夏休み 5
ブーブー唸り声を上げる扇風機に吹かれ、夏の暑さに汗を流しながら、都古の家に行くことを約束した俺たちは、スイカの箱詰め作業を続けていた。
ほどなく、昼食を終えた父さんが作業に加わると、スイカの箱詰めはテンポよくあっという間に終了した。
ちょうど3時になり父さんにうながされた俺たちは、休憩をするため全員再び家の中へ戻る。
中に入ると、すでに母さんがおやつを用意して待ち構えていた。
俺たちの大好物、ガッチガチの厚焼きしょうゆせんべいやチョコレート、クッキー、そして、でっかいプリンがならんでいる。
「じゃじゃーんっ!光弘君からみんなにプリンの差し入れでーす!」
そう言うと母さんは自分も一緒に席についた。
「光弘君、うちに来るのに気を遣わなくていいんだぞ。正直、こうしてみんなの顔が見られるだけで、俺は嬉しいんだ。」
「ありがとうございます。大丈夫。俺が好きなものを持ってきてるだけだから。みんなで食べたくて。」
父さんは、少し切なそうな表情で、光弘の頭に手を置くと、優しくなでた。
「すまんな。夕方もう一仕事行く前に、ちょっと昼寝させてもらうわ。」
そう言うと、父さんは「こいつはその時のお楽しみ。」と言って、自分の分のプリンを冷蔵庫にしまうと、家の奥に入って行った。
「いっただっきまーす!」
みんな待ちきれないとばかりに、口々に光弘にお礼を伝えると、さっそく大きなスプーンを手に取ってカプリとプリンをほおばる。
「うわ!このプリン、超絶うまい!」
少し硬めのひんやりとしたカスタードプリンは、口の中でホロリと砕けて、香ばしいカラメルソースと軽やかに絡み合う。
卵とバニラの柔らかな香りが、鼻腔をふわりと甘くくすぐった。
その様子を見て安心したようにふんわり微笑む光弘の姿に、俺たちも思わず笑顔になる。
4人で過ごすこの時間がずっと続けばいい、失いたくない、と俺は心からそう願った。
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「それじゃ、いってくる。」
母さんに、都古の家へ行くことを伝え、俺たちは自転車にまたがった。
「で、どっち向かうんだ?」
「・・・・・駄菓子屋があるところだ。ついてきてくれ。」
勝の問いかけに短く答えると、都古は走り出した。
俺たちは黙ってあとに続いたが、都古の向かう方向はいつも行っている駄菓子屋とは全く違う。
畑道を抜け、住宅街に入り坂道を下る。
突き当りの丁字路を右にまがり、家々の立ち並ぶ大きなカーブにさしかかると、ほどなくして都古は自転車を止めた。
そこは、俺たちにとって別段珍しい場所ではなかった。
自転車で5分ほど離れた、見慣れた場所の一角だ。
ただいつもと違っているのは、家々がびっしり軒を連ねている隙間に一カ所だけ、黒くひび割れたような狭い通路が口を開けていることだった。
目を凝らしてよく見てみれば、通路の暗がりの奥に、数寄屋造りの低い門のようなものが見える。
俺たちはいぶかしみながら、駐輪場がわりになっている道路わきの空き地に自転車を停めた。
「おっかしーなぁ。ここ、こんなんあったか?」
「・・・・・。」
勝のぼやきに光弘は不思議そうにうなずいたが、俺は無言のまま険しい表情で都古を見つめた。
「こっちだ。」
都古は1つ深呼吸をすると、俺たちを薄暗い通路の中へと案内した。




