漫才師 鈴佐 鬼怒川君
鬼怒川君
「どうもー、鈴木と佐藤で鈴佐です。お願いします」
「佐藤さ、節分終わったね」
「ね。今年の恵方は西南西だったな」
「いつもさ、節分に近づくとあるクラスメイトのことを思い出すんだよね。鬼怒川の君のことを」
「誰だよ、そいつ」
「鬼怒川君知らない?中学のクラスメイトの、鬼に怒る川と書いて鬼怒川」
「知らない知らない。聞いたことない」
「自己紹介が鬼じゃないけど鬼に怒る川と書いて鬼怒川ですの」
「知らないって、それ言われても」
「なんで節分の時に彼を思い出すかって言うと、彼さ名前に鬼が入ってるじゃん」
「まぁさっきの説明だと入っているんだろうな」
「だから節分の時鬼にされて豆をぶつけられるのよ」
「まぁ、鬼のお面はつけられるだろうな、最適だもん、鬼に」
「いや、お面無しで、シンプルに鬼扱い」
「かわいそう、名前だけで。そんな目にあうなんて」
「先生も止めないんだよ、それ見て。彼は鬼だから豆を投げましょうって。むしろ推奨するのよ」
「止めろよ、それでも教師かよ。PTAで問題になるぞ」
「普通はペアレント・ティーチャー・アソシエーションで問題になるよな」
「そこ略さないで言わなくていいですよ」
「でもさ、その教師の言うとおりかもしれない」
「なに言ってんの」
「彼鬼かも」
「いや、そんなわけないだろ。彼も言ってただろ。鬼じゃないけどって」
「君はさ、彼の事を知らないからそんなこと言えるんだよ」
「なら教えろよ、鬼怒川のことを」
「分かった。まず、好きな食べ物がお肉とおにぎりで」
「うん」
「好きな歌手が鬼束ちひろで」
「うん」
「あこがれの人がGTOの鬼塚英吉」
「いや、ただの鬼好き」
「え?」
「鬼怒川君鬼じゃないわ。ただ鬼というワードが好きな人だわ。お肉、おにぎり、鬼束ちひろ、鬼塚英吉。全部鬼が入っているから」
「行きたいところは鬼ヶ島で」
「ほら鬼入ってる」
「好きな遊びは鬼ごっこで」
「やっぱ鬼入ってる」
「いつもトラの毛皮のパンツ履いてる」
「なら鬼かも」
「だろ」
「うん、トラの毛皮のパンツは鬼のパンツだから。鬼怒川君鬼かも」
「嫌いな物語は桃太郎で」
「鬼かも。桃太郎では鬼やられるから。鬼悪者だから。それに桃太郎嫌いな人ってあまりいないし」
「嫌いな漫画は鬼滅の刃で」
「やっぱ鬼かも。題名に鬼を滅ぼすって書いてあるし」
「嫌いな映画は青鬼」
「なら鬼じゃないかも」
「え」
「青鬼見たことないけど、青鬼って青鬼が追いかけて来るホラー映画でしょ。鬼が主役な映画を嫌いは鬼じゃないかも」
「理由は青いからだって」
「分かんない。青い鬼やだなって感覚は分かんない。赤ならいいなとはならない」
「ここまで聞いて佐藤はどう思った」
「一度会ってみたいは。興味わいた。今度会わせてよ」
「まぁ同級生に鬼怒川君なんていないんだけどね」
「いや、いないんかい。どうもありがとうございました」