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仮面を被ったまま生きていた部屋  作者: 巳ノ星 壱果


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22/22

22話 あの場所には戻らない

 第25章 あの場所には戻らない


 工場で一人で過ごす時間の中で、私は感情を無にしていた。


 昼休憩のチャイムが鳴ると、自分の車に戻ってご飯を食べる

 でも、そうしている人が何人かいることも知っていた

 この狭い世界では、いじめのようなものが起きていたのかもしれないと、今になって思う。


 学生時代の私は、いつも誰かと一緒にいた

 人を避けるなんてことはなかった。

 だから、こんなふうにこそこそとお弁当を食べるのは、人生で初めてだった。


 悩みを抱えること自体が、もう嫌になっていた。

 病気が再発するのが怖かったからだ。

 せっかく外の世界に出られたのに、また振り出しに戻ってしまうのは嫌だった。


 これがゲームなら、振り出しに戻ってやり直せる。


 でも、これは私の人生だ。

 また薬を飲む日々に戻ってしまったら、あの外の世界には、もう簡単には戻れない。


 もう少し文学寄りにするなら最後はこうでもいい


 でも、これはゲームじゃない。

 これは私の人生だ。

 また薬を飲む日々に戻ってしまったら、私はもう、あの外の世界へ簡単には戻れない。



 何も考えない。

 たまに後輩と話す。


 そんな日常を繰り返す中で、派遣で来た女の子が二人いた。


 その二人は、仮面を被る前の私のような雰囲気だった。

 キラキラしていて、明るくて、気づけば自然と打ち解けていた。


 年は、五つほど上だっただろうか。

「仲間」と呼べる存在にはなったけれど、交わすのは軽い世間話だけだった。


 深く関わることが怖かったのかもしれない。

 話さなかったのか、話せなかったのかは、自分でもわからない。


 そこには、確かに一線があった。


 表向きは楽しく話せた。

 それだけで、十分だった。


 車で過ごす日々は続いていたけれど、

 それでも少しだけ、人と話せる時間があることが、私は嬉しかった。


 ある春の日。

 日差しが心地よくて、気がついたら車で眠ってしまっていた。


 目を覚ますと、休憩時間は四十分も過ぎていた。


 慌てて、仕切っている社員のもとへ謝りに行った。


「やる気がないなら、帰れ」


 みんなに聞こえるような声で、怒鳴られた。


 もし私が、あの輪の中に入っていたら。

 きっと、ここまで言われることはなかった。


 あの人は、いつも人の目を気にしていたから。


 涙は止まらなかった。

 それでも、帰らなかった。


 ここで逃げたら、終わる気がした。


 だから、働いた。


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