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潔癖症候群  作者: 華矢
9/14

9カテキン効果


「神城さんはなにを頼みます?私は、うどん食べようと思います。うどんの麺って見ているだけでお腹いっぱいになりませんか?」


「なりません」


「そう…ですか。まあ、人それぞれ価値観にズレが生じてもおかしくないですよね」


彼女は、不貞腐れたような、不満気な面持ちで、うどんをラーメンのように口をすぼめて吸い込んだ。


この短時間で、彼女の本質を少しづつ理解してきた。別に、理解しても何の得もないが、彼女は、意味の無い会話をすることが趣味らしい。そして今、無機質な会話に付き合わされている最中だった。


何故、気味の悪い女とファミレスで食事を取っているのかは、経緯が少し曖昧だが、無理やり連れてこられたという表現は正しいだろう。



「ファミレスでもう少しお話しませんか?今日、休みですよね?」


「いや、お誘いは嬉しいのですが、生憎仕事なんです。これから」


「うっそー!?だって、昨夜電話で明日は休みって言ってましたよね?」


「あの、勝手に会話を聞くのやめて貰ってもいいですか?こちらにもプライバシーはあります」


「いやいやいや…聞きたくなくても聞こえてきちゃうんですよ。だって穴が空いてるんですから…。筒抜け状態って感じですよ」


尚更、拳サイズの穴があいているのなら、いくら仕事で疲れていたって気づかなかった、という一言で済む話ではない。


何が目的なのかは、知らないが、彼女が嘘をついていることは明らかだった。だが、一概に認めようとしない。何を企んでいるのか。



───


「で、神城さんは何を頼むんですか?」


「…じゃあ、珈琲で」


「コーヒー!?珈琲って微粒子が舌ベロにずっと残ってる感じして気持ち悪くないですか?つまり、口が臭くなるじゃないですか。はっきり言って私、これだから珈琲飲む人嫌いなんですよね。そこはシンプルにお茶とかにした方がいいですよ。例えば、緑茶とか。緑茶はカテキン効果っていうのがありまして、口内の細菌の増殖を抑えてくれて、食べカスとかの臭いも分解してくれる役割があるんですよ!」



「ほぅ…?じゃあ、緑茶で」


彼女の会話に初めて関心を持った。気づけば、頬杖をつきながら相槌を打ち、話の続きを託していた。


発する言葉は支離滅裂だけれど、珈琲を飲む人の口臭が気になるのは、深く共感ができた。珈琲を飲んだ後に煙草を吸った人間の口臭程、耐えられない物はないだろう。


「ところで、神城さんは最近臭いで困っているらしいですね」


「また、会話を勝手に聞いていたのですか?」


「いえ、実の所、私もそうなんですよ」


「と言うと?」



先程まで、無機質な会話をしていた女とは思えないほど、凛々としていた。俺は興味に惹かれ、前のめりなになって彼女の会話を聞いていた。



「私も臭いに困っている最中、という訳です。神城さんは気づきましたかね?私の "臭いに" 」



彼女はそう言うと、服をパタパタと持ち上げて、仰ぎ始めた。ファミレスで辞めてくれ、埃が舞う…と内心思ったが、それ以前に話の内容が気になり、そちらに意識を向けた。


「何も臭いませんけどね…?」


「で、ですよね!?なんか、職場で…あ、私水商売なんですけど、女の子全員香水とかつけるじゃないですか。私も甘い匂いがする香水を、脇とか首筋とかに沢山かけまくっていたんですよ。でもお客さんに、臭いって言われるようになったのは最近のことなんです。キャストの女の子達も私の事避けるようになってしまって、困っていたんです」


「それは単に香水の匂いが強すぎて、かえって臭く感じてしまったのでは?」


「私も最初はそう思っていたんです。けれど、お風呂に入ってないだろって言わたんです。酒に酔ってる男の人って失礼とかそういう概念を捨てて、何でも正直に言ってくるじゃないですか。お客さんのその一言で、周りも頷いていたので、もう…私、恥ずかしくて、仕事行けてないんです。しっかりと毎日お風呂に入っているのに、一体何が原因なのか…ワキガの可能性とか、考えていて…病院に行こうかなって思っていたところなんです」


俺と同じような悩みを抱えていることに、驚愕した。確かに、ワキガは自分では臭いは分からないと言う。その可能性は大いに考えられる。しかし、爪の間に詰まっていた垢はどう説明する?


彼女の指先に視線を向けるも、綺麗に爪を整えている。蛍光色のピンク色にパーツが爪先を隠していて、上手く判断がつかない。

その爪の色ならば、垢が詰まっていても見当はつかないだろう。


「俺も、近々皮膚科に行こうとしていたところなんですよね」


「あ…もし診断されましたら、結果教えてください。私も、行けたら行こうと思っています。行けたらって感じなんですけどね……」


「分かりました。報告しますので、連絡先教えてください」


「いやいや、回りくどいですよ。穴があるじゃないですか。穴を通して会話をすれば早くないですか?」


彼女の言葉に心底呆れた。あの穴は塞がなきゃ、まずい。


「あの穴は今日、帰宅した際に塞がせていただきます。俺のプライバシーもありますので」



女は一拍置いて、俺を睨みつけ、怯えた様子で言った。


「それは、辞めた方がいいです。塞いだりなんかしたら、──────」



初、ネトコン14事故物件参加させて頂きましたm(_ _)m

良ければ、応援のブクマ、レビューしてくださると大変嬉しいです。

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