手持ち花火 2
「出るタイミング・・・・・完全に逃しちゃったな。」
俺と光弘は、物音をたてないよう気をつけながら、2人並んで木の影に座り込んだ。
そっと空を見上げた俺の肩に、光弘がトストスと頭をぶつけてくる。
「どうした?」
声を落として問いかけた俺に、光弘は、見てるこっちの心まで包み込むような、温かい笑顔をみせてきた。
「・・・・・そうだな。俺も、安心したよ。」
俺は笑顔で返しながら、光弘の頭をなでた。
「・・・・・・なぁ、光弘。勝を助けてくれて・・・・・ありがとな。」
光弘が目を大きく見開き、身体をこわばらせた。
「逃げるなよ、光弘。・・・・・逃げるな。何も・・・・言わなくたっていいから。」
立ち上がろうとする光弘の手首をつかんでそう言うと、光弘は悲しそうに眼を伏せ、身体の力を抜いた。
「言霊とか神眼とか、これだけ不思議なものを見せられれば、俺だって色々考えるって。・・・・・光弘、言霊に似た何か不思議な力を持ってるんだな。」
癒が不安そうに光弘に身体をすり寄せている。
「・・・・・・お前、命逢へ来てからほとんどしゃべってないだろ。学校でさえ、なるべく声を出さないようにしてる。なのに・・・・・・勝が襲われた時、誰よりも早く反応してあのでかいサメを抑えつけた。」
「・・・・・・。」
「俺、あの時まで全然警戒とかしてなかった。けど、お前だけはみんなのこと、いつでも守れるよう、ずっと気を張っててくれてたんだな。それに・・・・・・ホントは物凄く嫌なんだろ。何かを守るためだったとしても、どんな相手でも、無理矢理自分の言葉で縛ったり、傷つけたりするのがさ。」
俺は光弘の頭を自分の肩へギュッと引き寄せた。
「俺が心配なのは勝だけじゃない。お前もだよ。勝を守ってくれたお前がこんなに傷ついてるのに、知らないふりしたまま過ごすことなんてできない。だから俺、お前にありがとうって伝えたかったんだ。」
俺は「本当に・・・それだけ?」と、黙ったままの光弘から驚いた様子で問いかけられたような気がした。
「それだけだよ。・・・・・他になにがあるんだ?」
祭の喧騒を遠くに聴きながら、俺たちは黙って座っていた。
もう光弘から悲壮感は感じられなかった。
沈黙はただただ居心地の悪いものなのだと思っていたのに、今、俺たちを包み込むこの時間はなぜか不思議と心地がいい。
光弘の温かさと優しさが伝わってきて気持ちが安らぐ。
木に体重を預け空を見つめていた俺は、勝が動き出す気配を感じ、光弘の頭をポンポンなでた。
「さてと、俺たちもそろそろ行くか。」
俺が笑顔を向けると、光弘は、嬉しいような困ったような顔をして立ち上がった。
「もう・・・・・・大丈夫そうだな。勝。」
「くそっ。やっぱりみんなも分かってたのかよ。」
俺たちが木の影から姿を現すと、勝はきまり悪そうに頭をガシガシかいた。
「心配かけたみたいだな。・・・・・みんな、サンキューな。」
「礼なんて言うなよ。したいことをしただけなんだから。たださ・・・・・これ、無駄になっちゃったかな・・・って。な、光弘。」
俺と光弘は、袋いっぱいに詰め込まれた花火を勝の前にかかげ、いじわるそうな笑みを見せた。
「え?なにそれ?都古のクレープじゃねーの?まさか、そこからすでに俺って騙されちゃってたわけ?んでもって、それ、俺のためにみんなで用意してくれたのか!?」
「うーん。まぁ、その予定だったんだけど。もうお役目終了しちゃった感が・・・・・・なぁ?」
「いやいや。そんないじわる言わないでくれよー。みんなでやろうぜ!なっ!なっ!」
「どうしよっかなー。勝がそこまで言うなら。まあ、ねぇ?」
「やってやらんこともないな。」
「ひでーなー。みんな。」
光弘までもが大げさに大きくうなずいている様子に、勝はいつもの情けない顔を見せて・・・・・笑った。




