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白妙>出会い 3

 白妙(しろたえ)防神(さきもり)の放つ光の輪の中へと足を踏み入れた途端、防神は猛烈な勢いで、容赦なく無数の脚を伸ばしてきた。


 ゆるやかな見た目からは想像のできない、驚異的な速さとしなやかさをもって迫りくる脚を、白妙は舞を舞っているかのような優雅な動きで、ひらりひらりとかわしていく。


 だが、かわしたはずの脚は白妙をかすめるとその後方で()ぜ、(つぶて)となって光の速さで降り注いだ。


 大きく退き、とっさに防神の攻撃範囲から逃れた白妙だったが、襲い来る全ての攻撃をかわすことは叶わず、脇腹をかすめた一筋の光に、衣を鋭く切り裂かれた。


 「あやつめ。全く、頼もしい術を成してくれたものだ。」


 白妙は、苦笑しながらぼやいた。

 態勢を立て直すと再び防神の放つ光の中へと踏み込む。


 都古の心に近づくには防神の動きを完全に止めるしかないが、それは防神に大きな隙ができなければ困難なことだろう。


 であればいっそ・・・・・。


 白妙は襲い掛かってくる無数の脚をよけず、全てをその身に受け止めた。

 身体を貫いた防神の脚は白妙の後方ではじけ、銃弾の雨のように降り注いで容赦なく身体をえぐる。


 急所を外すように受けたとはいえ、身体中に走る久方(ひさかた)ぶりの激痛に白妙はつかの間、(こうべ)を垂れた。


 傷口から流れ出ていく精気の量をみても、ここに留まれる時間がさほど残されていないことが理解できる。

 恐らく、実体へ戻ったところで即座に回復できるような軽いダメージではないだろう。


 「鬼ごっこはもう(しま)いだ。お前はしばらく休んでいろ。」


 白妙は微笑みを浮かべそういうと、防神の脚を自分自身に縫い留めたまま片手で印を結んだ。


 「(くく)れ。」


 白妙の言葉が響くと同時に、防神の身体の表面を覆うようにバリバリと青白い電気が走った。


 防神は痺れたように動けなくなり、そのまま白妙の身体から引きはがされ宙に浮いていく。

 突如、防神は自らを囲い込むように現れた光の箱の中に、白く輝く無数の鎖で厳重に繋ぎ止められてしまった。


 白妙は荒い呼吸で、固定された防神を見つめた。

 ここで自分が戦えば都古の精神を傷つけるかもしれない。

 それに防神を攻撃もしくは防御をすれば、術者である都古の父へと術が跳ね返ってしまうことになる。


 それを理解している白妙は、自らを(おとり)に防神の動きを止めるという手段をためらうことなく選んでいた。


 だが、予想していたこととはいえ防神の攻撃によるダメージは激しすぎるものだった。

 痛みで意識が本体へと引き戻されそうになる。


 防神が動けないことを改めて確認すると、白妙は自分の身体を守る能力を全て解き、分身体との回路を繋いだ。


 そのまま、燃え盛る都古の心の核へゆるゆると手を伸ばす。


 激しい炎が肌を焦がすのもかまわず、白妙は都古の心の核を抱き寄せた。


 都古の焼き切れそうな怒りと苦しみをその身に受けることで精神の同調を試みながら、白妙は都古の心に頬を寄せ「落ち着け」と呼び掛け続ける。


 このまま怒りをおさえられずに暴走すれば、都古は必ず後悔することになる。

 流れ出てゆく精気の勢いは衰えることなく、激痛とともに白妙の意識を(むしば)んでいく。


 白妙は残る気力をふり絞り、目のくらむほどの強烈な光を放った。


 「都古。目を覚ませ。お前ならもう大丈夫だろう?光弘は他の者を傷つけないために独りでいることを望んでいる。それに、我々の系譜とさながら無関係な者ではないのだ。後を・・・任せたぞ。」


 薄れゆく意識の中で、白妙はたった今分身体をとおして知りえた事実を都古に告げ、光を帯びる(ちり)となって消えていった。


 白妙の残り火をあびた都古の心から、激しく噴き出していた炎がゆらめき、音もなく消えていった。

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