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突然ですが、恋人が死にました。だから、”天才美少女魔術師”の私は、死者蘇生の魔術をつくって彼を生き返らせることにしました。

作者: 三兎りあん

こんにちは、”天才美少女魔術師”のテトラです。突然ですが、恋人が死にました。


恋人のレインは、”天下無双の完璧美少女”の私にふさわしい素晴らしい人物です。幼なじみでもあり、恩人でもありました。


~~~


「おい、”本のウジ虫”。いつまでもそんなところにいると、頭にキノコ生えるぞ」


5歳のとき。体が弱くて、小さい頃から家で本を読んでばかりだった私を、外に引っ張り出してくれた。


あなたが無理矢理にでも私の手を引いてくれてなかったら、今もずっと引きこもっていたでしょう。


「おい、”へっぽこ三流魔術師”。学校行くぞ」


8歳のとき。史上最年少で魔術学園に入学することになって、緊張と不安でいっぱいだった私の隣でやさしく微笑みかけてくれた。


あなただって、同じように震えていたのに。握ってくれた手は、とても温かかった。


「おめでとう。もう”メンタルクソザコ魔術師”とは呼べねぇな」


11歳のとき。私の研究が学会に認められ、国王様から栄誉ある称号”叡智”をいただいた。それにより、私は多くの人から妬まれ疎まれることとなった。


でも、あなたは自分のことのように祝福してくれた。周囲の人間がどんどん離れていっても、あなたは変わらず私の隣に立ち続けてくれた。


「テトラ。俺と一緒に暮らさないか?」


14歳のとき。私は首席で学園を卒業した。喜びも苦労も、あなたと一緒だから私は受け入れられた。


卒業式が終わって、まさかあなたの方から告白してくるなんて。私は夢にも思ってなかった。あの日の興奮は、私のかけがえのない思い出に変わった。


「ちょっと出かけてくる。すぐ戻るから」


そして17歳の誕生日の今日。あなたが死にました。今朝、笑顔で見送ったのに。道端で突然倒れてそのまま息を引き取ったらしい。家にあなたが運び込まれたときには、もう動かぬ人となっていた。


ベッドで横たわる目の前のあなたは、本当に眠っているよう。


『ああ、レイン。どうして、死んでしまったの?』


私は涙が止まらなかった。大声で泣いた。でも、あなたには決して届かない。


「泣くなよ、”天才美少女魔術師”さん」


私が学園でいじめられて泣いていたとき、彼がいつもかけてくれた言葉。自信のない私を奮い立たせようと、あなたは仰々しい二つ名をたくさんくれた。


空耳かもしれない。でも、私には確かに届いた。


『そうか、私は……!』


悲しんでいる暇はない。”完全無欠・才色兼備・天才美少女魔術師”の私は、彼を蘇らせることに決めました。



死者の蘇生には、肉体と魂の二つにアプローチする必要がある。


まず、”天才美少女”の私が取りかかったのは、肉体。こちらは治癒魔術で完全に修復してから、時間停止の魔術で固定すればいい。


どちらも禁術クラスの最難関魔術だが、”世界最高峰の頭脳を持つ”私にとっては朝飯前だ。これを24時間365日維持し続ける。問題なし、第1関門クリア♪


問題は、魂の方だ。こちらに関しては、”完璧究極の万能超人”の私でもさすがに専門外。


でも、心配はない。この”完全無欠にして超絶美少女である魔術師の到達点”の私にかかれば、反魂魔術の一つや二つお茶の子さいさいである。


何ならこの機会に魔術系統を全て見直して、新たな学問として再興してあげようではないか。



~~~10年後~~~


「また、ダメだった…………」


これで4078回目の失敗。私は自室のソファに倒れ込む。あれから一日も欠かさず、私は反魂魔術の研究だけに没頭していた。部屋の掃除や、他の仕事も手に付かないほどに。


それでも、恋人のレインの蘇生には一度も成功していない。改良に改良を重ね、ミスなど絶対にあり得ないはずなのに、私の魔術で彼がベッドから目覚めることはなかった。


私はただの人間だ。天才でも何でもない。三流以下の魔術師。過去には奇跡を起こすなんて言われていたが、今は自分の願い一つすらもろくに叶えられない。


彼がいなければ、私は完璧でもなければ天才でもない。


「……ねぇ、レイン。どうして、目を覚ましてくれないの?」


何度呼びかけても意味はない。そんなこと、分かっているのに。でも、今の私にはこのくらいしか出来ない。


「おいおい、”天才美少女魔術師”サマがそんな調子でどうするんだ?」


聞き慣れない声が私の耳に入る。振り返ると、小さな男の子が立っていた。


「掃除くらいはしろよ。ったく、部屋中埃っぽくてかなわん」


声も顔も名前も知らないのに。私はその人に飛びついた。


「レイン、レインなの!?」


「泣くか喋るかどっちかにしろよ」


照れたときに、左耳を触る癖。間違いなくレインだ。


「どうして、ここに? というかその姿は?」


「お前、俺が死んで部屋の掃除してねぇだろ。他人の研究を勝手に見ないのは、魔術師として暗黙のマナーだが、恋人が死んだら遺品整理くらいはやれよ」


「……もしかして! レインが最近始めた研究って!!」


「反魂魔術。まさか自分に使うことになるとは思わなかったがな」


私の完璧な反魂魔術がなぜ失敗し続けたのか。それは、レインの反魂魔術が先に発動したから。魂は人間に一つしかない。いくら私が呼び戻そうとしても、すでに肉体に宿っている魂には効果はないのだ。


「死んだ男のことなんて、とっとと忘れちまえばいいのに。相変わらずこの”へっぽこ三流魔術師”は……」


ため息をつきながらも、レインは優しい笑みを向けてくれた。姿形が変わっても、レインはやっぱり最高の恋人だ。


「レイン、お帰りなさい!」


”天才美少女魔術師”の私は、満面の笑みを返した。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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