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スタートライン

 俺、真也(しんや)(しょう)、それから光弘(みつひろ)、と都古(かっこ)の4人と、(ゆい)の1匹は、まだ熱の冷めやらぬ祭会場を後にし、翡翠(ひすい)に案内され、(はらい)を使って再び都古の家へと戻ってきた。


 「皆さん、今日は大分疲れたでしょう。お帰りになる前に、お風呂に入って行ってくださいな。」


 そう言って案内された戸を開くと、そこは洞窟に繋がっていた。


 「お召し物は、こちらで一度お預かりしますから、そこのカゴをお使いくださいね。ごゆっくりどうぞ。都古はー・・・・残念ながらご一緒できませんけども。」


 そんなことを言って微笑む翡翠に、都古は顔を赤くし頬を膨らませている。


 都古と翡翠がいなくなると、俺たちは戸を閉め、服を脱いだ。

 少し奥に入ると、頭より少し上の高さに作られた滝口から、お湯が滔々(とうとう)と流れ続けている。

 5か所ある滝口の下には、シャンプーやせっけんがきちんと用意してあった。


 「ここで身体洗えってことだよな。」


 俺たちはそこで頭の先から足の先まで泡だらけになって身体を洗った。

 豊富に流れ落ちてくるお湯でしっかり流し終え、さらに奥へと進んでみる。

 

 大きな池のような岩でできた風呂から、透明な湯がこんこんとあふれ出ている。

 洞窟はすぐ先で途切れていて、そこから青い海が広がっているのが見えた。


 「すっげーなぁ。」

 「ほんとだな。」


 勝と俺が感嘆の声を漏らしている隣で、光弘(みつひろ)は目を伏せしおれていた。

 言わずもがな、先ほどの出来事が原因だ。

 俺は手で水鉄砲を作ると、 光弘の顔目掛けてお湯をかけた。

 光弘は、暗く哀しい目で俺を見返してくる。


 「こらー!そんな目で見られたら、俺が光弘をいじめてるみたいじゃないか。」


 俺の横で、勝が面白そうに見ている。

 どうやら今回は傍観すると決め込んでいるようだ。

 俺は小さくため息をついた。


 「困ったな。・・・あのさ。俺たち、怒ってるんだ。」


 俺の言葉に、光弘は瞳を揺らす。


 「光弘にじゃないよ。自分にだ・・・・・・。だって、俺たち何もできなかった。お前を失くしたくないって想うばかりで、なんの力もないんだ。その想いだって、光弘を繋ぎとめることはできなかったしな。」


 俺の話している前で、(ゆい)が目を細めてこちらを見ながら、気持ちよさそうに泳いでいる。


 「お願いだ。俺たちにチャンスをくれ。大切な人を失いたくないって想ってるのは、光弘だけじゃない。俺たちだって同じなんだよ。」

 「っ・・・・・。」


 光弘が、何かを言おうとして口をつぐんだ。

 それをみた癒が瞳を光らせる。

 癒を中心に、透明なドームが広がっていく。

 癒は話して大丈夫だというように、光弘に頭をすり寄せた。


 「ありがとう。」


 光弘は確かめるように、癒にお礼を伝えると、再び俺たちに向き直った。

 

 「すまない。俺はきっと・・・たくさん間違えてしまってた。本当は、離れたくなんてない。ずっと・・・・一緒にいたいんだ。」


 俺と勝はニンマリと笑顔を交わすと、光弘をもみくちゃにした。


 「知ってたよ。」


 俺と勝、2人の声が重なる。

 俺たちはそのまま、行儀悪く温泉の湯をかけあい、はしゃぎまくった。


 半分のぼせながら、ようやく大人しく湯に浸かった俺は、光弘の肩に腕を回し、頭を自分の方へ引き寄せた。

 光弘の頭に自分の頭をコツンとぶつける。


 「俺はお前を宵闇(よいやみ)なんて奴に、渡す気・・・ないからな。」


 勝が「俺もだ」と言って、不敵な笑みを浮かべた。

 

 湯からあがり、清潔に洗い直された服に袖をとおしながら、俺たちはようやくスタートラインに立てた気がしていた。


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