...ready
処女作品です。
駄文に対する意見や、誤字の指摘を頂ければ幸いです。
更新は不定期ですが、なるべく早く書くつもりです。
暗雲が立ち込める中、一つの影が樹海の深部にある石舞台の中心で小型の電子端末を操作している。
周囲に見えるものは乱立する樹木と風化した石柱のようなものだけだった。
しばらくすると、影を中心に淡い光が足元に照らされ、すり抜けるように地面の中に引きずり込まれてしまった。
影は抵抗することなく、頭の先まで飲み込まれると、何もなかったかのように光は消えてしまった。
次に影の視界に映ったものは、下へと延びる筒状の光の道だった。
影は身動きをとらないが、徐々に下へと進んでいく。
やがて、四十畳ほどの広さを持った薄暗い部屋へと降り立った。
その部屋の大半がコンピュータで埋め尽くされており、この部屋の光源はすべてコンピュータのディスプレイより発せられる光で構成されている。
その影以外には人影は見当たらず、主のないコンピュータは自動で延々と作業をしている。
この部屋のメインコンピュータと言うべき一際大きなコンピュータの前に置かれている唯一の椅子に影が座ると、手元にあるタッチ式のパネルにキーボードを出現させた。
そして、メインコンピュータにいくつかの指示を与えていく。
作業が進むたびに影の頬が緩み、口元が吊り上る。
ふと、影の動きが停止した。
メインコンピュータには赤い文字で『DANGER』と書かれていて、その下には『OK』と『CANCEL』の文字が並んでいた。
よくよく見ると、あちらこちらのコンピュータのディスプレイにも同様に映し出されている。
影は自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をして、ポイントを『OK』にあわせ、躊躇いなくエンターキーを勢いよく押した。
すると、ディスプレイには『24:00:00』と書かれたクロックが出現し、秒単位で数字が減少していく。
感慨深くそれを眺めた影は、懐から錠剤の入ったプラスチックのケースを取り出した。
影はケースから錠剤を取り出すと、何錠か一気に口の中に放り込んだ。
そして、水気のない口内から喉、食堂、胃へと運んだ。
部屋の外では地震、すなわち地殻変動が発生している様子で、鳴動が部屋内に響き渡る。
それを子守唄のように感じた影は、ゆっくりと瞼を閉じた。
するりと落ちたケースが床との接触の衝撃により、錠剤が散乱する。
しかし、すでに意識を手放していた影には関係のないことだった。
それから、クロックは『00:00:00』を静かに迎えたが、その部屋には何も変化は起こらなかった。
影が目を覚まさなかったことも含めて。
これは、本編ではありません。
次話からが本編です。