怒られました。
「里照、起きなさい、里~照~!!!」
懐かしい、とても懐かしい声。
この声は、まさか・・・・・
「母さん・・・・・・・・・?」
「そうよ。石田里照の母親よ!」
眠くて閉じたまぶたを、思いっきり開きました。
そこには、お母様やお父様よりも見慣れた母の姿がありました。
「かあ・・・さんっ!」
どんどん涙があふれ出します。
私は思わず母さんに飛びつこうとしました。が――――――
「・・・・・え?」
母さんに止められました。
「何・・・・・で?」
「馬鹿ねぇ」
母さんは呆れたように言いました。
「アンタはもう私が産み育てた里照じゃないわ。マリアーナさんが生んだ、ミディアンヌよ」
「・・・・・・・・・・・・!」
事実です。事実なのに、とてもショックを受けました。
多分それは母さんが私を、自分の娘として受け止めてくれなかったからです。
「こらっ!」
「いったっ!」
母さんにはたかれました。
「~~~~~っ!!」
「アンタはいつからそんなにシャイになったのよ。いつも通り、にこにこすっとぼけてた方が似合うわ。それに加え、急に女々しくなよなよしちゃって。気持ち悪いわ!」
貶されました。
そうでした。忘れてました。そうでした。母さんはそうでした。
私がどんなに悲しんでいても、同情なんてせず、「馬鹿ねぇ」と言って発破をかけるのでした。唯一母さんが同情したのは、私が死んでしまうと分かったときでした。
ちなみに私は女です。女々しくても良いじゃないですか!?
「それにねぇ。アンタ言ってたじゃないの。『大丈夫。来世でしっかり生きていくから』って。その言葉は嘘だったの!?」
思い出しました。私は前世で言ったんだ。本気で言ったんだ。来世でしっかり生きていくって。
何で忘れていたんでしょう。約束したのに。家族に安心してほしかったのに。
「思い出したみたいね」
私は黙って頷きました。
「じゃあもう大丈夫ね」
「根拠は?」
「女の勘よ。それにアンタは自分が出来ることを見つけたらすぐに行動するじゃない」
妙に自信ありげなその言葉に、すこーしばかり、かちんと来ました。
そうですね。思い立ったが吉日、私のモットーです。
だからって、死んだとはいえ一人でこの世界に来た、私の気持ちが分かりますかねぇ。
「それとも、神様に与えられた使命が全うできないとでも?」
かっちーん。私なめられてます。完・全になめられてます。これは母さんからの無言の挑戦状。売られた喧嘩は買うのが礼儀!!そうですね、ええ。分かりましたとも。
「母さん!」
「・・・・・・・何よ、急に」
「私、どんな手を使ってでも、絶対にこの国を立て直してやる!」
その喧嘩、高く買い取った!!
この際やけくそです。やってやろうじゃありませんかっ。
ジッチ〇ンの名にかけて!
私の現お爺様がどんな方か知りませんが!
母さんはニヤリと笑いました。
「それでこそアンタよ!それで良いのよ、いつものお調子者のアンタよ!」
何か失礼なことを言われているような気がしますが、今はそんなこと関係ありません!!
「アタシの出番はここで終わりね」
「・・・・・・・・・え?」
今・・・なんと?
「そうでしょう?アンタ立ち直ったし」
「で、でも・・・・・・・・」
「でも、何?アタシはこれ以上アンタに何かを言うつもりはないし、するつもりもないわ」
母さんは、こういう人でした。それは私が死んでも変わりは無いようです。少し、安心しました。
それは、前世の家族が変わりなく過ごしてるってことですから。
「・・・・・・・っ」
母さんの言葉にショックを受けました・・・・・というわけではありません。とてもすごい睡魔が襲ってきたのです。
「もう終わりが近づいているのよ」
「おわ・・・・り?」
意識が朦朧としてきました・・・・・・・。
「里照!こっちで何も出来なかったって思うんだったら、そっちでがんばんなさい!」
うううう・・・・ね・・・む・・・。
「あ、忘れてた!里照、しっかりと聞きなさい!『 』に干渉したのは――――――」
私の意識はここ途絶えました。
「お、お嬢様!」
「奥様ぁー!旦那様ぁー!お嬢様がお目覚めにぃー!!!」
煩いですね。寝起きの頭に悪いです――――って、なんでみんなそんなに大騒ぎを?
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