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イノセント田中 第15話

作者: 千彩仙人

    『第15話 インディーズライヴ』


 イノセント田中が友人のSから彼のバンドのライヴの招待を受け、インディーズバンドのボーカルをしているSのバンドのライヴを見に行った。イノセント田中がライヴハウスに到着すると、ライヴハウスには既に大勢の客が集まっていた。イノセント田中はライヴハウスの後ろの壁に寄り掛かり、ビールを飲みながらライヴが始まるのを待つことにした。暫くしてステージにバンドのメンバーが登場し、Sがマイクで観客達に挨拶をした。

 「俺たちアンダーグランダーズの20周年ライヴに来てくれて、本当にありがとう! 20年間の感謝を込めて、今日は最高のライヴにしますので、皆さん最後まで楽しんでいってください! それでは早速、1曲目を聴いてください、俺たちの代表曲『母ちゃんの料理が酷すぎて』ーーー


 食えるかっ!食えるかっ!

 家畜のっ!餌かよっ!


 卵のっ!殻入りっ!

 カツ丼っ!カツが生っ!


 食中毒になるぜーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「次の曲は、レンタルDVD屋に対する怒りを曲にしました。聴いてください『傷だらけのDVD』ーーー


 レンタルッ!するなよっ!

 途中でっ!止まるだろっ!


 クレームッ!言うのもっ!

 面倒っ!なんだぞっ!


 ディスクが読み取れませーーーーん!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「次の曲に行く前に、バンドメンバーを紹介します。エアギター担当の、ジャクリン。彼は苗字が若林なので、俺が音読みでジャクリンと名付けました」

 ジャクリン「最高の演奏をしているかのようなパフォーマンスを披露するぜ! センキューッ!」

 S「そしてドラムのベース。彼はこのバンドを結成した時に、『自分は誰よりもベースを愛している、ベースの演奏なら誰にも負けない』と言ったので、その時に俺がベースと名付けました」

 ベース「このバンドを結成する時に、バンドメンバーを募集して、ドラムだけ応募が無かったので、俺がジャンケンで負けてドラムをやることになりました。ドラムが好きでやっているわけではないので、ドラムは未だに上手く叩けないのですが、ドラムを上手く叩ける奴が見つかるまで頑張りますので、皆さん応援ヨロシク! センキューッ!」

 S「そしてギターのキター。彼は『キターッ!』と言うのが口癖なので、俺がキターと名付けました」

 キター「メンバー紹介キターッ! センキューッ!」

 S「そしてベースのドラム。彼は見ての通りドラム缶のような体型をしていますが、缶ではないので俺がドラムと名付けました」

 ドラム「今日は俺たちにとっても特別なライヴなので、演奏中に絶対にミスをしないように、朝から気合いを入れていました。そのことに気を取られ過ぎてしまい、ベースを家の玄関に置いて来てしまいました。やむを得ずSからギターを借りたので、今日はこのギターをベースだと思って聴いてください! センキューッ!」

 S「そして紅一点のキーボードのヤマハ。以前に彼女に海派か山派かと訊ねたら、山派だと答えたので、俺がヤマハと名付けました」

 ヤマハ「どうもーっ! 海よりも山が好きなキーボードのヤマハです! キーボードのヤマハではありますが、私が愛用しているこのキーボードのメーカーは、カシオです! センキューッ!」

 S「中には音楽愛が全く感じられないメンバーもいますが、それもこのバンドの個性ということで、皆さんこれからも応援ヨロシク! それでは、次の曲に行きたいと思います。この曲は、俺が小学生の時に、俺の友人の身に起きた不幸を題材にしました。聴いてください『バッタに泣かされた友』ーーー


 友人っ!右手でっ!

 バッタをっ!捕まえっ!


 バッタにっ!噛まれてっ!

 指からっ!血が出たっ!


 『痛いよママーーーーッ!』

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「次の曲は、半年前に複数のバンドが出演するライヴがあって、そのライヴにアンダーグランダーズと、俺の後輩のバンドが出演したんです。そのライヴで、ボーカルをしている俺の後輩が、観客たちに向かってダイブをしたんです。彼は演奏と歌に力を入れていて、普段はそういうパフォーマンスは全くやらない奴なので、たぶん飛び方が悪かったのだと思うのですが、観客たちが彼を受け止めずに避けたんです。その豪快に飛んだ彼のダイブを歌にしました。聴いてください『伝説のダイブ』ーーー


 後輩っ!ダイブしっ!

 観客っ!に避けられっ!


 後日にっ!街なかでっ!

 後輩っ!見掛けたらっ!


 松葉杖を突いていましたーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「次の曲は、俺が中学生の時に、近所の川に背中に矢の刺さった鴨がいたんです。その鴨が連日テレビで報道されるようになり、『矢ガモ』と呼ばれて全国的に有名になったんです。その頃の俺は、サバイバルゲームにハマっていて、M16というライフルのエアーガンを持っていたんです。そのことを知っていた同級生たちが、『鴨に矢を射ったのはお前だろ!』と俺に言うようになったんです。その時の俺の心情を歌にしました。聴いてください『言葉の矢に射られた俺(矢オレ)』ーーー


 廊下をっ!歩けばっ!

 みんながっ!俺に言うっ!


 『犯人っ!お前だろっ!』

 さすがにっ!キレたぜっ!


 『ライフルから矢が出るわけがねえだろー一ーーっ!』

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「俺が高校生のとき、慎吾という同級生の家に友人達が集まって、みんなでテレビゲームをしたんです。その時に、女子の1人が慎吾の部屋の物を勝手に色々といじっていたんです。その時に起きた大惨事を歌にしました。聴いてください『慎吾が人間不信になった夜』ーーー


 『こういうっ!ところにっ!

 男子はっ!エロ本っ!


 隠してっ!いるんでしょっ!?』

 マットレスッ!めくったらっ!


 熟女系のエロ本が何冊も出てきましたーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「次の曲は、俺が初めて入ったラーメン屋で、店員の女性に一目惚れをしたんです。彼女と目が合った瞬間に、稲妻に打たれたような衝撃を受けた俺は、彼女には告白しないと一生後悔すると思い、彼女に告白をしたんです。その時の体験を歌にしました。聴いてください『恋愛運の無い男の告白』ーーー


 店員っ!の女性にっ!

 一目でっ!恋をしてっ!


 メアドをっ!紙に書きっ!

 告白っ!して渡したらっ!


 中国語で何か言われて突き返されましたーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「俺が小学二年生の時に、電車に乗って芋掘りをしに行く遠足があったんです。帰りは夕方の4時に学校の最寄りの駅に保護者に迎えに来てもらい、その場で解散という遠足だったんです。学校の最寄りの駅の、学校方面の出入口の、西口が解散場所で、予定通りに4時に西口に着くと、生徒達の親達が待っていて、みんな親子で帰って行ったんです。けれども、俺の母親だけが来ていなかったんです。4時半まで待っても母親が来なかったので、俺が先生に『家まで近いので1人で帰れます』と言って、俺は1人で帰宅したんです。その時の思い出を歌にしました。聴いてください『母ちゃんの行動が酷すぎて』ーーー


 1人でっ!帰宅しっ!

 家にはっ!誰もいずっ!


 母親っ!6時にっ!

 帰宅しっ!言ったぜっ!


 『間違えて東口にいたんだーーーーっ!』

 センキューーーーっ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「俺が若い時に、俺の兄の友達が北海道に旅行に行って、兄に北海道の名店の生ラーメンを買って来てくれたんです。兄がそのラーメンを俺に渡して『友達から4人分のラーメンを貰ったから、お前は自分で茹でて食べろよ。残りの3つは母ちゃんに渡して、今日の晩飯はこれだけでいいと言っといて』と言ったんです。俺はその3食分を母親に渡して、1食を自分で作って食べたんです。そのラーメンがめちゃくちゃ美味かったんです。後日に兄に『北海道のラーメンめちゃくちゃ美味かったな』と言ったら、兄が哀れむように俺を見て、『お前は普段よほどまずいものを食ってるんだな。北海道の名店のラーメンだと聞いたから、どんだけ美味いのかと思ったけどよ、今までに食った中で1番まずかったよ』と言ったんです。俺はそんなはずはないと思い、兄がそう言った理由を思い出したんです。そのとき兄が食べたラーメンを歌にしました。聴いてください『母ちゃんの感覚が酷すぎて』ーーー


 『こういうっ!ラーメンッ!

 麺だけっ!美味しくっ!


 スープがっ!まずいのっ!』

 母親っ!そう言いっ!


 スープを自分で1から作っていましたーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「俺の地元の商店街に、絨毯専門店があり、その店にドイツ製の美しい玄関マットが売られていたんです。そのマットは基調がエメラルドグリーンで全体の柄も美しく、小さな絨毯のような玄関マットだったんです。そのマットを一目見て気に入った俺は、値段が五千円で少々高かったのですが、奮発してそのマットを買ったんです。そのマットを玄関に置いたら玄関が見違えるほど明るくなったんです。その明るくなった玄関を見た俺は、本当に良い買い物をしたと思ったんです。その一ヶ月後に、母親がそのマットを洗濯機で洗濯をして、真夏の炎天下のベランダに半日干して、鮮やかなエメラルドグリーンだったマットをグレーにしたんです。そんな人間とは思えない神経の持ち主の俺の母親は、お線香の香りが大好きで、お香代わりにいつも玄関でお線香を炊いているんです。そんな家に帰宅した時の出来事を歌にしました。聴いてください『母ちゃんの精神が酷すぎて』ーーー


 線香っ!火を付けっ!

 下駄箱っ!の上からっ!


 線香っ!落ちたがっ!

 気づかずっ!燃え続けっ!

 

 グレーのマットに線香の長い焦げ跡が付いていましたーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「次の曲は、現代社会から受けたストレスによって、ボロボロになった俺の体の悲鳴を歌にしました。聴いてください『娑婆苦との死闘の末に』ーーー


 月曜っ!目まいしてっ!

 火曜日っ!頭痛してっ!


 水木っ!吐き気してっ!

 金土っ!腰痛っ!


 日曜は立てませーーーーん!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 S「みんなーーっ! 今日は20周年ライヴなので、今から、みんなにも歌ってもらうぜ! みんな、魂の歌声を聴かせてくれ! それでは、いくぜ! ぴいちむっ!」

 客全員「ぴいちむっ!」

 S「ぽむたんっ!」

 客全員「ぽむたんっ!」

 S「ぴいちむっ!」

 客全員「ぴいちむっ!」

 S「ぽむたんっ!」

 客全員「ぽむたんっ!」

 S「ぴいぴいちむちむっ!」

 客全員「ぴいぴいちむちむっ!」

 S「ぽむぽむぽむたんっ!」

 客全員「ぽむぽむぽむたんっ!」

 S「最高だぜーーーっ!」

 客全員「最高だぜーーーっ!」

 S「みんなうまいね! さすがだね!」

 客A「ぴいちむぽむたんってなに?」

 S「俺のペットのハムスターの名前です」

 客B「そんなの叫ばせるなよ! 俺達はお前のペットなんて知らねんだからよ!」

 S「ええ、次が最後の曲になります。聴いてください、新曲『ミドリガミ』ーーー


 ミドリガッ!ミドリガッ!

 ミドリガッ!ミドリガッ!


 ミドリガッ!ミドリガッ!

 ミドリガッ!ミドリガッ!


 俺が名付け親だぜーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 客A「なんて言ってんの?」

 S「ミドリガミです」

 客B「なんなのそれ?」

 S「俺の友人のあだ名です」

 客C「なんでミドリガミなの?」

 S「先週に髪を緑に染めて、髪全体が緑だからです。彼はミドリガミって呼ばれるのが嫌みたいで、そう呼ぶと凄い怒るんですけどね、『人をミドリガメみたいに呼ぶんじゃねえよ!』って」

 客D「ならやめてやれよ」

 S「やめないです、俺、気に入ってるんで」

 客E「アンコール! アンコール!」

 客全員「アンコール! アンコール!」

 S「それでは、アンコールにお応えして、聴いてください『ミドリガミ』ーーー


 ミドリガッ!ミドリガッ!

 ミドリガッ!ミドリガッ!


 (客全員『ミドリガッ!ミドリガッ!

 ミドリガッ!ミドリガッ!』)


 俺が名付け親だぜーーーーっ!

 センキューーーーッ!」

 (客全員が拍手喝采)

 客全員「アンコール! アンコール!」

 S「今日はこれで終了です、これからバイトがあるんで」

 客A「なんのバイト?」

 S「アクション映画のスタントです」

 客B「凄い仕事だな!」

 客C「怪我しないでね!」

 S「ありがとうございます。それでは皆さん、気をつけて帰ってください。今日は本当にありがとうございました! またライヴで会いましょう! センキューーーーッ!」

 客全員「ミドリガッ!ミドリガッ! ミドリガッ!ミドリガッ!」

 客A「最高だったぜーっ!」

 客B「最高だったーっ!」

 客C「最高だったわ!」

 客D「感動したぜっ!」

 客E「今年こそはメジャーデビューしてよね!」

 Sの友人「お前がしているバイトはティッシュ配りだろ! 嘘ばかり言うなよ!」

 S「黙ってろミドリガミ!」

 ミドリガミ「人をミドリガメみたいに呼ぶなって言ってんだろ! この髪は俺が寝ている間にダチに緑にされて、ただでさえムカついてんだからよ!」

 ミドリガミの怒声を聞いたイノセント田中が客達を掻き分けてSに向かって突進し、背負っている日本刀を鞘から引き抜いてSに向かって叫んで言った。

 「人が嫌がることをするんじゃねえーっ!」

 イノセント田中はそう叫び、日本刀でSの胸を斬り付けた。Sがマイクを口に当て「うぐおわあああーーっ! ミ、ミドリ…ガはっ!」と叫んでその場に倒れて死亡した。それを見たバンドのメンバーと観客達が一斉に「キャーーーッ!」と悲鳴を上げた。イノセント田中はSが死亡したのを見届けて、急いでこの会場から逃走した。ジャクリンがマイクで観客たちにパニックにならないように呼び掛けた。ヤマハが急いでスマホでこの殺人事件を警察に通報した。しかし、警察はイノセント田中の行方を追おうとはしなかった。なぜなら、そう、彼は地球のヒーロー、イノセント田中だから。(♪テーテーテーテテー、テーテーテテテテー、仏教のー開祖のー仏陀も弟子に言ったぜー自分がされたら嫌な事をー人にしてはいけませんーしかしーむかしはーどこもかしこも世の中はー人が嫌がる事をするー人間ばっかりだったぜーしかしー近年ーそういう非情な人間がー激減しているぜーそれはーそうさーイノセントー田中がー人が嫌がる事をするー冷酷非情な人間をーカルマの報いで斬り殺しー責め苦を受ける地獄へとー送っているからなのさー友の髪を緑に染めたヒーロー、イ、ノ、セ、ン、トーーー田中!)

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