活発なう。
「お嬢様、お嬢様ぁ!?」
そう言いながら私を探し回るアサリを木の上からながめる。
……ふっ。これこそ高みの見物!
オーホッホッホッホ!……ゲッホゲッホ。やば、気管に入ったっ……。
~しばらくお待ち下さい~
……いきなり失礼しました。
私はあの魔法を使った日から、もう7年がたちました。
そして、私は母を師とし、魔法の訓練をしました。そして訓練に特訓を重ね、取りあえず、そこら辺のゴロツキ4,5人なら、一人で倒せるようになりました。
もっと特訓すれば、成人したときには宮廷魔術師になれるそうです。なる気はありませんが。
しかも、まだ頭が子供で柔らかいからですかね。すぐに覚えちゃうんですよね。だからこの先習うはずのものは全てパスしちゃいました。この先習うはずのものって言うのは、小学校、中学校で習うことです。次に習うとしたら、専門知識の部類に入ります。
それでまぁ、いろいろとありまして、天才の名を手に入れました。
だとしても、まだ子供ですから。出来ることは限られています。
そーこーで!私、良いこと考えちゃったんですよ。
ほら、私前世では体弱かったじゃないですか。常に外を夢見てたような人間じゃありませんか。
外で遊び回ろう!思いっきり!
って、思っちゃったわけですよ。
………少々やり過ぎたところもあるような気がしますが、後悔はしていません!
最近は乳母から私の侍女になった、サリオとクイーナ。
そして更に入ってきた、まだまだ行儀見習いの15歳少女アサリ。この子は確か男爵家の次女だったはずです。栗毛に赤茶の目で、すらっとしてて、細いのが特徴です。髪をいつもすっきりとまとめていて、優しいけれど、どこか抜けています。余談ですが、婚約者がいると言っていました。
今日は特に何もなく庭に散歩に来たのですが、まあ、そこは私ですし。何もなく終わるはずもなく、だんだんと恒例になってきた、アサリとの隠れおにごっこが始まりました。
「おじょーさまー!もう、何処ですかー!」
貴女の真上です。
何ででしょうかねー?
これも毎度のことなのですが、アサリの探している所ってすごく惜しいんですよね。子供らしく、花壇の陰に隠れているときは、さすがに見つかるのですが、こういう子供らしくないところとか、普通隠れないところには全然気付かないのですよね。さすがに分かるだろって所まで探して「いないなぁ」って言って去って行きます。そこを見計らって後ろからこっそり近づき、ぴょんと抱きつくのです。そして、隠れた場所を教えて、勝った~ってわらうのです。
アサリを見ながら、それを楽しみにくふふふふと笑っていると、向こうから誰がやってきました。
その人はまだ12歳くらいの少年で、クリーム色の髪をしていました。そしてアサリの上にいる私を見つけ、クスリと笑いました。
あれはまさか!
「兄様!」
「うひゃ!」
アサリ……。淑女としてその反応は――――――って今はどうでもいいや。
私は木から飛び降り、風の魔法を使ってふわりと着地。
そのまま走って兄様に抱きつきました。
「兄様おかえり!いつ帰ってきたの?」
「ついさっきだよ。庭からアサリの声が聞こえたから、もしかしたらと思ったら案の定」
兄様は、きれいな蜂蜜色の目を細めてにっこり笑いました。
はうっ。兄様のあの二人の子ですので、美形なのです。だから笑顔も破壊力抜群。
ああ、この一家やばいです。みぃーんな、優しいし、かっこいいし、頭良いのです。私はもう、マザコン+ファザコン+ブラコンですよ。
姉様がいたらもう最強ですね。きっとシスコン。
「えへへ。今回はいつまでいるの?」
今兄様は騎士学校に通っています。確か正式名称は国立精鋭騎士養成学院だったはず。兄様はここに通っています。
この学校は全寮制で、私が生まれたとき知らなかったのはその所為です。帰省できるのは年末年始と、夏休みだけ。この国は常に穏やかな気候なので、夏休みと言うよりも、家の手伝いのために帰る、いうものです。この時期は確か、社交界シーズン出したから。そのほかは、一家の一大事だとか、怪我のためのだとか、そういうのです。
今は日本で言う夏に当たるので、そろそろだと思ってました!
「えーっと2ヶ月くらいかな?」
「やったー!ねえ、兄様遊んで!」
「あはは、お母様に挨拶してからね」
「うん!今日はお父様も屋敷にいるからお母様もお父様の手伝いしてるって言ってたよ」
「んー、じゃあ、執務室かな」
「早く行こ!」
「ミディ待って。まずお風呂に入ろうね」
「あ」
私、泥だらけです。動きやすさ、汚れの落ちやすさ重視で、飾りの少ないシンプルなワンピースを着ているので、汚れてもあまり気にしませんが、こ、こんな格好で兄様に抱きついていたなんて……。
「だいじょーぶ」
私は、水と火と治癒の合成魔法を使って汚れを落とします。
「………ミディ、それ何処で習ったの?」
「自分で創ったの!ね、早く行こ?」
「う、うん。そうだね」
うふふふ、驚いてますね。
私はただ遊んでたわけじゃないのです。きちんと勉強してたのです。そう、専門知識を!
家にあった、大量の資料。家を探検していたときに見つけたのです。そこに私の好奇心がうずき、すぐにお父様から許可を貰い、本を手に取りました。
その中に、魔法に関する資料もたくさんありました。そうして魔法を創ることが出来るようになったわけです。
これもまた、王妃への一歩です。
「兄様、早くー!」
今度は風の魔法でふわふわ飛んでいきます。
「え、ちょ、待って」
「鬼ごっこだー!」
少しほどスピードを上げる。
これが、現在の私の日常なのでした。まる。
「お嬢様、私は……」
あ、アサリ。
…………わ、忘れてたわけじゃな、ないんだからね!
わ、忘れてたわけ、ないじゃないですかっ(汗
2014/02/03編集