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奴隷商人 Ⅱ  作者: フランク・ロイド
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第9章 ●奴隷商人7、パトロヌス、紀元前47年

【登場人物】


ムラー     :フェニキア人奴隷商人、知性体アルファのプローブユニット

森絵美     :知性体ベータに連れられて第2に来た第4の21世紀日本人女性、

         人類型知性体

エミー     :黒海東岸のアディゲ人の族長の娘、巫女長

絵美/エミー  :知性体の絵美に憑依された合体人格


アイリス    :エジプト王家の娘、クレオパトラの異母妹、

         知性体ベータの断片を持つ

ペトラ     :エジプト王家の娘、クレオパトラの異母妹、アイリスの姉、

         将来のペテロの妻、マリアの母

ペテロ     :ムラーの港の漁師

マンディーサ  :アイリスの侍女


キキ      :20才の年増の娼婦

ジャバリ    :ピティアスの海賊の手下


ソフィア    :ムラーのハレムの奴隷頭、エチオピア人

ジュリア    :ムラーのハレムの奴隷頭、ギリシャ人

ナルセス    :ムラーのハレムの宦官長

アブドゥラ   :ムラーのハレムの宦官長

パシレイオス  :ムラーのハレムの宦官奴隷、エチオピア人

アルシノエ   :アイリスたちの侍女頭


ピティアス   :ムラーの手下の海賊の親玉

ムスカ     :ムラーの手下、ベルベル人、アイリスに好意を持つ


クレオパトラ7世:エジプト女王、知性体ベータのプローブユニット

アヌビス    :ジャッカル頭の半神半獣、クレオパトラの創造生物

トート     :トキの頭の知恵の神の半神半獣、クレオパトラの創造生物

ホルス     :隼の頭の守護神の半神半獣、クレオパトラの創造生物


イシス     :エジプト王家の娘、クレオパトラの従姉妹


アフロダイテ号 :大スフィンクス攻撃のためのムラーの指揮するコルビタ船

アルテミス号  :大スフィンクス攻撃のためのピティアスの指揮するコルビタ船


https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18978003 より。


 このお話の舞台は、紀元前47年頃の共和制ローマの頃。この頃のローマは、ローマ市民権を持つローマ人が人種ヒエラルキーのトップだったが、決して、有色人種差別をしていたわけではない。


 有色人種(セム系・ハム系・アラブ系も含めて)のローマ特権支配階級が、コーカサス系の白人金髪碧眼の奴隷を持つ、ということも多々あった。共和制ローマは、奴隷基本性の経済社会だった。しかし、ローマ人種であろうとも、一旦転落すればたとえ元貴族といえども奴隷となったのである。


 人類のヒエラルキーで、白人種優位、有色人種下位という差別感はこの時代にはなかったのだ。それが生まれたのは、ごくごく最近の近世の頃だ。イエス・キリストだって、セム系かハム系のユダヤ・アラブ人で、21世紀で言う有色人種だ。決して、アングロサクソンやゲルマン系の白人種ではない。


 ユダヤ人、アラブ人の区別だって、近世に生まれた。紀元前の世界では、まだイスラム教は成立していない。彼らが話す言語も原始アラビア語、フェニキア語、コプト語、ラテン語だった。少なくとも言えるのは、遺伝子的にほぼ同じだが、ユダヤ教を信仰する人々とそれ以外ということだ。イエス・キリストだってまだ生まれていない時代だ。


     -∞- -∞- -∞- -∞- -∞- -∞-


 翌朝、ムラーはアブドゥラに日の出前に叩き起こされた。いつもはさっさと起きて朝の支度をするのだが、若いエミー/絵美?あれ?絵美/エミーに何度か求められて、眠ったのが起こされるほんのすこし前だった。イヤだ嫌だと言いながら、結局、求めればやるのは、これは絵美の日本人女性の癖なのか?正直じゃない民族だ。今は・・・前面、フロントは絵美のようだ。エミーの意識は寝てるよ、と絵美が言っている。


 起き出し洗顔を済ませた後、絵美/エミーと母屋のベランダに出て朝食を食べだした。


 六時半くらいに漁民のクリエンテスの長のペテロが顔を出した。「ムラーの旦那さま、今日は新鮮な魚で作ったガルム(garum、ローマ時代の調味料、魚醤)ができましたので、大瓶二本、キッチンに置いておきましたよ。それから、今朝採れたての地中海マグロの尾の身もね」


「おお、ペテロ、それはありがたい。お前のところのガルムは味がいいからなあ。あれで酢と胡椒とオリーブオイルでマリネしたマグロのステーキは最高なんだよ。お返しと言っちゃあなんだが、私のところのオリーブオイルを持っていけよ」

「ムラー様、旦那さまの料理長からもういただきました。大瓶十本も。儂の店子の漁師共も喜ぶでしょう。旦那さまのオリーブオイルは上質ですからな」


「おまえのところのガルムもそうだが、大量に作ると品質管理しやすいんだよ。それに私のところは、オイルの濾過に素焼きの陶器と炭を使っているからな。綿布で濾すよりも透明度が上がるんだ。ガルムを濾すにも使えると思うよ。今度、やり方を教えてあげよう。まあ、朝食でも食べていってくれ」とムラーは自分の横の椅子をペテロに指差した。


 絵美が「ガラムって何?」と日本語で聞く。「ガラムは・・・しょっつるとかナンプラーみたいなもんだよ」「あ、調味料ね」「そうだ」


「おお、旦那さま、遠慮なく。お宅のパンときたら、フワフワして、あの岩のようなウチのパンとは大違いでさぁ」

「それはな、私も偶然発見したんだが、ウチの料理長がパン種を作って濡れ布巾でおおっていたんだ。そこへ、奴隷女どもの喧嘩の仲裁とかで、パン種を数時間放っておいたそうだ。戻ってきて、濡れ布巾を剥がすと、パン種が膨らんでいた。『こりゃ、使い物にならないや』と捨てるところを私が通りかかって、膨らんだパン種を焼かせたら、中がフワフワして、洞穴のような穴が無数に空いている、柔らかいパンになったんだ」

「へぇ~、不思議なことが有るもんですね?」

「それでな、いろいろ研究して、まず、そのパン種をエジプトガラスの瓶に保存させた。たぶん、一、ニ日で悪くなるんで、毎日新しいパン種にその種をなすりつけておくんだよ」


「毎朝、その日のパン種3リブラ(古代ローマの重さの単位、1リブラは328.9 g、3リブラで約1キロ)にその膨らむパン種をスプーン五杯くらい混ぜる。暫くこねてから、濡れ布巾をかけて一時間くらいおくと、ニ、三倍に膨らむんだ。その膨らんだ種からガスを抜いて、小分けする。小分けしたら季節によるが、夏なら二十分、冬なら四十分くらい放っておく。そうするとまた膨らんでくる。焼く前にオリーブオイルかバターを刷毛で塗って、焼いたのがこれさ。ペテロにも分けてやろう。料理長に言いなさいな。どう保存するか教えてくれるよ。保存するのは素焼きの壺はダメだぞ。水分を吸っちまうから。陶磁器の壺がいいだろうな」


「ありがとうございます。これは良いことを聞いた。なんせ、ウチのパンは岩みたいに固くて、儂も年だから、歯が欠けますわい」


「そういやぁ、年で思い出しましたが、儂の嫁も去年亡くなって、儂は独り身なんです。若い後添いをもらって正妻にすると、息子娘と遺産争いが起こります。旦那さま、性格のいい年の少々いった奴隷はおりますかいな?夜伽もできるような?」

「ペテロ、お前も四十過ぎで元気だな」

「三十の旦那さまには負けますわい。もう、四十ですから、生きられて後数年でしょう。とびきり器量よしなんて贅沢は言いませんから、一人、斡旋していただけませんか?」


 そこへ丘の家の執事の宦官、ナルセスが通りかかった。ムラーはナルセスを呼び止めて「ナルセス、ペテロの旦那がな、奥さんが去年亡くなって、夜が寂しんだとさ。後添いの代わりにウチの奴隷で適当なのがいるかね?」


 ナルセスはペテロの頭から足元までジッと観察して「ペテロの旦那、夜伽は激しいのがいいんですかい?それともおとなしいのが?」と遠慮なく聞いた。


「昼は淑女のようで、夜は娼婦のような女がいいなあ」

「ペテロの旦那、都合のいいご要望ですね。でも、ちょうどいい女がおりますよ。ムラーの旦那さま、パトラはいかがでしょうかね?」


「パトラ?あのエジプト女のパトラか?あれは確か、今年で十七になるんじゃなかったかな?ちょっと、年がいっているんじゃないか?ふむ、まあ、ペテロは四十だからちょうどいいか?器量もいいし性格もいい。料理もうまいしな」とムラーが言うと、ナルセスは、「パトラは、私が夜伽を仕込みましたので、バッチリでさあ。ペテロの旦那が腹上死してしまいますよ」と答えた。


「確かに。確かに。あいつはまさに夜は娼婦のような女だからな。昼間の貞節さ大人しさとは真逆だ。どうだい、ペテロ、エジプト女なんだが・・・まあ、見てもらおうか。ナルセス、パトラを連れてきてくれ」


     -∞- -∞- -∞- -∞- -∞- -∞-


 今を去ること16年前、紀元前63年は彼らの住んでいるフェニキア地方にとって大きな出来事があった。


  アレクサンダー大王の後継者の一人、セレウコス1世ニカトルが紀元前3世紀頃、シリア、バビロニア、アナトリア、イラン高原、バクトリアに跨る地域に築いた強大な王国がセレウコス朝である。


 この王国は、ギリシア人部将とイラン貴族の女性との結婚を奨励したせいもあって、イラン人の血をもつギリシア人の王国であった。


 セレウコスもバクトリア人の戦争捕虜であるアパマと結婚し、一子をもうけた。それがアンティオコス1世で、セレウコス朝の後継者となった。このようにセレウコス朝はギリシャ人とイラン人の血をもった王朝だった。


 セレウコス朝は始祖のセレウコスがイラン人女性を妻としただけでなく、ギリシア人兵士とイラン人少女の結婚は他にも数多く行われていた。しかし、ギリシャ・イランの文化は、かなりの程度まで融け合わずにいたようで、新しい都市の文化は主としてギリシア的であり、古い町や村のものはほとんど純粋にイラン的なままであった。


 文字も、支配者のマケドニア人がギリシア文字をもたらしたが、ギリシャ語、ギリシャ文字を解するのは一部のイラン人書記にとどまり、日常的にはまだアラム語とアラム文字が使われていた。


 紀元前2世紀になると、イラン系のパルティアが東方で自立して有力となり、北方のバクトリアや小アジアのペルガモンも独立し、セレウコス朝は次第に領土も縮小し、衰退した。


 またギリシア風のゼウス信仰を強要されたユダヤが反発して、紀元前167年にユダス=マカバイオスらが反乱を起こした。紀元前142年にはユダヤ人に自治を与えざるを得なかった。


 このように、地方政権の自立が続き、セレウコス朝は領土を縮小する中、紀元前64年にローマのポンペイウス率いる軍によって滅ぼされ、ローマの支配地に組み入れられ、属州シリアとなった。


 そういった支配者の変遷などフェニキア人のムラーやペテロにはあまり関係がない。ギリシャやペルシャからエジプトに至る回廊の接合地域のようなシリア・パレスチナ地方は、紀元前数千年の昔から覇者となった王国に蹂躙され続けていた。


 ムラーやペテロらのフェニキア人は、「海の民」がカナン人を吸収合体してフェニキア人が誕生したという説もある。旧約聖書に登場するカナン人は、エジプトの文書に登場するフェニキア人と住む場所が同じことからカナン人=フェニキア人だという考えもある。


 エーゲ文明に属するクレタ文明(前2000〜前1400年頃)とミケーネ文明(前1600〜前1200年頃)が後退した後に、地中海交易で栄えたフェニキア人は、先祖の「海の民」がカナン人を吸収合体しようと、逆であろうと、地中海周辺の人々に広く受け継がれている。彼らは、突出した交易能力で地中海全域に勢力を広げていたのだ。


 紀元前64年のシリア地方に住んでいるフェニキア人は、ミケーネ文明滅亡以降、既に千数百年が経っていた。数十世代から百世代も経過しているのだ。海の民やカナン人の血に、地中海アフリカ沿岸部の血も、セレウコス朝シリアのギリシャやイランの血も混じっているだろう。彼らにとって、どの血が混ざっているなど関係ないのだ。フェニキア人はフェニキア人なのだから。


     -∞- -∞- -∞- -∞- -∞- -∞-


 ナルセスに連れられてパトラがやってきた。褐色の光沢を帯びた肌。黒く濃い眉。スッと直線に伸びる高い鼻梁。あ~、彼女、美人だわ。クレオパトラみたいね、と絵美は思った。


 それにしても、ムラーの奴隷女はみんな肌がツルツルだわ。ムダ毛の処理はどうやっているのかしら?この時代のナイフじゃあ、ムダ毛をあんなにキレイに剃れないわよね?後で誰かに聞いてみよう。ジュリアに聞くと嫉妬しているので、他の誰かに聞こう、と思ったら、さっき紹介された丘の家の奴隷頭のソフィアが通りがかった。私は、ムラーとペテロにちょっと失礼と言って、ソフィアを呼び止めた。


「ソフィアさん、ちょっとお聞きしたいことがあるんだけど」と丁寧に聞いてみた。私はここでは新参者だし、ジュリアにはよく思われていない。奴隷頭二人を敵に回すのはマズイよね?

「ハイ、なんなりと、エミー様」

「ソフィアさん、エミーと呼んで頂戴」

「じゃあ、私もソフィアで」

「了解。ソフィア、私、田舎者のアディゲ族の出身でしょう。だから、先進国のフェニキアの女性のたしなみを知らないんですよ。それで」と小声で「あの、その、ムダ毛処理ってみなさんどうなさっているんです?」と聞いた。


「あら、ちょうどいいですわ。今から若い子にワックスを使おうと思って、ワックスを火にかけたんですよ。見てみます?」と言う。ワックス?


 ムラーのハレムにソフィアに連れられて行った。この時代は、後世のよりも色は劣るが、アラビア風のタイルはかなり生産されているようだ。ポンペイの遺跡でも色とりどりだったね。床も壁もタイル貼りで、キレイだわ。20 m 四方の部屋だった。十数人の女の子がいた。ソフィアが、あの子とあの子はムラー様のハレムの子。あの子たちは奴隷の家の子と説明した。私とソフィアよりも年上の子はあまりいない。一番若いハレムの子なんて12歳だって。ムラー様の方針で、12歳以下はハレムにいれないそうだ。あまりに若い時に性交を経験すると、後で味が悪くなるって説明された。味が悪くなる?まあ、いいや。20世紀の倫理感を持ち出さないようにしよう。


 数人がお腹が大きい。妊娠しているんだろう。20世紀なら、中学生くらいの女の子が妊娠している。こりゃあ、20世紀のロリコンを連れてきたら感動するんだろうな。まあ、いい、20世紀の倫理感を持ち出さない。


 だって、彼女たちは40歳くらいまでしか生きられない。12歳だって、余命は28年ぐらい。妊娠できるのは健康状態が悪いだろうから、アラサー前までなのかな。だったら、12歳から妊娠し始めて24歳まで、12年しかない。


 その間に6~9人の子供を産む。その3分の1が5歳前に死んでしまう。妊婦も出産時に半分近く死ぬんだろう。それを考えたら、確かに、中学生からせっせと子供を作らないといけないってことだ。


 確かに、ハレムに来る間に通りかかった奴隷たちの家の前で、その家の奥さんたちが食事を作っていたが、もう老婆のようになっていた。40歳近くなると老婆になるのね。老けるのが早い。だから、この世界は、早熟じゃないと生き残れない。


 でも、ジュリアとかソフィアは、18歳、20歳だが、若く見える。これは、ムラーの家でも、ハレム付きの女性は栄養状態がいいってことか?それに、葦の葉で作られた小屋とくらべて、ムラーの家は大理石、レンガで作られていて、タイル貼りで、清潔に出来ている。清潔な環境なら病気になる確率も低いということかしら?でも、じゃあ、18歳のこのエミーの体も健康そのもの。これも族長の娘だからってこと?20世紀の常識は捨てないといけないわね。


「エミー、こっちよ」とソフィアがタペストリーで仕切られた一画に私を連れて行く。そこは水場で、丈の高いベッドが4台置いてある。そこに少女が二人、仰向けになっている。別の少女が彼女たちのムダ毛をよく研いだ鉄製らしいナイフで剃っている。ナイフを使っているじゃない!


「ワックスじゃなくて、ナイフじゃないの?ソフィア」と聞くと「あれは前処理よ。あれだけじゃあ、毛穴のブツブツが残っちゃうでしょ」と答えた。


「次に、熱いタオルで肌を蒸すの」と壁際のタイル貼りでできたかまどで沸いている青銅製の鍋を指差す。「その隣りのがワックス」


 私がその隣りの鍋を覗くと、これは蜜蝋?これがワックス?あれ、これって・・・


 仰向けに横たわっている少女に別の少女が、熱いお湯にひたして絞った綿のタオルを下腹部に広げた。脚を広げさせられている。下腹部って言っても、そこ陰部よね?横たわっている少女は熱そうだ。


 ソフィアが20世紀で言うアイランドスタイルのタイル張りのテーブルに幅広の包帯を広げた。ミイラに巻くようなヤツだ。そこに杓子でグツグツした蜜蝋を均等にたらしていく。フーフーと拭いて、半分固まるぐらいで、少女の陰部に包帯を貼る。少女はあまりの熱さに唇を噛み締めている。しばらくして、蜜蝋が固まったようで、ソフィアが遠慮なく、包帯を引き剥がす。手伝っていた少女二人がその女の子の手足を押さえつけている。あまりの痛さに少女が背をそらすが、手足を掴まれていて、動けない。


「ほら、エミー、これがムダ毛処理よ。じゃあ、エミー、あなたも横になってね」


 あ~、聞くんじゃなかった。これは、20世紀の脱毛法のブラジリアンワックスじゃないか!私は、少女たちの手前、拒否もできず、泣く泣くベッドに仰向けになった。ソフィアがニタァ~と笑って「今まであまり脱毛してこなかったようね。でも、コーカサス人で、ムダ毛も薄いから、そんなに痛くないわよ。でも、全身くまなく脱毛しましょうね。ムラー様に抱かれるんだから、キレイにしておかないと。おケツの毛もキレイにしましょうね」と言う。


 ソフィアに全身くまなく、やられた。すね毛はもちろんのこと、おケツの毛なんて、四つん這いにさせられて、脚を広げさせられて、肛門から縦筋、あそこまで、ベリッとやられた。ベリッ!!だった。全身が因幡の白うさぎになったのだ。私、肛門なんて他人に見せたことないのよ!


 私の中のエミーが「絵美、あんた、なんてことを私の体にしているのよ!痛い!痛い!痛い!」と悲鳴をあげる。私だって悲鳴をあげた。でも、ソフィアは容赦なかった。「終わったわ。もう、全身、ツルッツルだわ」と嬉しそうに私の肌をなで上げた。痛い!


 その後、香油を全身に塗られて、髪の毛をアップにされた。ギリシャ神話の女神のような服を着させられる。ソフィアが銅鏡を差し出して「さあ、エミー、見てご覧なさい。キレイよ」と言う。


 鏡を見た。昨日の夜からだから、エミーをちゃんと昼間見たことがなかったのだ。え?エミーって、クロエ・グレース・モレッツみたいじゃない?と思った。私の中のエミーが「クロエ・グレース・モレッツって誰よ?褒めてんの?けなしてんの?」と言うので、20世紀の私の記憶を彼女に見せる。「ああ、未来のアクトレスね。褒められているのね。ありがとう、絵美」と言う。


 ヘロヘロになって、ムラーの食事している母屋のベランダに戻った。ペテロは帰ったようだが、別のクリエンテスとムラーは食事していた。


「おお、エミー、見違えるようにキレイになったじゃないか?」と日本語で言う。

「ひどい目にあったわよ。古代のブラジリアンワックスでソフィアにいたぶられたのよ!」

「まあまあ、元がいいから、清潔になって、これは俺のハレムで一番美人だな」とムラーがニタニタして言う。

「『俺のハレムの中で』なんて言うな!私は、あなたのハレムに入ってないわよ」

「仕方ねえだろ。周りは、絵美のことを俺の正妻と勘違いしてるようだぜ。だから、調子を合わせて正妻の振りをしないと、ジュリアに床磨きをさせられるぞ」

「ソフィアは優しいけど、ジュリア、ジュリアとは仲良くしないといけないわね」

「う~ん、難しいかもしれんな。彼女は嫉妬深いから」

「困っちゃうなあ。そういうのは、エミーにやってもらおう。どうやってエミーと意識して交代するのか、方法も考えないとなあ・・・」

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