4怪奇現象
ここは、飼育もまともに出来ない動物園か。
酒に酔いしれたいい大人がビールジョッキを片手に肩に軽々しく腕を回しはじめた。これだから飲み会は苦手なのだ。
「神城さん、めちゃくちゃいい匂いするっすね!なんの香水使ってるんすか?」
「ド〇キに売ってる安いやつですよ」
「うそー?神城さんが使うとめちゃくちゃいい高級感溢れてるっすね」
本当はブランド品だったが、この動物園の猿共にブランド名を教えたとしてもただ話が長引くだけだ。時間の無駄だと脳内が判断し、反射神経的な何かで口が勝手に動いた。
「マジで神城さん肌も綺麗だし、髪もツヤツヤすぎませんか?」
社員の女性が、「いい匂い」というワードにつられたように乗り込んでくると、一斉に俺へと話題が集まってきた。
「うわー本当だ…やっば!?うちら男に負けてるー笑」などと、俺へのおだてが始まり、謙遜しなくちゃな...と、面倒くさく思う。
「いやいや、そんなことないですよ...ほんとに」
脳内では「帰りたい帰りたい帰りたい」と幾度も疼いていた。
「やっべぇそろそろ終電だ」
鈴木が慌てた様子で腕時計を確認し始めた。
皆、口には出さないが、帰りたかったのではないのだろうか。
帰宅がやっとできるタイミングを逃すまいと、俺も焦ったように声を荒らげ、「わー…俺もです。本当、今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」と言うと、上司も仕方がないか、と疲れきった声で答えた。
「そうだな…明日もみんな早いし、今日はここで絞めよう」
その言葉に、深く安堵した。
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家に帰宅すると、家の中はすっかりと俺色に染まっていた。
「事故物件」に住んでいると口にすると、えーすごい!怖くないんですか?などと複数人に言われるが、実際住んでみるとなんてことも無い。
問題は、気持ちなのではないのだろうかと最近は思っていた。ちょっとした物音がしたくらいで普通の人間は物怖じするが、実際はペットボトルの空気が膨らみ、内側からボトルを推し広げようとした時になる「パキッ」という音だったりする。
長年空のペットボトルを放置しておくと、ペットボトルが吹っ飛んでしまうらしい。それを事故物件だからと言う理由で、怪奇現象だと思ってしまう人間が一定数いる。
俺からすると、勘違いしている人間がただ騒いでいるだけに過ぎなかった。
帰宅してベッドにダイブしたい気持ちを抑えて、風呂を沸かした。
いつでも清潔であることが俺の取り柄だった。
初、ネトコン14事故物件参加させて頂きましたm(_ _)m
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