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仮面を被ったまま生きていた部屋  作者: 巳ノ星 壱果


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19話 生きたい人が死んだ日

 第22章 生きたい人が死んだ日



 私は、工場でいじめられていたのかもしれない。


 でも、そんなことは気にならなかった。

 私を僻む人は、私より下の場所にいる人間だと思っていたからだ。


 まさか、自分より十歳も二十歳も年上の人たちに

 嫌がらせをされる日が来るなんて、想像もしていなかった。


 そんな時、また嫌な話が耳に入ってきた。


 夜、親友から電話がかかってきた。


「いっちゃん、NEWS見た?」


「え? なに?」


 私はすぐにテレビをつけた。


「え、ゆうや……」


 テレビに流れるニュース。

 交通事故で二名が死亡したという内容だった。


 軽自動車が電柱に追突し、二人とも死亡。


 言葉が出なかった。


 二年くらい会っていなかったけれど、

 学生時代によく遊んでいた男友達だった。


 ゆうやの家にも遊びに行ったことがある。

 お母さんとも、お姉さんとも話したことがあった。


 この数年の間で、

 数少ない男友達を二人も亡くしてしまった。


 私は、言葉を失った。


「いっちゃん、聞こえてる?」


「うん。ごめん、びっくりしちゃって。

 教えてくれてありがとう。


 後輩も行くと思うから、ちょっと後輩に連絡するね。

 お通夜のこととか決まったら教えてくれる?」


「わかった。また連絡するね」


 私は同じ工場の後輩に電話をした。


「ゆうや、亡くなったって。

 交通事故で即死だったんだって」


「ゆうや先輩にはお世話になったので、

 葬儀があったら壱果先輩と一緒に行きたいです」


「うん、わかった。一緒に行こう。

 詳しいことが分かったらまた伝えるね」


 私は、それだけを伝えた。


 親友と後輩、二人との電話を終えたあと、

 ただ頭が真っ白になった。


 生きたいと思っていた人が死んでしまい、

 死のうとしていた私が、ただ生きている。


 それが、不思議だった。


 ゆうやは、高身長で周りから見ればイケメンの少しチャラチャラした男だった。


 二回告白されたこともあったけれど、

 知り合いの元彼氏と付き合う趣味は、私にはなかった。


 距離感がおかしくて、私の人見知りの壁を平気で越えてくる。


 急に話しかけてくるのが、ゆうやだった。


 彼女を取っ替え引っ替えしていたのに、なぜか嫌われない。


 それくらい、ゆうやには人望があった。


 近所の駅のマクドナルドで、

 久しぶりに会ったことがあった。


「あ! 壱果だ!ここで何してるんだよ」


「特に何もしてないけど」


「この子、壱果の友達?おれ、ゆうや。よろしく!」


 そう言いながら、

 なぜか私の隣に勝手に座り、

 私が買ったポテトをバクバク食べている。


 そんな、変わったところもあった。


 他の人にされたら嫌になってしまうことも、

 ゆうやにされると、なぜか気にならなかった。


 マクドナルドで待ち合わせをしたわけでもないのに、

 なぜかそこに居座っている。


 私のポテトを勝手に食べても許せてしまうような、

 あの明るくて、人たらしなゆうやが、もうこの世にいない。


 そして、その代わりに私が生きている。


 そんなことが、まだ信じられなかった。

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― 新着の感想 ―
已ノ星さんは大変な思いを沢山されてきたんですね。まだ身近な友人を亡くした事はないですが、ご友人を亡くされるなんてとても辛い経験されていると思います。色々と考えさせられました。
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