入隊式の前夜
ーーー戦士。皆はこの言葉を聞いてまずどんなモノを思い浮かべるのだろうか。
国や国民を守るために戦う勇猛な兵士?将軍様のために命を懸けて戦うと言う狂気じみた兵士?それとも今まさに騒がれている侵略戦争を繰り広げて楽しんでいるような下衆な兵士?
まあ、挙げていくとキリがないので割愛するが、少なくとも今俺がいる世界では”戦士”とは必要不可欠なものだと思われている。もちろんクズも大量にいるものの、それでもだ。
何故そこまでこの世界での戦士に対する依存が皆の今いる世界よりも強いのか。それは月人たちとバチバチに戦争中だからである。
ちょっと待てと思ったそこの君。その考えは正しい。俺もこの世界に来てしまうまでは月に人類が住んでるだなんて1度たりとも信じたことは無かったしむしろ信じてるヤツは小馬鹿にしていた。
だがどうにもこの世界では遥か昔から月にすむ人類、”月人”との関わりがあるらしい。
なんとも月人は超高度な知能を持つ友好的な種族でこの世界の地球の人類とよく交流しており、世界各地に大量に月の役人を派遣したり、逆に地球の国からの役人を月に招き入れたりもしていたらしい。
地球各国のリーダー達からしても月人は高度な技術をもたらす敵対心の薄い種族であるため排斥などせずむしろやってきた月人には最上級の待遇を与え、手厚く扱っていた。
ーーーとある異常事態が起こるまでは。
時はこの世界での1000年。
宋王朝が支配する成都で眩い光の球を放つ赤ん坊が発見されたのが始まりであった。
人々はそれを超能力者と呼び、恐れ崇めた。
しかし、初めは人を殺すような力を持った子供などは全く産まれなかったし、そもそも産まれる事自体が非常に稀な事であった。
だが始まりから10年もすると徐々に強大な力を持つ子供が世界各地で発見され始め、その数も急激に増え始めた。
ついにはその超人的な力を持つ子供達に世界各国の支配者が目をつけ、自国領内から超能力者達をかき集めて強力な軍隊を結成するようになった。
当然、このような事態に月人が興味を示さない訳がなく、地球に滞在していた月の役人が月本土に連絡し、大量の月人が地球に訪れ調査を開始した。
その結果、月人は生まれたての赤ん坊に超能力を扱う才能を検査して階級で振り分けることの出来る装置を大量生産する事に成功し、世界中に流通させた。
階級は全部で6クラスあり、上からS、A、B、C、D、Eと振り分けられる。
そして何を勘違いしたのか、強力な超能力者達を従えて強くなったと勘違いした遊牧民族の王があろう事かその地に滞在していた月人を殺害して月へ向かうロケットまで乗っ取ってしまい、月の支配を目論んだのだ。
これに月人達は大激怒し、なんと実験で失敗した結果産み出されたモンスターや、戦う為だけに作られた魔物たちを解き放ちながら地球全体を敵とみなし侵攻を始めてしまった。
月人の最新兵器や魔物たちに苦しめられながらなんとか世界中が一丸となって戦った結果、月人の侵攻を退ける事に成功したものの、月人が解き放ったモンスター達は、繁殖力が強い物が多いためなかなか絶滅させる事ができずに今も人類とどちらが滅びるかの絶滅戦争を繰り広げている。
更に、あくまで月人の撃退に成功しただけであって、和平はされていないため今でも数ヶ月単位で月人の攻撃が来る。
そのため世界各地では戦士の存在がとても重要であり、ほとんどの国では成人した男子と能力者の女子全員に兵役が義務付けられており、Eランクであろうが超能力適性がありと記録された男子は全員戦士の職に就くことを強いられる。
最近では地球に残ったわずかな月人から月で人造超人開発計画が始動したとの情報が世界中の軍隊に出回り、大パニックになっている。一般市民にすら情報が漏洩しているという事は、上層部も焦り回って情報統制しきれていないということなのだろう。
そんな中、今年で18になる俺は明日入隊式を迎えようとしていたのだった…
導入なのでセリフは無いです。
世界観が気に入ったという方は今後も読んでいただけると幸いです。
次回も世界観の補足のため説明パートになると思います。