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仮面を被ったまま生きていた部屋  作者: 巳ノ星 壱果


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20話 ゆうやが愛された証

 第23章 ゆうやが愛された証



 悲しむ余地も与えられないまま、日常は流れていく。


 友人を失ったからといって、仕事は休めない。


 身内ではないから、忌引きも使えない。


 友人を亡くした寂しさを抱えながら、

 私は黙々と商品を並べ続けた。


 ゆうやの通夜の日が来た。


 実感なんて湧かなかった。


 私と後輩は職場を早退し、後輩の車で通夜の会場へ向かった。


 後輩の自称彼女に睨まれたけれど、そんなことは私には関係なかった。


 後輩は、私にこう言った。


「気にすんなよ」


 後輩とデートに行くわけじゃない。

 ただ、ゆうやとの最後の別れに行くだけだった。


 それだけだった。


 会場には、溢れるほどの人が集まっていた。

 声を上げて泣いている人もいた。


 でも私は、人前では泣けない。そんな人間だった。


 感情を封じ込める癖が、まだ抜けていなかったからだ。


 何年も会っていないのに、ゆうやが隣に座ってマクドナルドでポテトを食べていた。


 そんな光景が、昨日のことのように思い出された。


 ゆうやは、本当に男女問わずたくさんの人に愛されていた。


 チャラチャラした男だと、ずっと思っていた。


 でも、違った。


 ゆうやは、こんなにも多くの人に愛される人だった。


 私は、そのことを、死んでから知った。


 そっけなくした日を思い出して、悔やんだ。

 止まっていた時間は、もう戻らない。


 携帯電話の番号を変えなければ、

 もしかしたら、ゆうやから連絡が来ていたのかもしれない。


 もっと、ゆうやと話しておけばよかったと思った。


 でも、もうゆうやは、何も話さなくなってしまった。


 余計な一言を言うゆうやも、

 すぐ私をからかってくるゆうやも、

 私は大好きだった。


 通夜の会場で、DVだった元カレを見かけた。

 かつて私を支配していた人だった。


 隣の中学校だったから、

 共通の友人関係で通夜に来ていたのだと思う。


 後輩は事情を知っていたから、気を遣ってくれた。


「壱果先輩、そろそろ帰りますか」


「あ、うん。ごめんね」


 元カレと、少しだけ目が合った気がした。


 でも後輩と一緒だったからだろう。

 何も言われなかった。


 それだけで、私は少し安心していた。


 どうやって帰ってきたのかは覚えていない。

 きっと後輩が家まで送ってくれたのだと思う。


 その夜、私は思った。


 「ゆうやの分まで、強く生きなくてはいけない。」


 それだけを、強く思った。


 あれから何年経った今も、

 私の心の中には、ゆうやの笑った顔が残っている。


 どこかでまだ生きているような気がして、

 地元でばったり会ったら、


「壱果、なにやってんだよ」


 そう声をかけてくれるような気がする。


 最近会っていないだけ。

 そんな気さえしてしまう。


 私の心の中で、永遠にゆうやは生き続けている。


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