表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】異世界リーマン、勇者パーティーに入る  作者: 岡崎マサムネ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/173

162.本日はお取引のご相談に参りました

「ふ、なんだ。人間よ。せっかく拾った命を捨てに来たのか?」


 魔王が俺の剣を押し返しながら、ハヤシさんに声を掛ける。


「いえ。本日はお取引のご相談に参りました」

「参ってないよ!!!???」


 参ってないよハヤシさん!!!???

 そんなご相談俺知らないよ!!!???


 驚愕で力が緩んだところを、魔王が腕を振って剣を弾き返す。

 後ろに飛びのいて、ハヤシさんの横顔を凝視した。


 は、ハヤシさん??

 俺知らない、知らなすぎる。

 どういう相談?? 先に、先に俺に教えて????


 そう戸惑っていると……ハヤシさんの手が、かすかに震えているのに気づいた。

 もしかして、ハヤシさん……緊張してる?


 ……そうだよな。

 きっとハヤシさんにも何か作戦があって、こうしてるんだ。

 俺が信じないとダメ、だよな。


 ……いやでも心配だよ!!?? 魔王がデコピンしたらハヤシさん死んじゃうからね!?

 ハラハラしながら見ていると、魔王がくつくつと喉奥で笑った。


「ほう? 取引だと?」

「はい、まずはこちらをご覧ください」


 ハヤシさんがいつもの調子でタブレットを取り出した。

 どうして魔王を前にしていつも通りなんだよ、ハヤシさん。

 そう思ったけどハヤシさんは最初っから、ドラゴンを前にしてもいつも通りだったよな。


「勇者が魔王を倒す主な理由は、魔王の魔力によって魔物が増えることが問題だからだと伺いました」

「そうだ」

「ですが魔物がまったくいなくなったとしても、人間に不利益があるそうですね」

「らしいな」


 魔王がふんと興味がなさそうに鼻を鳴らす。

 前にロックやシャーリーと話したことを思い出す。

 確かに魔物ってもう俺たちの生活に組み込まれてるから、急にいなくなったら困ると思う。


「そして魔王様。貴方様も困っていらっしゃる」

「余が? ふ、笑わせる」

「こちらのお城、広いのに人の気配がありません。お一人でお住まいですね?」

「それがどうした」


 魔王がそうせせら笑った。


 え、この広い城に、一人?

 そういえばバルバもザラキも、それにイライザもあんまりこの城には居着いていない様子だった。


 それって……掃除とか大変なんじゃないだろうか。広い分手間がかかりそう。

 風呂は? 魔王って風呂入らないの? それともちゃんと使った後自分で洗ってるの?


 そういえば、城に入ってから出会した魔物はすべてアンデッド系統ばかりだった。

 単に魔王がネクロマンサー系の魔法が得意なんだろうと思ってたけど――何か、理由があるのか?


「魔王様ともあろう方が、何故魔族や魔物と一緒に暮らさないのでしょう」

「余は一人で十分だからだ」

「では何故四天王を雇われたのでしょうか」


 魔王が黙った。

 魔王の言う通りに一人で十分なら、確かに四天王なんか必要ない。

 さっきのイライザへの態度を見ると、仲間を大切にする気持ちもなさそうだった。


 でも――それなら何故、四天王に魔力の玉を預けたりするんだろう。

 さっきまで「そういうものだ」と思って疑問に感じていなかったことが、ハヤシさんの話を聞けば聞くほど、不思議に思えてくる。


 魔王は少し言いよどんで、答えた。


「それは、……伝承にそう定められているからだ」

「そちらの伝承について、妖精族の方から伺いました」


 ハヤシさんがタブレットを操作する。

 魔王に向けられた画面を横から覗き込むと、何やら図が描いてある。


 ええと、魔王から空に向かって矢印が描いてあって、雲からまた矢印が出ていて、それが地上の魔物に向かっていて――これは、魔力の循環の様子、だろうか。

 文字で書かれるより絵になってると見やすいな。


「魔王様の魔力によって、大気中の魔素――魔力が増えます。魔素が多すぎると、魔物を狂暴化させる。そして力が増幅した魔物はやがて、魔族や魔王ですら制御することのできない存在になる。そのような伝承だと」

「え」


 思わず俺は声を上げた。

 てっきり魔族は魔物を従えてるんだと思っていた。


 でも確かに、四天王はさておき、キマイラとかドラゴンとかの強い魔物って並みの魔族より普通に強いもんな。

 テイマーが魔物を使役しているのを考えてみれば、自分より力が強いモンスターを従えられないのは当然、かもしれない。


「だから魔王は、魔力を宝玉にして四天王に託すのです。少しでも魔物の狂暴化を抑えるために」

「そんなことは、この本には――」

「なるほど。そちらが魔王の伝承について書かれた本ですか」


 魔王が少し困惑した様子で零した言葉を、ハヤシさんは聞き逃がさなかった。

 玉座の肘掛けに置かれている本に、ちらりと視線を向ける。


「……異世界の文字、ですね」


 ハヤシさんがぽつりと呟いた。

 目を凝らしてよーく見ると、確かにハヤシさんがくれたメイシに書かれていた文字と似ている……ような気もする。


 ってことは――あの本は伝説に残ってる魔王の味方をしたって異世界人が書いたもの、なんだろうか。

 ちょっと興味あるけど、俺には何が書いてあるか分からない。


 というかそれより、今の魔王の反応が気になった。

 え? もしかして魔王……その本に載ってることを参考にして、魔王やってたりする?

 伝説に従って旅に出た、俺たちみたいに?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版1・2巻発売中!↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

悪役令嬢がガチ男装するラブコメ↓
モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました

異世界ハイテンションラブコメ↓
当て馬ヒロインは今日も「カワイイ」を突き進む!

なんちゃってファンタジー短編↓
うちの聖騎士が追放されてくれない

なんちゃってファンタジー短編2↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

― 新着の感想 ―
え! まさか魔王って 異世界来た人がやってる?
誰かの脚本通りに動いてるだけじゃねーか どっかに【総ての者に職を与えん!】って変な事言いだす 機動外食産業本社とか在ったりしない?(スットボケ
魔王って派遣社員だったんだ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ