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潔癖症候群  作者: 華矢
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ビデオ0.5


こんばんは。突然で申し訳ございませんが、私の身の回りで起きている状況をビデオに残しておこうと思いました。


私、もしかしたら命を狙われているかもしれないんです。

こんな事になるんだったら、事故物件なんかに住まなきゃ良かった…。なんて思っても、もう遅い話だってこと、わかってます。


警察にも相談は既にしていました。でも、「幽霊に命を狙われている」なんて言ったら、見事に追い返されてしまい、話すらも聞いて貰えませんでした。


当たり前ですよね、幽霊なんて現実的な話じゃないし、化学的には証明が不可能だから存在を認めてもらうのは難しい話ですよね。


私も、事故物件なんてただ人間が一人亡くなっただけの部屋っていう印象で、内見も伺わずに、この物件に即決してしまったんです。あぁ、もう本当に最悪です。


最初は平凡な日常だったんです。けれど、段々と何かがおかしく、いや…なにかに侵略されているような感覚になりました。


元々、抜け毛は少ない方だったのですが、起きたら沢山毛が抜けていて、それもよく見ると私の毛では無いんです。


美容院で少し茶色に染めていたのに、枕元に落ちている毛は黒くて、それに…短くて、先端にはフケが付着していて…絶対に私の毛ではなかったんです。



じゃあ、一体誰の毛なの?という疑問から始まった朝、その日を境に始まった私の日常はどん底でした。

まるで、不動産会社の方から見せられた " あのビデオ " のような日常が私に迫ってきたんです。


最初は、自殺した人が住んでいた部屋なんて気味が悪いと思っていたんですけど、クロスやフローリングを新しく張り替えてくれていたので快くこの部屋を選んだんです。


ですが、私がフローリングを歩く度に…液体…スライムのような…なにかを踏み潰した感触が足の裏に残っていて気持ちが悪かったんです。


でも、実際には何も踏み潰していません。部屋の中で一人の筈なのに、大勢の人から見られているような感覚になった時もありました。それから徐々に、不可思議な現象が増えていきました…。


確か、その日の夜でした。頭を枕に下ろした途端、硬いものが頭の端に刺さったんです。

手に取って確かめてみると、それは手書きで、「0」と書かれたビデオテープでした。


確か、私が不動産会社の方に見せてもらったビデオテープには「ビデオ1」と手書きで書いてありました。

ビデオ1は、自分を実験台にし、自殺してしまった男のビデオでした。となると、今手元にあるビデオ0は、ビデオ1より前に録画されたのではないだろうか...と私は思いました。


大変恐ろしいですが、私は真相が気になるので、それを再生したんです。

それを見た途端私は、「あぁ、やっぱり…」って思ってしまいました。


ビデオ「0」には、ビデオ「1」に映っていたあの不潔な男が、この部屋で大勢の人を " 実験台にして殺していたんです "


部屋の中で男4人、女2人、合計6人を、残酷な方法で殺害しているビデオが残っていました。


風呂場で水死体や、食べ物を死ぬまで与えず餓死させたり、ボコボコに息を止めるまで痛めつけて暴行死など…ビデオ「0」にはそういった実験の記録が残されていました。


こんなビデオ、入居前に見せられていたら、絶対にこんなところ住んでいませんでした。


自殺した事故物件なんて言い方本当に正しいんでしょうか?もはや、この部屋自体が、『実験室』のような気がしませんか?

ビデオ「0」の実験は、成功したのか失敗したのか、その事はビデオには残されていませんが、恐らく失敗したんだと思います。


失敗したからこそ、ビデオ「1」で彼は自分を実験台にしたのだと思います。非常に残念な結果です。


失敗というのは具体的に、殺された6人全員が幽霊になれなかったのか、それとも6人全員が女の幽霊だったのか…こちら多くの人が疑問に思われると思います。


恐らく均衡を保っている、という曖昧な結果だったと思います。女性は2人だけ実験台にされたと先程お話しましたよね。私ここ1週間で4人の女の幽霊を見ちゃったんです。

実験台にされた女は2人しか居なかったのに。


4人とも、髪が長くて、真ん中分けで、白いワンピースを纏った女性の幽霊でした。

私はこの時点で、抜き差しならない事情によって女の幽霊にしか、どう足掻いたって、なれないのだと思いました。


しかし、4人の幽霊たちは私の生活をただ干渉するだけでした。私が一番驚いたのは、一人一人深く観察すると、それぞれ特徴があったことです。


4人のうち1人は肌が真っ黒で、唇が紫色でした。


2人目は、口元にほうれい線が浮かんでいて、40代くらいに見えました。


3人目は、口元のほくろがタピオカに見えて、こういう人、街中でたまに見るな…という印象でした。


4人目は、凄く剛毛でしたが…まあ今は多様性の時代なので、理解はあると思いますが、毛が剛毛だからといって「男」って決めつける決め手にはなりません。


とりあえず幽霊一人一人に特徴があることが分かったので四人にあだ名を付けて遊んでいました。


彼女らは幽霊なので喋ることは出来ませんでしたが、もし残りの2人が幽霊として現れて来た場合部屋の中が誰が誰だか分からなくなってしまうのが個人的には許せなかったので、名前をつけることにしました。

と言っても、由美子とか、花子と言った名前らしい名前ではなく、残念ながら囚人のような番号です。


「1」、「2」、「3」、「4」それぞれに名前という名の番号を付け、呼びかけていました。彼女らはそれを理解していたのかは、不明ですが、私は4人の番号と特徴を完璧に覚えることが出来ました。

害は無かったので、そこは本当に良かったと思います。


強いて言うならば、夜中に少し物音がしたり、水道の水が何故か出しっぱなしになっていたり、お湯が勝手に沸かされていたくらいですかね。


でも、私には害はありませんでしたので、問題はありませんでした。


しかし、問題が起きたのはその翌日くらいでした。久々に外を出ると、私は異変に気づきました。

通行人の方々全員が、「1」、「2」、「3」、「4」の幽霊と全く同じような特徴を持っていたんです。


偶然だと思いたかったです。顔は勿論人間の顔立ちでした。しかし、私の部屋にいる幽霊のような特徴をしていて、怖くなって友人のA子ちゃんに電話で迎えに来てもらいました。


A子ちゃんは直ぐに駆けつけてくれたんですけど、私は更に内蔵を抉られるような感覚へと陥りました。


…。A子ちゃんも、幽霊「2」のような特徴を持っていたんです。A子ちゃんは私と同じ年で20代の若者なのですが、口許にはくっきりとほうれい線が滲んでいて、笑うと目に皺が寄っていて…はっきり言って40代くらいに見えました。


そこで私は気づきました。幽霊に名前を付けるのはタブーだったという事に。


調べたところ、幽霊に名前をつけると自分の意思とは違い、妙な愛着心が湧いてしまうらしく、人間と霊の区別が付きにくくなるそうです。まさに今の私と同じでした。

その日から私は完全に家から出ることを辞め、家に引こもるようになりました。


仕事にも勿論行きませんでした。お客さんの顔が全員「1」、「2」、「3」、「4」のような特徴が反映されていたら仕事に集中なんて、出来ませんので。


それからしばらく日が経ちました。私の引きこもり生活もお金が尽く頃に、やっと5人目が姿を表したんです。

と言っても、5人目は目に見える幽霊ではありませんでした。それも、調べたところ、目に見える幽霊と、見えない幽霊は同時に存在するらしいです。


人によっては、見える人もいれば、全くと言っていいほど見えない人もいるらしいです。私は後者でした。

5人目はこの世に怨念が薄かったのか、存在もかなりぼんやりとしていました。

勿論、5人目は「5」と名付けました。タブーだと頭では分かっていても、名前をつけずにはいられなかったんです。


「5」も、特に害を及ぼすことはありませんでした。強いて言うならば、寝ている間に布団を剥がしたり、壁に穴を開けるなど、突然壁を殴り出す、と言った行動を起こすだけです。


ここまで来ると最後の「6」も現れるんじゃないかと期待をしておりました。

しかし、最後に現れたのはもっと恐ろしい、霊でした。


心のどこかでは、いつか現れるんじゃないかって思っていました。


そうです。私の目の前に鮮明に現れたのは、あのビデオの男で間違いありません。


ついに、お風呂に入っている時…幽霊の方から私に尋ねてきたんです。


「私の性別ってどちらに見えていますか?」…って。

こんなの初めてでした。「1」、「2」、「3」、「4」、「5」は全員とも喋りませんでしたので。


小声で私は「おかめ納豆」と言いました。おかめ納豆のパッケージに描かれている女性にそっくりだったからです。お決まり事のような、センター分けに、ラスボスのような真っ白い肌に、平安時代の貴族のような殿上眉、真っ赤な唇。


今思えば、適当に「男」って言ってしまえば、実験も無事成功ということで、良かったんだと思います。今更後悔しても遅いことは分かっています。


ビデオの男は、実験に失敗したと叫んでいました。


「負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた負けた」


と。恐らく、次の実験台は私だと悟りました。

となると、次の住民さんが、このビデオを見ていると思います。


しかし、今回は少し私が方向性を変えようと思います。私恐らくこの部屋で孤独死すると思うんです。そうなると、次住む人が決まるのは少し時間を食ってしまう…ならば、「5」が深夜に開けてくれた穴を通して、隣の部屋の方に実験結果を教えて貰うことにしようと思います。


お手数ですが、402号室の住民さんは、私の性別(どうせ女でしょうが)の結果を教えてください。

私が幽霊になって、性別を穴から尋ねると思うので、必ず、「男」と言ってください。でないと、この実験は永遠に終わりません。

最後まで長々とありがとうございました。このビデオは保管して置いてください。


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