の言葉に影へと意識を向ければ白陽と目が合い、作ったような笑顔を向けられる。やや気まずくなって視線をそらし、自分の隣をたたいて華琳に座るように促した。

「明日、あの子達はここを通っていくわ」

 華琳は俺の隣に座りつつ、視線は劉備殿達がいる陣にだけ向けていた。

「そうだな。

 けど、あの時とは違って、話し合う必要なんてないんじゃないか?」

 あの時とは違い、彼女達は渡すべき物を渡し、話し合いは既に終わっている。

 が、華琳は首を振って否定し、ついさっきまでの少女らしい笑みとは別の笑みを零していた。

「そうね、本来ならそうだわ。

 けれど劉備は、出発前に皆の前で私との対談を望んできたのよ」

「っ!」

 驚く俺とは違い、華琳は嬉しそうに、心底楽しそうに笑いながら、ギラギラとした目で一つの場所を見つめ続けている。

「ねぇ、冬雲。

 明日、あの子は私の前で何を言うのかしらね?」




 そして、ついにその日は訪れた。

 劉備殿についていくと決めた将兵が並び、劉備殿を中心にして北郷や孔明殿、関羽殿が俺達と向き合う。対する俺達もまた華琳を中心として武官・文官共に全ての将が並び立ち、彼女達と視線を交わす。

 俺達がここにいるのは見届けるためでしかなく、礼を尽くして行動する劉備殿へ礼を尽くすためである。

「曹操さん、お久しぶりです。

 それから平原の民を受け入れてくれたこと、こうしてあなたとの対談の場を用意してくださったことに感謝します。本当にありがとうございます」

 共に並んだ者達から一歩前に出た劉備殿は頭を下げ、華琳もまた彼女に応えるように声をあげる。

「いいえ、為政者が民を守ることは義務。感謝されるようなことではないわ。

 それにあなたもこちらが受け入れるだけの物を渡し、その対価を支払った。これは対等な取引の上で成り立っているものであり、一方がありがたく思うことは何もないでしょう」

 返答は実に華琳らしい簡潔な言葉で、劉備殿がわずかに苦笑するのが見えた。

 もっとも為政者が民の安否を案じて民の行き先を求めたり、為政者が声をかけたぐらいで土地を捨ててまでついてくることがおかしなことで、華琳の考えも、劉備殿の行動もこの大陸にとって正気を疑われるような行為である。

 だからこそ、向こう(天の国)で似たようなことをした劉備は美談として語られる一方で、策として民という壁を用意することで被害を及ばないようにしていたともとらえられている。

「劉備、単刀直入に言うわ。

 通り過ぎることなくこの地にとどまり、あなたも、あなたの将兵の全ても、私の物になりなさい」

『なっ?!』

 言葉を飾らず、直接要点を突き、一切の遠慮のない華琳の発言に劉備軍の多くは驚愕し、ある者は青ざめ、ある者は一瞬にして顔を紅潮させたりと忙しない。

 だが、慣れている俺達にとってはこれが普通の華琳であり、ここからが華琳だった。

「大陸をまとめあげ、乱世を治めることも、その未来(さき)を創っていくことにも、いくら人材があっても足りないわ。

 そして劉備、私はあなた達の才を高く買っているのよ」

 言葉一つ一つが急所を射抜く矢。

「あなたの人を惹きつける才、孔明の智、関羽の武、北郷の人を支える才。

 そのどれもがこの大陸に残すべき宝であり、揮ってこそ意味を成すものだわ」

 才を見る目は優しく厳しく、あるべき場所にあることを望む。

「あなたが民の笑顔を求め、多くの者との和睦を望むというのなら、私の元でその才の全てを揮いなさい」

 これこそが幾千幾万もの未来に名を残す英傑だと、その存在に呑まれそうになる。

「あなた達の名を千年、万年も未来(さき)へと、私の歩む覇道と共に刻みなさい」

 力ある言葉に魅入られた者は自分を必要としてくれる彼女に全てを捧げ、この力を使ってほしいと願う。

 だから俺達は華琳の歩む道のために力を尽くし、その背についていくことを選んだ。現に今、華琳の前に並ぶ者の多くは圧倒されたように動かず、後ろに並び聞き慣れている筈の俺達ですら心から沸き立つ華琳への思いが震えとなって表れていた。


 だが唯一人、彼女だけは呑まれることはなかった。


 華琳の言葉を真摯に受け止め、平然と向かい合い、華琳と静かに視線を交わしあう。

 視線のやり取りだけで何かを語り合っているのではないかと錯覚してしまうほどの時間が流れた後、劉備殿は口を開いた。

「それは、出来ません」

 毅然とした態度ではっきりと告げられたその答えに、俺の周囲の温度が上がったが君主同士の会話に将である俺達が割って入ることなど許されない。

 それがわかっているからこそ怒りに身を任せる者はいないが、華琳の言葉を無下に断った劉備殿のことをよく思うことは出来ないのは無理もないことだった。

「どうしてかしら?」

 そんな俺達を察してなのか、それとも劉備殿が断ることが想定内だったからか、どこか苦笑気味に華琳は問う。

「私達の目的が、漢王朝を再興させることだからです。

 私達は衰退した漢王朝を今一度盛り立て、そこから大陸を、この国を再建します」

 今度は、俺達が驚く番だった。

 予想外の劉備殿の発言に稟や桂花は真意を探るように目を細め、霞や千里殿は楽しそうに笑い、春蘭や季衣は首を傾げている。そして俺の口元は何故か・・・ 自然と弧を描いていた。

「何故かしら?

 既に衰退した漢王朝に拘る意味も、理由もないでしょう?」

「曹操さんはきっと新たな王朝を作って、その始祖となるつもりなんですよね?

 そうしてあなたを中心に新しい基準を用意して、この国を変えようとしてるんじゃないですか?」

 質問を質問で返しているが、華琳は気を悪くするどころか己の考えを言い当てた彼女に気を良くしていく。状況が状況でなければその喜びを顔で表すにとどまらず、小躍りでも始めてしまいそうだ。

「よくわかったわね。

 私が劉協様を保護していることは周知の事実なのだから、あの方を擁立するということも考えられるでしょう」

「そうした意見も確かにありました。だけど、もしそうするならば曹操さんはもっと上手な方法で漢を守っていたんじゃないかって思ったんです。

 個人である曹操さんは知りませんけど、私はこの立場から曹操さんをずっと見ていたつもりですから」

「えぇ、その通りだわ」

 華琳はそこで一度、劉備殿から視線を外し、集まった民と共に城壁の上にいる千重や天和達(張三姉妹)を確認してから劉備殿へと視線を戻した。

「始めは、臣として仕えることも考えていたわ。

 けれど、漢は腐りきっていた。

 腐りきった国に補強は不要。時間も、労力も無駄で、ただ人材を腐らせるだけ。

 そんな国は、一度作り直すべきだわ」

 華琳は無意識に左拳を握り、右手を劉備殿の方へ伸ばし、告げる。

「身分など関係なく、才ある者をあるべき場所へ。

 学びを求める者に学びを与え、技術を作り上げ、文化を守り、愛した者達と共に次代へ繋ぐ。

 そのために私は、この大陸に新しい国を築きましょう」

 もう二度と、黄巾の乱や反董卓連合の悲劇を起こさせないために。

 誰かのためではなく、そうしたいと望む自分自身のために。

「革命、ですね。

 とても・・・ ううん、とてもなんて言葉じゃ足りないほど優しさに溢れた変革」

 華琳の言葉を受け、それでも劉備殿は変わらない。それどころか否定することなく、肯定する。

「でも、多くの人は変革を望みません。

 穏やかに日々を過ごす人達にとって、曹操さんの行うことは『変えられる』という恐怖になる」

 それもまた事実だった。今もかつても急激な変化や考えに同意することが出来ない者は多く、華琳の存在は名士から疎まれた。

 長く華琳を知り、対話をして過ごした陳留や近郊の街だからこそ目に見える形での反発は起こっていないが、何も知らない者達にとって俺達の存在はただの脅威でしかない。

「その恐怖から、曹操さん自身を毒だと思ってしまう。

 曹操さんの考えの根底にある優しさに気づくことも、守ろうとしている将来もわからないまま、あなたを憎んじゃうんです!」

「それがどうかしたのかしら?

 他人に誤解される程度、私は気にも留めないわ」

 けれど、華琳はその言葉で迷うことはない。

 華琳は俺達を見せびらかすように腕を広げ、俺にはその様子がどこか得意げに見えた。

「私のために力を尽くす愛しき部下も、最愛の理解者もいる。

 それだけで十分ではなくて?」

 かつての華琳ならば、耐えきれなかったかもしれない。だけど、ここにはもう一人ぼっちの女の子も、孤独な覇王もいない。

 だが、それを見せつけられてなお、劉備殿は首を横に振った。

「優しさから生まれた行動が勘違いされたままなんて・・・ そんなの悲しすぎます!」

「劉備、あなたは何が言いたいのかしら? 私の行うことへの称賛? それとも否定?

 どちらでも構わないけれど、あなたが漢王朝を続けることでどんな意味があるというの?」

 劉備殿の優しさを知っても、向き合った相手の涙一つで何かを変えることはない。だが、それが非情を意味するというわけじゃないことを、俺達はよく知ってる。

 その事実を知っているのかいないのか、目にわずかにためた涙を拭って、彼女は再び口を開いた。

「時間が必要なんです。

 曹操さんの行動が、たくさんの人に優しさであることをわかってもらうだけの時間が」

 優しく、人に愛され、その優しさから民を守りたいと言っていた女の子が

「だから私は、漢王朝が必要だと思います。

 何もかも全てを突然変えるんじゃなくて、今のままゆっくりと人々が学ぶ時間に合わせて変わっていくために」

 華琳と並ぶ英傑になろうとする瞬間を、俺達は目撃している。

「私は待っていられないのよ。

 待っている間に再び腐りきった者達現れ、あの悲劇を繰り返す。私はそれを断じて許さない。

 繰り返すぐらいなら、(ふる)いにかけるわ。

 志と才ある者達を率いて、私は未来(さき)へと向かいましょう」

「それなら私は器になります。

 篩い落とされた人達を受け止める器に。

 たくさんの人と歩幅を合わせて、ゆっくりと歩いていきます」

 描く未来(さき)は同じでありながら、二人の英傑の進む道はどこまでも平行線で交わらず、譲ることはなかった。そして、譲れない信念があったからこそ二人の背には多くの者がついてきた。

 根底にある思いは似ているにも関わらず、対極の存在。

 それはもしかしたら、俺と北郷も同じなのかもしれない。

「私が篩い落とした者の全てが、善人というわけではないわよ。劉備」

「それでもついていけない人達、皆が悪人ってわけでもないですから。

 ただちょっとのんびり屋さんで、私みたいにとろいだけなんです」

 華琳の厳しい言葉に劉備殿は優しく微笑み、その笑顔によって劉備殿の周りにいた北郷達の表情が緩んでいく。

「才や志のある者を選び出すことよりも、ない者を導く方が難しいことをあなたはわかっているのかしら?」

「はい。つい最近まで、教えてもらう側にいたので痛いほどわかってます。

 でも、私の先生は確かに厳しくて、一切容赦のない怖い人でしたけど・・・ 不出来だからといって見捨てることをしなかったし、拙い意見に対して本気で向き合ってくれました。

 私は厳しく出来ないだろうけど、そうありたいんです」

 華琳の追撃のような言葉に劉備殿は胸を張り、隣に並んだ北郷と孔明殿の手を握って、華琳に見せつける。

 華琳もそんな劉備殿に満足したのか、肩を揺らして笑いだす。

「それがあなたの出した答えで、進むと決めた道なのね」

「はい。これが私達の道です」

 彼女は華琳の笑みに満面の笑みで答え、さらに言葉を続けた。

「小さな一歩から始まって、荒れた大地を抜けて、大切な仲間と姉妹が出来て、たくさんの英傑を見て、厳しい先生から学んで、優しさに溢れる覇王と向き合って決めた私達の道です」

 華琳とは違う一本の道(彼女の人生)

 一歩ずつ確実に歩んで、何もなかったからこそ得たり、学んだり、間違ってみたりした彼女の道。

 白い星と共に歩む英傑・劉玄徳の王道だった。

「そう。ならば、対立するしかないわね。

 変えたい私と共に歩くあなたは、そう遠くないうちに雌雄を決する時が訪れるでしょう」

 遠回しに覚悟を問えば、劉備殿は少しの間目を閉じ、結んだままの二人との手を強く握って応えた。

「覚悟の上です。

 私は曹操さんに勝って、私達と同じ歩幅で歩いてもらいます」

「なら私は、あなたに勝って大陸を変えるわ」

 挨拶でもするように軽く交し合いながら、その言葉はいずれ訪れる最後の戦に向けられた勝利宣言。

「行きなさい、劉玄徳。

 私はここで、あなたと再び(まみ)える日を待つとするわ」

 華琳の言葉が合図となって門が開き、俺達は劉備殿達に道を譲る。

 劉備殿が隣を通り過ぎようとした際、華琳は思い出したように劉備殿の肩をつかみ、立ち止まらせた。

「なんですか? 曹操さん」

「二つ、忘れ物をしているわよ」

 首を傾げる劉備殿に文官姿の黒陽と紅陽が立ち、あの日に預かっていた靖王伝家と白き衣が用意されていた。

「持っていきなさい。

 今のあなた達は『白き天の御使い』の名も、『皇帝の血縁』の名のどちらも相応しく、必要でしょう」

「曹操さん・・・!」

 華琳の行動に北郷が感動に打ち震え、劉備殿は感謝を口に仕掛けた北郷を手で制し、華琳に問うた。

「もう一つは何ですか? 曹操さん」

「・・・そう、それでいいのよ。

 それでこそ、私の真名を預けるに足る存在だわ」

 劉備殿の対応に笑みを零して、華琳は手を差し伸べた。

「私の真名は華琳。

 次に正対した時は、私のことをそう呼びなさい」

 次に二人が出会う時、それがどんな時かなどこの場にいる誰もが理解している。

 だが、華琳の目は本気で、間違えて呼んだ瞬間首が飛ぶような真名を使って悪い冗談を言うわけがなかった。

「私の真名は桃香です。

 また必ずお会いしましょう、華琳さん」

「えぇ、桃香。

 また会いましょう」

 しばし手を重ねあった後、二人は同時に前を向き、彼女は仲間達と共に歩みだした。

 俺達とは違う、彼女達の王道を。


【正対】

 真正面から相対すること。面と向かうこと。


投稿自体は前書き通りですが、次は白か、本編を予定しています。




今回の禁句ワード

『白き衣』=『学校の制服』

ルビに振らなかった理由:シリアスの崩壊を防ぐため

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