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公爵令嬢の改革記  作者: 内田美紀
1章 転生しました。
7/14

とある乳母の思想。

 ミディアンヌの乳母、クイーナの話。

 こんにちは。私はクイーナと申します。

 ヒジェンド家の長女であるミディアンヌお嬢様の乳母をしております。

 乳母と申しましても、母乳は奥様が与えられるため、私がするのはお嬢様の身の周りを整えたり、お嬢様が喜ばれるような物(人形やおもちゃなど)を探して用意することです。同業者のサリオはお嬢様のお洋服や、日用品(毛布やタオルなど)を用意します。

 私もサリオも子供が好きです。なのでこの仕事に抜擢されたとき、とても喜びました。


 ですが、とんでもないことが起きてしまいました。


 本日、まだ生後三ヶ月であるお嬢様が、なんと魔法を使われました。


 生後三ヶ月で魔法を使うなんてことは今まで聞いたことがありません。


 私はお嬢様に対してある疑念を持っていました。

 今までも幾度となくそう思ってきましたが、そんなはずはないとその可能性を否定し続けていました。


 ですが今回のことで、確信を持ってしまいました。


 お嬢様は普通ではありません。異常なのです。

 恐らく、私たちの言葉の意味を理解しておられます。


 これまでも幾度かそのような行動がありました。

 奥様や旦那様がお話しになっているときは一言も喋らず、大人しくしておりました。

 眠る時間になったら私たちが何も言わなくても眠り始め、自然に起きられます。


 そして何より、お嬢様は滅多に泣きません。


 赤子は毎日のように泣きます。

 ところがお嬢様は今までに泣いた回数を数えると、両手で足りてしまいます。


 私は子供が大好きです。だから赤子とのふれあいも多かった。


 だから、お嬢様の異常さがよく分かるのです。



 旦那様や、サリオ、その他使用人仲間は気付いておりません。ですが、奥様はこのことに気付いておられます。

 奥様は、お嬢様が言葉を理解していること前提でお嬢様に話しかけられているからです。

 お嬢様はそれに反応します。お嬢様は奥様が気付いていることが分かっておられないのでしょう。お嬢様がこのことに気付いておられるのなら、そのような行動は止めるでしょう。

 お嬢様はそのぐらいの知能を持っているはずです。


 ですが、何故奥様はそのことを誰にも話さないのでしょう。

 私は勝手に屋敷のこと、ましてや主たちのことなど、一切町では話しません。我々使用人が話したことが町で噂になり、その噂が良からぬ者になったら主たちからの信用が落ちてしまいます。

 それに比べ、奥様は話しても特に問題はありません。それに、夫である旦那様にも話していないというのも気になります。

 夫婦であるにもかかわらず、何故お話にならないのか。奥様には何か考えが?



「――――ナ。クイーナ!」

「うわ!」

「ちょっと、どうしたのよ。らしくないわね」


 サリオがいつの間にか目の前に立っていました。


「あははは。ごめん。ボーッとしてた」

「もう、止めてよ。さっきクイーナに奥様から呼び出しが来たわ」

「え?」

「それはこっちの台詞よ。アンタなにやらかしたの」

「うーん。覚えはないけど」

「ま、さっさと行ってきなさい」

「はーい」


 奥様から呼び出し?

 なんというか、偶然でしょうか。

 まさか、奥様は人の心が読めるとか。

 ・・・・・・さすがに無理がありますか。



 奥様の私室。この部屋は使用人の中でも奥様のお世話係や、部屋の清掃係の者など、一部の者しか入ることが出来ません。私も場所は知っていても、中に入ったことはありませんでした。

 コンコンと扉をたたきます。


「奥様。クイーナでございます」

「入りなさい」


 扉を開けました。

 奥様の部屋は日当たりが良く、暖かな日差しに包まれています。

 その中に、一人三人掛けのソファーに座る群青色の美貌の人物、それが奥様です。いつ見てもお美しい。


「クイーナ。座りなさい」

「え、いえ。そのようなことは」

「遠慮しなくて良いのよ。座りなさい」


 奥様の目が、早く座りなさいとおっしゃっています。

 使用人が主と同じテーブルに着くのは失礼とされています。ですが、奥様がこう言うとなると、従わなければなりません。

 私はソファーに腰掛けました。


「ねぇ、クイーナ」

「はい、何でしょう」


 嫌な予感はしていましたが―――


「いつから気付いてのかしら?」


 やっぱり当たってほしくはありません。


「な、何のことでしょうか」

「ミディのこと」


 奥様の目が急に鋭くなりました。

 やはり、気付かれましたか。


「気付いたところで残念だけど、やっぱり知られるわけには行かないのよねぇ」


 こてんとかわいらしく首をかしげられます。

 今の私にはそのような考えを持つ余裕はありませんけどね。


 体が動きません。声も出ない。まるで蛇ににらまれた蛙のよう。


「ミディが貴女に懐いているから消しはしないけれど、記憶は消させてもらうわ」


 記憶を消す?いったい何を。


「そうそう。気付いた記念に教えてあげるわ」


 奥様?いったい何をしようと―――


「『 』って知ってる?これはこの世界を創り出したモノ。全ては『 』で構成されていてね?これに干渉することで、世界を一つ消したり、人の運命を変えることが出来るの。ミディは何者かが『 』に干渉した影響で、この世界ではなく、別の世界で生まれたの。そして死んだ。そしてようやくこちらに来たの」


 何を言っているのですか?


「ミディの中身は17歳の異世界人よ。だからあんなに賢いの。それにしてもミディも災難よねぇ。ちょうど良いところで死んだからって王妃にされるなんて」


 何故そんなことを知っているのですか?


「ねえ、ねえ。『 』に干渉した何者は誰か分かる?」

「っ!?」


 急に、意識が・・・・・


「それはね」


 もう・・・・無理・・・・・


「私よ」






「・・・・・はっ」

「クイーナ!良かった目が覚めたのね!」

「・・・サリオ?私、どうしたの・・・」

「覚えてないの?アンタ中庭に倒れてたのよ。それを奥様が見つけて下さったの。後でお礼を言っておきなさい」


 そうだ、そうだった。

 私は中庭に向かったんだ(・・・・・・・・・)そこで急にめまい(・・・・・・・・)に襲われたんだ(・・・・・・・)


「疲れが出たそうよ。今日は一日休んでなさい」

「そうしとくわ」


 あ、なんだか眠いです。

 今日はゆっくり寝ましょう。


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