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wizard program  作者: 蛍火凪乃
prologue
3/7

...meet again //act2

 ボクが小学生の頃、ほぼ毎日遊んでいた友達が4人いた。


 それは男女混合のグループだったけど、周囲からの冷やかしの視線は気にならなかった。


 でも、それも小学五年生の時までだった。


 別に喧嘩をしたわけでも、嫌になったわけでもなかった。


 その時は、ちょうど父さんが交通事故にあった頃の話だ。


 父さんへの愛が強かった母さんが倒れ、ボクが遊んでいる余裕がなくなってしまっただけのことだ。


 みんなは気を使ってくれて、母さんの看病や家事を手伝ってくれた。


 最初は慣れないことで大変だったから素直に好意に甘えていたけど、作業に慣れていくたびに罪悪感が募っていった。


 しばらくして、母さんの容態がよくなってきたので、ボクは1人でそれらのことをするようになった。


 学校がある日の休み時間は、いつもの5人組で仲良く遊んでいたけど、放課後や休日にボクが欠けることが多くなった。


 ボクたちが六年生に進級した頃、母さんは回復し、休んでいた仕事にも復帰した。


 だけど、5人のうち2人は中学生になってしまった。


 中学生と小学生のスケジュールが違うのは至極当然のことで、今まで以上に5人で遊ぶ機会が減ってしまった。


 さらに、その年の夏休みに追い打ちをかける出来事が起きた。


 今度は、とある女の子が原因だった。


 その子は両親の仕事の都合上、海外へと引っ越すことになってしまったのだ。


 彼女は、この街に残ることを両親に強く希望したが、小学生の一人暮らしを許可するはずもなく、誰も正論で彼女が残ることの意義を唱えられなかった。


 それから、5人全員が集合することは不可能となった。




 会うのは4年ぶりだけど、思い出に残る面影に一致している彼女を見間違えるはずもなかった。


 彼女の名前が一瞬にしてこみあげてきた。


「詩織!?」


 そう、高峰(たかみね)詩織(しおり)こそが彼女の名前だ。


 でも、今の声はボクが発したものではない。


 ボクの後ろの席に座る、支倉(はせくら)涼太(りょうた)によるものだ。


 クラスメイトは注目を涼太に移し、詩織もこちらの存在に気が付く。


 詩織は驚いた表情を見せたが、すぐに悪戯を成功させたときの様な微笑を浮かべた。


「あー、高峰。自己紹介をしてくれ」


 痺れを切らした新野先生により、再び詩織に視線が集まる。


 詩織もハッとした表情になり、教壇の中央まで歩く。


「えっと、高峰詩織です。先日まで海外で暮らしていたので、こんな中途半端な時期に転入することになりました。小学生の時はこの街に住んでいたので、涼太や朔良とは友達です。ちょっとだけ出遅れちゃったけど、3年間よろしくお願いします」


 会釈をして自己紹介を締めくくった。


 同時に、主に男子からの拍手や歓声が巻き起こる。


「高峰の席は・・・、知り合いがいるなら近いほうがいいだろう。ちょうど支倉の隣の席も空いているしな。視力とか問題はあるか?」


「大丈夫です」


 そして、スタスタとこちらに向かって歩いてきた。


 その足取りは軽く、幼馴染だからこそわかる機嫌の良さが垣間見える。


「久しぶり」


 ボクの横を通り過ぎたときに、詩織が囁くように言ってきた。


「そうだね」


 ボクも同じくらいの声量で返した。


「涼太も久しぶり」


 詩織は用意された席に座るなり、涼太に話しかけた。


 これも小声なので、周囲の人は気づいていない。


「そうだな。帰ってくるなら連絡くらい欲しかったよ」


「えへへ、サプライズってやつだよ。また3人一緒ってのにはこっちが驚いたけどね」


「でも、予定では再来年に帰ってくるはずだろ?」


「忘れたの? お父さんは、私が小学生だから反対したんだよ。だから、私だけ帰ってきたの。手続きしていたら遅くなっちゃった」


「おまえなぁ・・・」


 涼太が深くため息をついたのがわかった。


―――昼休み


 ボクは中庭のベンチに座って、購買で買ったクリームパンを租借しながら、タブレットデバイスのディスプレイを眺めていた。


 周囲には誰もいない。


 先ほどまで、涼太と詩織もいたけど、自動販売機まで飲み物を買いに行った。


「・・・遅いなぁ」


 買いに行ってから既に15分ほど経過している。


 デバイスで涼太に電話をかけてみたけど繋がる気配がない。


 詩織の場合も同様の結果だった。


 とりあえず、先に昼食を取ろうと、クリームパンの袋を引き裂いたときに涼太からのメール着信が届いた。


 ボクはクリームパンに噛り付いてから、メールを開いた。


『校門まで来て』


 たったそれだけが、ディスプレイに映し出されていた。

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