宣告
お医者さんのはややあって、重々しく口を開いた。
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
私と主人はお医者さんに呼び出された。
どんな宣告を受けるのか―。
私の心は不安と絶望でいっぱいになっていた。
その時、主人が私の手を握ってくれた。そして何度も励ましてくれた。
主人も不安なのだ。繋いだ手の指先が震えている。
それでも主人の声は力強く、幾許か不安を和らげてくれた。
私たちの方へ向いたお医者さんは、大変申し上げにくいのですが、と
仰り、言葉を詰まらせた。
ややあって、お医者さんは重々しく口を開いた。
―お子さんの容態なんですが、非常に危険な状態です。
産まれてから体重が減り続けています。
恐らく、2ヶ月と保たないかもしれません。―
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
夢であって欲しい、そう思いながら目には涙が溢れてきた。
何とかならないのか、主人は必死で問いかけるがお医者さんは静かに
首を横に振った。
―最善は尽くします。しかし、覚悟はしておいてください。―
私達は絶望に打ちひしがれながら、その場を後にするしかなかった。
私は再び我が子の下に向かった。
たった2ヶ月・・・。この子の一生はたった2ヶ月で終わってしまう。
小さな箱の中で、懸命に生きようとしている。
精一杯呼吸をして、僅かながら手足を動かしている。
この子にとっては、この一瞬ですら貴重な時間。
私にできるのは、その一瞬を目に焼き付ける事。
けれどその思いとは裏腹に、涙で視界が霞んでいった。
程なく、主人から連絡を受けた養母が病院に駆けつけた。
養母は、せめてこの子が生きた証として立派な葬儀をあげよう。
この子をちゃんと送り出してあげようと言った。
養母の言葉は聞く人によっては冷たく聞こえるかもしれない。
しかし、養母も目から涙が溢れていた。
私は養母にしがみつき、声を出して泣いた。




