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公爵令嬢の改革記  作者: 内田美紀
2章 そして歯車は廻り出す。
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落ち着け。

 私は王城に向かって、電光石火のごとく飛んでいきました。

 お父様が宰相なのでもちろん屋敷は王都内。しかも近い。なのですぐに王城には着きます。


 ………着くのですが。


「――――良い子だからお帰り。君のような子供が来るところじゃないんだから」

「で~す~か~らっ!私は宰相デイルミストの娘ですって!」

「あはは、そんな。宰相閣下は公爵なんだぞ。公爵の娘がこんな所にくるわけ無いじゃないか」

「そうだぞ。それに宰相閣下の娘を語ってると殺されるぞ?宰相閣下は娘を溺愛してるって有名なんだ。その辺にしとかないと本当に殺されるかもしれないよ?」


 お父様、何でこの下っ端の兵士にまで知られているのですか―――じゃないって!


「ですからっ!私は~!」


 王城とは国の中心。王城には城壁に沿ってドーム上に結界が張ってある。その王城には王都その王妃、その他王族が住む。今現在私がいるのはこの城壁の門です。

 私は結界に阻まれ、仕方なく下におりました。ああ、まあ、壊すことが出来たのですけどね。壊したら私もう犯罪者じゃないですか。

 もちろん、人気の無いところから降りましたが、今かんがえるとこの人たちの目の前で降りた方が良かったかもです。そしたらこんな城門警備の兵士に捕まらなくてすんだかもしれません。ちなみに、兵士は四人。そのうち二人が私にかまっています。他の二人は微笑ましそうに見ています。


 そうやってぎゃーわー騒いでいると。私に救いの手が!


「何だ、騒がしいな」


 ………誰?


 どっかで見たことがあるような……。

 えーっと、えーっと。あ、そうだ!


「「大佐!」」

「庭で迷ってた人!」

「「うそぉ!?」」

「ああ、お嬢様、お久しぶりです」


◇ ◇ ◇


 大柄で、がっしりとした体で、ものすごい威圧感のあるこの人。実は半年くらい前に家の庭で迷っていたのです。家は公爵ですので庭もそこそこの広さはありますが、門から家の入り口までまっすぐで何処に迷う要素があるのか教えてほしいところですが、そこは華麗にスルーしましょう。

 私はいつも通りアサリとの隠れ鬼ごっこが始まったところでした。私が小さい木がたくさん植えてある花壇の根元に隠れていたときでした。じゃり、じゃり、と足音が聞こえてきました。アサリかな?と思って少し物音を立てました。ここだよってね。そしたらまあ、なんと言うことでしょう。絶対にアサリではないひっくい声が聞こえてきたのです。


「誰だ!」


 ってね。

 この屋敷では聞いたことのない声で、しかもここは庭の中でも奥の方なので、侵入者かと思って慌てて這い出たのです。速くしないとこっちがやられる!

 すると私よりも向こう側が驚いていました。


 そうですよね。気の根元から小さい女の子が這い出てきたのですから。


「…………」

「…………」


 両者しばしフリーズ。


「あの……」


 その沈黙に耐えきれず、切り出したのは私の方でした。


「どちらさまですか?」


 向こう側もフリーズが溶けたようで。


「あ、お、俺、いや、私は宰相閣下に資料をお届け参りました」

「使者の人!」


 なら安心!


「いや~良かった!貴方見たことなかったから、つい侵入者かと疑っちゃいました!」


 ああ本当に!


「アサリー!帰るよ!お客様がいる!」

「え、お客様ですか?」


 アサリがひょっこり向こうの花壇に植えてある木から顔を出しました。っていうかほんとに近いですよ。感がいいですね。

 もちろんアサリも使者の方を見てびっくり。


「あらまあ」


 フリーズはなし。さすが、私の侍女をしてるだけあって精神図太い。


「屋敷はこっちです。案内しますよ」

「あ、どうも。それであの、貴女は?」

「I am Midianne」

「は?」


 何故に英語でたし。名前当て字だし。


「失礼しました。私、ヒジェンド家長女ミディアンヌと申します」


 ぺこりと、前にならった淑女の礼をする。


「お、お嬢様でしたか!申し訳ございません。気付かずに」

「いえ、お気になさらず。お嬢様はそんなこと気にしませんから」

「うん、そうなんだけどね。なんでアサリがこたえるのかな」

「あ、失礼しました」

「ねえ、アサリって行儀見習いなんだよね、学んでる?ちゃんと学んでる!?」

「はい、学んでおります。それよりもお嬢様」

「何?」

「助けて下さい」


 木から下りれなくなったようです。


◇ ◇ ◇


 こんな感じの出会いでした。

 今かんがえるとかなり衝撃的な出会いですね。


「ええ、本当に」

「その節はお世話になりました」

「気にしないで下さい。道に迷うなんて誰にでもあることですからね」


 何故迷ったかなんてスルーしますとも、ええ。


「それで、城に何の用が?」

「実は!」

「ちょ、ちょっと待って下さい!大佐殿、その子はいったい」

「宰相閣下の娘、ミディアンヌ様だ。お前らミディアンヌ様じゃなかったらどうなっているか、分かるか?」


 全員真っ青。と言うか全身真っ青。すごい、顔だけじゃなくて、手まで真っ青。初めて見た。

 何か感動してたら兵士のみんなが全員土下座をし出しました。少し震えてる。


「申し訳ございません……」

「お許しを……」

「どうか命だけは、命だけはお助け下さい」


 ちょっと待って、何してるの?

 何で土下座を?土下座する必要はあるの?


 私はそこでここに来た理由を思い出した。

 そしてこの兵士たち。


 ことはかなり重大のようだ。


「大佐殿」

「はい」

「お父様の元へ向かいます。案内して下さい」


 私は何も見えなくなった。

 ただ、意識の中にあったのは、焦燥だけでした。

 落ち着いてないですね。

 ちなみに大佐さんはうっかり天然です。

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