表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢の改革記  作者: 内田美紀
1章 転生しました。
8/14

その頃の陛下(になる予定)は②

 遅くなりました。

「お父上さま、これ、なに」

「人だ。お前と同じ、人間だ」


 ソレは変な臭いがした。黒くて、ちいさくて、ちゃいろいボロボロの布でくるんであった。ところどころ、白いモノが見える。

 まわりに虫が飛びまわり、地面にもたくさんの虫がはいずり回っていた。


 ………なにこれ。なんなの。

 こんなのが人なわけない。

 こんなきもちわるいのが人なわけない。


「うそ言わないでよ。これが人なわけないよ!」

「………」


 うそだと、じょうだんだと、言ってくれると思っていた。

 だけど、お父上さまはなにも言ってくれなかった。


 うそだ、そんなわけない。

 これがひとなわけない。

 だって人は、もっと白くて、大きくて、きれいで、こんな臭いなんてしなくて。


「これは人だ。いいか?お前の言う貴族たちが言っているのは嘘だ。この国は潤ってなんかいない。潤っているのだったら、人がこんな風に死ぬこともない」


 あいつらが言っていたのはうそ?

 この国はうるおってない?


 コレは死んだヒト?


 コレがヒト?



 このぐちゃぐちゃで、汚くて、くさくて、虫がたかってるのが?


 おれはフッと目をそらした。こんなの見ていられなかったから。


 目をそらした先には、今まで見えなかったモノが見えてきた。


 コレと同じようなモノが2,3コ見えた。

 そのなかの一つが、もうなにうつさない、動かない、光のないその目を大きく開けて、こちらを見ていた。

 なにもうつさないくせに、うらむような、しつぼうしたような目で見ていた。



 ああ、そうか。 


 コレはヒトなんだ。

――――――ちがう。


 コレはヒト。

――――――ちがう。


 ヒトだ。

――――――ちがう。


 ヒト。

――――――ちがう。


 ヒト。

――――――ちがう。


 ヒト。

――――――ちがう。


ヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒトヒト




 ――――――うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ




 吐いた。胃の中の物がすべてなくなるくらい、吐いた。



「今日はこれで帰るか」


 おれはなにも答えなかった。



◇ ◇ ◇


~夜 現国王・私室にて ~


「陛下」

「ん?なんだ」

「やっぱり少し早すぎませんか?」

「ああ、そうかもしれないな」

「殿下帰ってきてからずっと寝込んでますよ」

「だが、あいつがもし無能になってしまったら、この国はもう終わりだ。まだ刺激が強かったかもしれないが、早めに手を打たないとな。手後れになってしまっては困る。無能どもにいろいろ吹き込まれていたらしいしな」

「そうですね。・・・・・娘には見せたくないですよ」

「俺だってそうさ。何が良くて自分の子にあんなの見せなきゃならないんだ」

「まったくですね」


「娘と言えば、お前の所確か、」

「そうなんですよ。うちの子は天才ですよ。何せもう魔法が使えるのですからね」

「そうだったな。お前たちの子だ、きっと美しく育つだろう。王妃にしてみるってのはどうだ?」

「ミディは嫁にやりません」

「親バカめ」

「褒め言葉です」


「デイルミスト、今日はどうする。帰るか?」

「ん~、もうミディも寝てると思うので泊まります」

「もし起きてたら?」

「帰ります」

「親バカめ」

「褒め言葉です」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ