21話 残された者
第24章 残された者
ゆうやを突然失い、別れを告げたあの日から、
後輩とも親友とも、ゆうやの話はしなかった。
みんな、ゆうやを忘れられなかった。
だからこそ、言葉にしなかったのだと思う。
ゆうやの両親は、
ぐしゃぐしゃになった軽自動車を修理し、何年も車検に出し続けていると聞いた。
突然の死というものは、あまりにも残酷だ。
まさか、自分の大切な息子が、ある日突然帰らぬ人になるなんて、想像したこともなかっただろう。
私は祖母を亡くしたとき、介護を手伝っていた。
最後まで寄り添うことができた。
死に目には会えなかったけれど、沢山の時間を過ごしたからこそ悔いはなかった。
でも、ゆうやの家族は違う。
何もできないまま、突然すべてを奪われた。
だからこそ、手放せないものがあるのだと思う。
修理された軽自動車。
それを手放さずにいるのは、
「いつか、ゆうやが帰ってくるかもしれない」
そんな、叶うはずのない期待を、
どこかで信じているのかもしれない。
テレビで目にした、交通事故で子どもを亡くした親の姿。
あの人たちも、こんな気持ちを抱えながら生きているのだろうかと、考えてしまった。
まさか、自分の身近で、こんなことが起きるなんて、思いもしなかった。
時間だけが進んで、ゆうやだけが戻ってこない。
残された者の悲しみを、私は初めて知った。
もし、あのとき、自分がこの世にいなくなっていたら。
誰か一人でも、悲しんでくれる人はいたのだろうか。
ゆうやとの別れが、そんなことを考えさせた。
何事もなかったかのように流れていく日々の中で、
工場で陰口を叩く人たちのことを、どこか冷めた目で見ていた。
怒りという感情にエネルギーを使うことが、無駄に思えた。
コソコソ言うくらいなら、直接言えばいいのにと思った。
この工場の人間は、群れないと何者にもなれない。
でも私は、誰とも群れなくても、一人でいられる。
ただ、そう思った。
その考えを、
少しだけ変えることになる出会いがあった。
一人の女性だった。




