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wizard program  作者: 蛍火凪乃
prologue
4/7

...kidnapping

 ボクは悩んだ末に重い腰を持ち上げて、校門に向かうことにした。


 涼太と詩織が置いて行ったお弁当を携えて。


 返信メールに対する返事がないので、何かトラブルでもあったのかな?


 いつも送ってくるメールとも雰囲気が違ったし・・・。




「どうかしましたか?」


 校門前にたどり着くと、スキンヘッド、褐色の肌、黒サングラス、黒スーツ、やくざ風フル装備の人が立っていた。


 でも、人を見た目で判断するのもどうかと思ったので、声をかけてみることにした。


 桜鈴学園の来客だったら受付まで案内してあげよう。


「あ、どうも。私は山下と申しますが、実は人を探しているんですよ」


 ボクも偏見がかなり残っていたようで、ここまで遜られるとは思っていなかった。


「すみません。こんな容姿なもので、驚かせてしまいましたね」


 どうやら、顔に出てしまったようだ。


「あ、ごめんなさい」


「大丈夫ですよ。慣れていますから」


「お詫びと言ってはなんですが、人探しを手伝います。まあ、ボクも人を探している途中なんですけどね」


「必要ない」


「え?」


 背後から、どすの利いた声が聞こえてきた。


 咄嗟に振り返ってみると、眼前まで拳が迫ってくる。


 瞬間的に拳が目の前三寸のところで止まり、淡い光を発する。


 そうかと思えば、ボクは空中を漂った。


 数秒後に背面から地面に接触する感覚があふれてきた。


「チッ、踏み込みが甘かったか?」


「そんなことないですよ。彼の防護フィールドはカスタムされていますから」


 ボクは素早く顔を上げると、そこには黒スーツの男が1人増えていた。


 山下と名乗った男よりも、筋骨隆々とした肉体を持っている。


 いきなり殴られるとか、ボクが何かしたのかな?


 ・・・身に覚えがないな。


 ハッキリしているのは、涼太と詩織に何かあったということ。


「で、ボクに何の用?」


「先ほど申し上げたように、人探しですよ。その方の名前は真谷柚奈様と言いまして、鳴瀬朔良様を餌にすると釣れるという情報が入ってきただけです」


 それは、つまり、餌の餌に涼太達に手を出したことになる。


「さすがのボクでも、イラッとくるね」


「安心してください。鳴瀬様が大人しくしてくれれば、2人にこれ以上の危害は加えませんから」


 この状況は圧倒的に不利だ。


 ボクは素直に両手を上げて、抵抗の意思がないことをアピールする。


「賢明な判断です。では、デバイスをこちらに渡してください」


 指示通りに、右ポケットからタブレットデバイスを取り出すと、殴ってきた男に引っ手繰られた。


 ボクは他人に個人情報を吐露している不快感を覚えながら、せめてもの反抗をすることにした。


「多分、ボクを餌にしても、真谷さんは要求を呑まないよ」


「おや、何故そう思うんですか?」


 山下は本当に不思議そうな顔をした。


「ボクを見捨てられないほど仲良くはないとからね」


 現状では、真谷さんからの依頼以外に接点がない。


 彼女は人間嫌いなので、基本的には誰とも話すこともない。


 唯一の会話とも呼べない会話に成功しているボクは、周囲から仲が良いという判断を下したのは頷けるところがある。


 だから、ボクが餌に選定されたのだろうけど、残念なことにその程度の関係性しかない。


「その辺も考えてあります。例えば、真谷様の周囲の環境そのものに脅しをかけるとどうなると思いますか? きっと真谷様が信頼できない人は拒むでしょうね。それを幾度も繰り返していくのです。やがて、真谷様は社会的に抹殺され、縋り付く宛てがなくなり次第、自然と私達のもとへ来るでしょう」


 山下はとても下品に両の頬を緩ませた。


 ボクが他人に殺意を抱くなんて、人生で初めてかもしれない。


「おっと、そろそろ時間的に危ないですね。田辺さん、一度引きましょう」


「わかった」


 そして、ボクの背中に何かが突き付けられた。


 バチッと背中に激痛が走る。


「あ゛ああ゛ぁ・・・」


 この時、ボクは自分の視界がブラックアウトするまで一瞬の永遠を感じていた。


―――


 田辺は、朔良が気絶したことを確認すると、背中に当てていたスタンガンをしまって、朔良を右肩に担いだ。


「どんな凶器も、ゆっくりと近づければ防護フィールドは展開されない。まだまだ不便な性能だな」


 田辺は詰まらなそうに言葉を吐き捨てた。


「そう言わないで下さい。危険物に対応するなら、低レベルAIが必要になるんですよ。学生服の何処にそんな膨大なデータを書き込むつもりですか?」


「それを見つけるのがお前たちの仕事だろ」


 山下は確かにそうですね、と営業スマイルを浮かべる。


 2人は近くに停めていた自動車のトランクを開けて、空いているスペースに朔良を放り込んだ。


「こいつらはどうする?」


 田辺が指差したのは、涼太と詩織のことだった。


 2人とも手足を鎖で拘束され、朔良同様に気を失っている。


「なにも、使い道は脅迫材料だけではありませんよ。一緒に連れて行きましょう。幸い、部屋も余っていますし」


 朔良の手足を鎖で拘束しながら山下が答えた。


 そして、2人は自動車に乗り込み、その場から去って行った。


―――現在


 朔良は深く溜め息をついて項垂れた。


 脱出の方法を思案しているのか、部屋内をキョロキョロしてはうつむいて両目を閉じる。


 やがて、何かを決意したかの様に立ち上がると胸元から制服の内側に隠れていたペンダントを取り出した。


 ペンダントトップは、オレンジ色の南瓜にギザギザとした口と三角の目と鼻が彫られているハロウィンパンプキンがモチーフだった。


「《武装術式起動(アクティベート)》」


 すると、朔良の全身が淡く輝き始めた。


 3秒ほどで輝きは収まったが、朔良の服装が変わっていた。


 制服は着たままだけど、紺色のローブコートを羽織っており、袖が長いため手が隠れている。


 頭には、茶色のベルトとハロウィンパンプキンのバッチがついたローブコートと同色の三角帽子が被せられている。


 先ほどまでペンダントトップを包んでいた右手には、朔良の伸長より少し長いスタッフが握られていて、これの先端にもハロウィンパンプキンがあしらわれていた。


 そのスタッフを両手に握りなおす。


「コード《HAMMER》」


 今度は、スタッフだけが淡い光を放った。


 柄が半分程度まで短くなり、先端のハロウィンパンプキンが大きな直方体に変化した。


 いわゆる、巨大ハンマーだ。


「せーの」


 朔良はしっかりとテイクバックを取ると、鍵の掛かった出入口の扉にめがけて振り下ろした。

涼太「このままだと、そこまで朔良は能天気じゃないよな?」

凪乃「いや、オレの性格をすり込んであるから大丈夫」

涼「どこが?」

凪「フラグの回収方法が定まってないのに、フラグを立てたところとか?」

涼「それは、能天気じゃなくて馬鹿だ」

凪「大丈夫。なんとかなると思う?」

涼「せめて、疑問形を止めろ! もし、こんな駄文を閲覧している人がいれば、馬鹿な作者に汚点を突き付けてやって下さい」

凪「そうだった。感想を催促するために後書き書いたんだった。皆さん、よろしくお願いします」

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