香坂勝の物語>出会い 2
本人たち・・・・・特に都古にだけは死んだって言いたくないが、俺は真也と都古のことを心から尊敬している。
2人は、場の空気をよむのがすごくうまい。
ちょっとした変化にもすぐに気づくし、困ってるやつを見たらまず身体が先に動くようなやつらなんだ。
真也は、みんなの前で見せるおおらかで楽天的な顔とは裏腹に、曲がったことが大嫌いで苦しんでる奴を放っておくことができないし、都古も自分の事には無頓着なくせに、他人が傷つくことには敏感で、いつの間にか誰かの盾みたいになってたりする。
2人のさりげない優しさや明るさに救われる人間は多かった。
俺も2人のようになりたいと思ったことは、もちろんあった。今だってそうだ。
だが、どうも俺には繊細さや気配りが足りないらしい。残念なことに俺には全く向いてなかった訳で・・・・・。
それでも2人のような人間に少しでも近づきたいと思い悩んだ末、俺は気づいた。
俺は人に優しくできるような器用な人間ではない!・・・・・自分で言ってて切ないが。
だけど、真也や都古みたいな奴を守ることはできる。
何かに邪魔されることなく2人の想いが、必要としてる奴らに真っ直ぐ届くように・・・・・。
真也や都古が、自分の幸せを後回しにしないで、笑顔でいられるように・・・・・。
この、器用なように見えて、誰よりも自分自身に不器用な2人が傷ついて立ち止まってしまうことがないよう、俺だけは何が起きても2人を守れる存在でいたい。そのために強くなりたい。
2人と過ごす時間を重ねれば重ねるほど、俺のその想いは強く確かなものになっていった。
大切な人の力になることと俺の望んでることがイコールで繋がってるなんて。
一石二鳥とはまさにこのことだってね。
実のところ、俺が都古に必要以上にちょっかいを出しまくっているのにも理由がある。
俺たち3人は、通学路が同じだったこともあって、入学直後にすぐ仲良くなり、放課後や休日になると真也の家の庭を駆けずり回って遊んでたんだ。
後日俺の入っている剣道の道場に2人も入ったことで、俺たちはますます一緒にいるのが当たり前の存在になっていった。
ところが、すぐに問題が起きた。
しっかりして見える真也と都古だが、自分に向けられる好意に対しては恐ろしく鈍いのだ。
本人たちは全く気づいてはいないが、実は2人ともかなりモテる。
あからさまに行為をむけられているのに、なんで気づかないのか不思議なくらいだった。
主にマニアックなタイプに好かれる都古は放っておくとして、問題は真也だった。
いっつもニッカニッカの笑顔でその場の空気を明るく和ませてくれるし、困ってるやつを見つけては誰彼かまわず、すぐに手を貸すようなやつだ。
顔だって女子に「かわいいっ」なんてしょっちゅう言われてるくらい悪くない。モテないわけがなかった。
ヤツに難点があるとしたら、呆れるほどの、あの鈍さだ。
それまでにさりげなく真也が手を差し伸べてきたかなりの人数の女子たちが、真也のいないところで「みんなの真也」とか言って隠れファンみたいになってることに、全く気づいてない。
周りの女どもが自分に親切にしてくれるのは、みんなが優しい人間だからだと本気で思っている、そんなとんでもない男だ。
断言するが、本当に優しい人間って奴は、間違っても真也の横にいる俺のことをケツで突き飛ばしたりしない。
そしてついに、恐れていたことが起きた。
真也の鈍さが災いし、隠れファン連中の嫉妬の火の粉が都古にかかり始めたんだ。
都古に対する陰口に気づいた時、俺は、正直あせった。
このまま陰口がエスカレートすれば、ろくなことにならないのはもちろんのこと、もし2人の耳に入れば、今の関係が壊れるかもしれない。
真也がこのことを知れば、自分のせいで都古を傷つけてしまうと考えて苦しむだろうし、都古だって、自分が一緒にいることでクラスの女子が傷ついたり、真也が嫌な思いをしているとなれば、どういう行動にでるか分からない。
今までどおり一緒に過ごすことができなくなるかもしれないんだ。
ここは俺が何とかしするしかない!
そこで考えついたのがバトル作戦だ。
俺が都古に無理矢理勝負をふっかけまくる。
そうすれば、「バカでうざい男」が嫌いな女子どもは、俺に絡まれる都古を気の毒に思っていじめなくなる。
さらに、「真也君が都古と一緒にいるのは、アホの勝を止める役目があるからみたいよー。」ってなことになって、3人で一緒にいても全然不自然じゃない。
あとは俺が、都古にしつこく絡み続ければいいだけの話。
こうして俺は、早速作戦を実行した。
作戦は大成功だった。思惑通りに事はすすみ、俺は現在も都古にちょっかいを出し続けているってわけだ。
まあ、この関係も慣れてみれば、これはこれで悪くはなかったのだが。




